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弐章 国づくり
87 光の巫女
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「んで、これどーする…ホタルさんよ」
武僧のコクシュウ、そして他の皆もまた妖魔の群れを眺めそしてそれぞれの顔を見ていた。
シデンもまた少し不安げな表情を浮かべ仲間達の顔を見る。
「ははは、私達。
何度も死ぬかもしれ無いような依頼をこなしてきたけどこれは…。
今回のは本当に死んじゃうかもね」
珍しく弱音を吐く犲(やまいぬ)のリーダー、シデンを見てコクシュウは笑う。
「珍しく弱気だな…。
だが、安心しろリーダー。
南無阿弥陀仏…とさえ唱えれば極楽浄土に行ける」
だが、そうコクシュウが言うとフフフッ…と笑い声が巫女、コウカの口から漏れでた。
「いえ。
死ねば肉体と言う器を失うだけで魂はこの世にとどまります。
そして今を生きる者と共に生き続けるのですよ」
「いや、外道解脱こそ真の幸福。
それでは永遠に苦しみ続けるだけですよ。
救いがない。
こっちの教えでは…」
それは聞き捨てならないとコクシュウが食い下がろうとするが、再び横から話を遮られた。
「昔、孤児院で聞いた話だと…。
死は一時的なもので、神様を信じてさえいれば最後の審判の日に蘇って永遠の命を与えられると聞いた…」
リオンは言い争う二人を見て腕を組み無表情のままそう淡々と話す。
「えっとね…それは間違いよ、リオン」
「そうだ、死者が蘇るなどその教えは間違っている!」
それは神教と仏教、異なる宗教を信じる二人の意見が初めてあった瞬間だった。
ホタルはこんな状況で言い争う場違いな状況を見て和み肩の力を抜き微笑むと再び目の前にいる妖魔の群れをみる。
「何はともあれ…あの妖魔達をここで食い止める必要があります…。
あいにくいい作戦は思い浮かびませんし今はまだ、お互いの事もよく知らない状況です。
だからあえて作戦は作りません。
私が一番槍として先陣を切り開くのでそれに続いてください」
ホタルは今も行進を続ける妖魔達を止めようと行動に出ようとする。
「まぁ、それが妥当…」
トコヨもそれに賛同し頷く。
連携すら取れないのに作戦を立てても意味は無い。
それどころか足を引っ張り合う結果になりかねない。
それに加え妖魔の群れは連携も無く指揮官もいない烏合の衆、そして何より奴らは死を恐れずただ襲い掛かってくる死兵だ。
それ故、良くも悪くもそれは軍というより災害に近く、打つ手が見当たらない。
それなら作戦は無しにして各々がいつも通りの戦術で動いた方がいいだろう。
さっそくとばかりに戦闘準備を進める各人。
だが…それを巫女であるコウカは止めた。
「少し待ってください。
ホタルさんが言ったように大体はそれで構いませんが…。
一つだけ、お願いがあります」
コウカはそう言うとリオンの背中から布で包まれた一つの荷を取り出し布をゆっくりと開けた。
皆が興味深くその様子を見守る中。
突如として眩いばかりの光が布の中より溢れ出し黒い霧の影響で暗く薄暗くなっているこの場をまるで太陽の様に照らした。
「この世界に伝わる三種の神器、その内の一つ八咫鏡(やたのかがみ)です。
天皇様と出雲に住まう神々の許可を得て特別に借り受けてきました」
「これが八咫鏡…本物ですか?」
シデンは溢れ出る光に目を細めながらも目の前にある伝説の神器を眺めていた。
コウカは八咫鏡に布をかけ戻し光を遮ると話を進める。
「この八咫鏡を使い、破られた結界を塞ぎ直します」
……。
そう話を終え、少しした沈黙の後コウカは言いづらそうに。
「その…お恥ずかしい話なのですが…私には戦う力はありません。
それに結界を作る間、私は無防備になってしまいます。
ですからホタルさんが言う様に、戦う事に変わりは無いのですが…私を守りながら戦ってほしいのです」
……
ホタルは皆を率い不楽への潜入を画策する。
コウカが八咫鏡を使い結界を修復するにはある程度近づく必要がある。
その為ホタル達は身を潜めながら不楽の中央にある広場を目指し移動していた。
崩壊した家の影に隠れながら妖魔が練り歩く不楽の中を進んでいく。
先方と誘導を務めるのは二人の忍びだ。
ムメイが先の道に潜む障害を手刀による一撃のもと音も無く、それも瞬時に排除しもとから何もなかったかの様に暗闇に消える。
その間、トコヨが他の者達を先導し目的地まで安全に誘導した。
中央の広場に到着しコウカは布に包まれた八咫鏡を取り出し広場の中央に立つ。
「これから、始めます。
おそらく、私がアマテラス様を降ろし結界を作るときに陽気と光でおびき寄せてしまいます。
ですので…」
「守ればいいんでしょ?」
「では各々で戦うと言う事で」
コウカは皆が自身を中心に囲み戦闘態勢に入った事を確認し八咫鏡を両手に持ち高く空に向け掲げる。
すると…。
黒くぶ厚い雲と霧に覆われ、まるで夜の様に暗く影を落としていた不楽に光の柱が突如として現れ、辺り一帯を昼の様な明るさで照らした。
武僧のコクシュウ、そして他の皆もまた妖魔の群れを眺めそしてそれぞれの顔を見ていた。
シデンもまた少し不安げな表情を浮かべ仲間達の顔を見る。
「ははは、私達。
何度も死ぬかもしれ無いような依頼をこなしてきたけどこれは…。
今回のは本当に死んじゃうかもね」
珍しく弱音を吐く犲(やまいぬ)のリーダー、シデンを見てコクシュウは笑う。
「珍しく弱気だな…。
だが、安心しろリーダー。
南無阿弥陀仏…とさえ唱えれば極楽浄土に行ける」
だが、そうコクシュウが言うとフフフッ…と笑い声が巫女、コウカの口から漏れでた。
「いえ。
死ねば肉体と言う器を失うだけで魂はこの世にとどまります。
そして今を生きる者と共に生き続けるのですよ」
「いや、外道解脱こそ真の幸福。
それでは永遠に苦しみ続けるだけですよ。
救いがない。
こっちの教えでは…」
それは聞き捨てならないとコクシュウが食い下がろうとするが、再び横から話を遮られた。
「昔、孤児院で聞いた話だと…。
死は一時的なもので、神様を信じてさえいれば最後の審判の日に蘇って永遠の命を与えられると聞いた…」
リオンは言い争う二人を見て腕を組み無表情のままそう淡々と話す。
「えっとね…それは間違いよ、リオン」
「そうだ、死者が蘇るなどその教えは間違っている!」
それは神教と仏教、異なる宗教を信じる二人の意見が初めてあった瞬間だった。
ホタルはこんな状況で言い争う場違いな状況を見て和み肩の力を抜き微笑むと再び目の前にいる妖魔の群れをみる。
「何はともあれ…あの妖魔達をここで食い止める必要があります…。
あいにくいい作戦は思い浮かびませんし今はまだ、お互いの事もよく知らない状況です。
だからあえて作戦は作りません。
私が一番槍として先陣を切り開くのでそれに続いてください」
ホタルは今も行進を続ける妖魔達を止めようと行動に出ようとする。
「まぁ、それが妥当…」
トコヨもそれに賛同し頷く。
連携すら取れないのに作戦を立てても意味は無い。
それどころか足を引っ張り合う結果になりかねない。
それに加え妖魔の群れは連携も無く指揮官もいない烏合の衆、そして何より奴らは死を恐れずただ襲い掛かってくる死兵だ。
それ故、良くも悪くもそれは軍というより災害に近く、打つ手が見当たらない。
それなら作戦は無しにして各々がいつも通りの戦術で動いた方がいいだろう。
さっそくとばかりに戦闘準備を進める各人。
だが…それを巫女であるコウカは止めた。
「少し待ってください。
ホタルさんが言ったように大体はそれで構いませんが…。
一つだけ、お願いがあります」
コウカはそう言うとリオンの背中から布で包まれた一つの荷を取り出し布をゆっくりと開けた。
皆が興味深くその様子を見守る中。
突如として眩いばかりの光が布の中より溢れ出し黒い霧の影響で暗く薄暗くなっているこの場をまるで太陽の様に照らした。
「この世界に伝わる三種の神器、その内の一つ八咫鏡(やたのかがみ)です。
天皇様と出雲に住まう神々の許可を得て特別に借り受けてきました」
「これが八咫鏡…本物ですか?」
シデンは溢れ出る光に目を細めながらも目の前にある伝説の神器を眺めていた。
コウカは八咫鏡に布をかけ戻し光を遮ると話を進める。
「この八咫鏡を使い、破られた結界を塞ぎ直します」
……。
そう話を終え、少しした沈黙の後コウカは言いづらそうに。
「その…お恥ずかしい話なのですが…私には戦う力はありません。
それに結界を作る間、私は無防備になってしまいます。
ですからホタルさんが言う様に、戦う事に変わりは無いのですが…私を守りながら戦ってほしいのです」
……
ホタルは皆を率い不楽への潜入を画策する。
コウカが八咫鏡を使い結界を修復するにはある程度近づく必要がある。
その為ホタル達は身を潜めながら不楽の中央にある広場を目指し移動していた。
崩壊した家の影に隠れながら妖魔が練り歩く不楽の中を進んでいく。
先方と誘導を務めるのは二人の忍びだ。
ムメイが先の道に潜む障害を手刀による一撃のもと音も無く、それも瞬時に排除しもとから何もなかったかの様に暗闇に消える。
その間、トコヨが他の者達を先導し目的地まで安全に誘導した。
中央の広場に到着しコウカは布に包まれた八咫鏡を取り出し広場の中央に立つ。
「これから、始めます。
おそらく、私がアマテラス様を降ろし結界を作るときに陽気と光でおびき寄せてしまいます。
ですので…」
「守ればいいんでしょ?」
「では各々で戦うと言う事で」
コウカは皆が自身を中心に囲み戦闘態勢に入った事を確認し八咫鏡を両手に持ち高く空に向け掲げる。
すると…。
黒くぶ厚い雲と霧に覆われ、まるで夜の様に暗く影を落としていた不楽に光の柱が突如として現れ、辺り一帯を昼の様な明るさで照らした。
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