怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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最果ての鍵

密室の鍵

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「とりあえず状況を整理しようか」
 全員に二杯目のコーヒーが配られたところでひとねが切り出した。
「倉庫と此処を繋ぐ扉は怪奇現象によってこちらからのドアノブでは開かない。内側からなら開くがもう一つの扉である外との扉は鍵がかかっている」
「窓もありませんから密室状態といって良さそうですね」
 森当くんの噛み砕いた説明に頷き、ひとねは続ける。
「両方の扉の鍵は倉庫、つまりは密室の中だ。私たちが達成すべき条件は……」
 先生の如く俺を指す。恐らくここまでの話を理解しているかの確認を含めているのだろう。
「扉を開く事。両方じゃなくて開くならどっちかで構わない」
「そういう事」

 *

 緑野は「わからん」と言って違うテーブルに行き、仕事に戻った。俺たちは四人で意見を出し合う。
「どっちの扉から攻め入ります?」
「武将かお前は」
「外の扉の鍵をどうにか開く事は出来ませんか? 此方、内側の扉の鍵を見た感じでは簡易な物なように思いますけれど」
「さっき緑野先生が言っていた通り外の扉は防犯の役目を果たしている。私たち素人が簡単に解けるとは思えないね」
 扉を壊すという手があるが……まあ、最終手段になるので誰も口にはしない。
 少し見方を変えた方がいいかもしれない。
「扉を無視してもどうにかしてあの部屋に入れれば解決なんだよな」
「天井裏とかないのかな?」
「あるとは思いますが恐らく電気配線の場所だと思いますので、危険かと」
「じゃあ地下は?」
「ありませんね」
 地下と聞いて思い出すのは地下図書館である。俺はひとねの方に身を寄せる。
「なあ、彼処に地下図書館の入口とか無いのか?」
「無いね、学校内では君が使っていた図書室の中、図書倉庫しか存在しない。もしあったとしても私たちはもう入れないだろう?」
「彼処は怪奇現象に関わっている者を招き入れる場所だろ? 緑野ならいけるんじゃないか?」
「どうだろうね、今まであと迷家に入って来たのは本人が怪奇現象に関わっている例ばかりだ。トシは微妙だが……怪奇現象に積極的に関わって収集しているなら深い関わりだろう」
「なるほど」
 ともかく地下図書館経由は無理、と。
 俺たちが地下図書館の話をしている間にも下里と森当くんは幾つか案を出していたらしい。
 何かの裏紙に書かれた案の全てが下里の字、下里が提案して森当くんが否定していった感じなのだろう。
「何か分かったか?」
「もう壊すしかないですね」
「もう最終手段かよ」
「いえ、あながち否定すべき意見でもありません。扉を壊すのは流石によく無いですが、一部ならば許容できるかもしれないです」
「一部?」
「そーです、扉の窓の部分だけ壊すんです! 流石に部屋に入れはしませんが内側のドアノブを捻るくらいならできます!」
「なるほど」
 流石にこちらで決めて即実行というわけにはいかない。俺たちは緑野に視線を向ける。
「壊すのはやめてくれ」
「窓だけですよ? 鍵を盗んだのがバレるより不注意で窓を壊したくらいの方が良く無いです?」
「一体型なんだよ。窓を壊したらドアもそう取っ替えだ」
「それは……高額になりそうですね」
 そもそも一体型でなければ窓を外せばいい話である。
「確かにこの前教頭先生がドライバー使ってドアごと交換してたな」
「そうなのかい?」
「ああ、覚えてる」
 そう言うとひとねは露骨にため息をついた。
「なら早くいいたまえよ……それならば、簡単な事じゃ無いか」
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