怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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忘却・二人

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「…………」
 あれから幾分か会話を交わしたが彼女達が冗談を言っているようには見えなかった。
 端的に言ってしまえば『少なくとも二人の記憶から俺が消えている』
 狼狽えたりしてもいいような状況だが少しばかり正体が見えているのであれば冷静にもなる。
 つまりはアレだ、怪奇現象だろう。
 しかし仲の良い二人からの「誰だコイツ」という視線は流石に辛いので適当な理由をつけて部室から逃げ出した。

「さて、とりあえずは……」
 踊り場の手摺りに体重を預け、怪奇現象を検索しようとしたら一人の少年が目の前で立ち止まった。なんだか暗い顔をしている。
「あの……」
 彼もまた見知った仲。
「森当くん?」
 名前を呼ぶと森当くんの顔に光が差し込んだ。
「僕の事が分かるのですか!」
「そりゃあ、まあ」
「健斗先輩の記憶力ならもしやと思いましたが、よかったです!」
 彼の言動からなんとなくの事情はわかった。
「ひとね達から忘れられてたか」
「そうなんです! しかし流石は漠の記憶力……と、すいません。安心しちゃって」
「いや、大丈夫」
 だが間違いは正さないといけないだろう。
「でも俺は記憶力のアレで覚えてるんじゃないんだ。俺も二人に忘れられている」
「……そうなんですか?」
「ああ、怪奇現象に遭っているのは俺たち二人みたいだ」

 *

「さてと」
 今回の……人に忘れられる怪奇現象について何故か圏外のスマホで検索した結果、当てはまりそうなのが一つあった。
『忘門
    実態はなく門に付随する怪奇現象である。
    付随された門をくぐった者は周りの人から忘れられてしまう。
    門と定義しているが現代においては扉にも付随する事がある。
    約十二時間毎に移動するが忘却の効果は継続する。
    時間内であれば複数人に効果があるが一人でも効果が切れれば全員が解除される』
 スマホをスワイプしてページをめくる
『解除方法は単純明快。もう一度扉をくぐる事である』
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