怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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赤顏酒会

甘い面は電子の海から

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 その後、ホナゴならぬ浦和さんにおまじないをかけた鯖を食べさせて事件は解決した。
「『bostter』内でのみ傲慢だった浦和さん、だからスマホを手放した時に天狗じゃなくなったんだね」
「なるほど……そういえばホナゴって浦和を違う読み方にしたもんだったんだな」
「そのようだね」
 事件が終わったからと和風の店で大きな抹茶パフェを頼んだひとねは口の端についたクリームを舐める。
「それにしても……ネット内だと人は変わるものだね」
「そうだな」
「君はどうなんだい?」
「俺?」
 聞き返した俺にひとねは頷いて続ける。
「そ、気になる」
 そう言ってひとねは机の上にあった俺のスマホを取る。ロックをかけているから問題はな……
「……おい!」
 難なく解除してやがる! なぜだ!
「お前、なんでパスワードを」
「指紋から推測したんだ……ってのは冗談。君が解除していたのを見ていた。どれどれ……ほう、君はこんな趣味をしていたのかい」
 え? そんな変な事はぼやいていないはずだけど……そういえば……
「ちょ、おま。返せ!」
「おお、その反応は隠したい事でもあるのかな?」
 ひとねから取り返そうにも机に阻まれてすぐには行けない。
「お……へえ」
 ひとねが意外そうな顔をしたのを見て、俺は諦めて椅子に座る。
 偏食漠事件の直後、まだ色々と受け止めきれていなかった俺はいつもなら絶対に言わない弱音などを我慢できずにぼやいていたのだ。
 その中のひとつ、ある人に当てて一人呟くように投稿したものがあった。
『今回の問題を解決してくれた友人にはとても感謝してる。一生尽くすくらいに』と、いうものだ。
 もちろんそれは弱っていた時の事で、特に最後の一文は大袈裟に行ったものだったが……ひとねがニヤニヤしている。
「君がそんなに感謝していたとはね」
「……うるせぇ」
 手始めにここは奢らされる。そんな事を予想して財布を出す。
 しかしひとねから発せられたのは予想もしていなかった一言だった。
「今日は私が奢ろう」
「……え?」
「気分がいい、高ぶっている。だから奢ろうじゃないか」
 いつもと口調が違う。なにか今の言葉に仕込んであるのか……奢り高ぶる?
 もしかして洒落なのか? ひとねが?
「いや、奢って貰えるなら甘えるけど」
「うん、そうして」
 今までで一番と言っていいほど満面の笑みでひとねは言う。
 もしかして……喜んで、照れている?
 年相応なところもあるんだな……
 少し冷めてしまったココアを啜りながら俺は思う。
 人の意外なところは、意外なところで見つかるものだ、と。
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