怪奇探偵・藤宮ひとねの怪奇譚

ナガカタサンゴウ

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クローバーの葉四つ

文化祭inくだり

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 さてさてさて、文化祭です! 文化祭インくだりちゃんです!
 今日のわたしは「さて」を一つ多く使うくらいテンションが上がっています。
 我らが高校の文化祭、残念な事に日数は一日。基本は生徒のみだけど招待された人は入れる仕組み、確か一人につき二人までだったかな?
 まあ、驚愕には値しない普通の日程でしょう。
 しかし違うのは使える教室の多さ! 文化部を収めてなお余りある旧校舎の空き教室が文化祭では開放されるのだ!
 やる気のあるクラスは自教室と旧校舎、それから外の出店スタイルと三つの出し物をする所だってある。流石に稀だけどね。
 その影響で出店されているのは多種多様。チュロスとかお化け屋敷とかの定番はもちろん、変なものも沢山! 例えば……えっと……

 わたしはパンフレットを開き目を走らせる。校内なのにスキー!? 何それ面白そう!

 この圧倒的楽しそうな文化祭、実のところ高校選びの最後の決め手になっていたりする。生徒会長に立候補して文化祭の日数を増やす野望はあるけれど、それは鬼が笑う話だね。
 そんな訳で下里くだり、この文化祭を隅々まで満喫する所存であります!

 惜しむらくは出店が許可制かつパンフレットに必ず記載される事。ゲリラライブとかしたかった。

 それにしても、店番暇だなぁ……

 *

「じゃあひとねちゃん、また迎えにくるねー!」

 店番交代の時間が訪れ、今度こそ文化祭インくだりちゃん! 
 さてさてさて、わたしが最初に訪れたのは製菓研。ひとねちゃんが食べてたのをみて気になったのです。
 製菓研の部室は調理室。調理実習で一回使ったから迷わずに到着。
 聞いた通りメニューはサーターアンダギー。味はプレーン、シュガー、イチゴ、黒糖、紅芋、チーズ。
 甘いものものしか知らなかったわたしは好奇心に任せてチーズを頼む。売り子をしていた一人がクラスメイト。少しばかり雑談を交わした。
 どうやら午後からはスティックケーキも追加らしい。おやつは決まりだね!

 違う客が来たので店から離れ、サーターアンダギーをひとつまみ。粉チーズ……とは違うけれどチーズ味の粉が塗されている。思ったよりもチーズの味が強い。
 生地の甘さは控えめ。全部そうしているのか、味にあわせて変えているのか……後でひとねちゃんに聞いてみよ。
 これはスティックケーキも期待できる。

 幸先やよし、お次は何処に赴こうかしら!

 *

「文化祭最高!」

 文化祭は皆テンションが高い。いつもはわたしのノリに付き合ってくれない人でも今日だけは違う。
 校内スキーで最速記録を叩き出し、超遠距離スナイパー射撃ではクマ人形の目を弾き飛ばした。クマさんにはごめんなさいだけど盛り上がりは最高だった。
 計画性が無いと全ては楽しめない。動き回るのが意外と多かったから午前はアトラクション、午後はグルメと計画を立てた。
 しかし犯罪でも救出劇でも計画というのは狂うものである。わたしの計画は最初のサーターアンダギーで狂っていたのである!
 匂いに誘われ焼そばパン。今なら焼きたての謳い文句で箸巻き。食べ比べるべきだと言われて明石焼。予想外の粉もん&ソース連撃にわたしのお腹は悲鳴をあげていた。もう別腹すら使い果たしちゃった。
 あ、箸巻きってのはお好み焼きを箸に巻いたやつ、スティックお好み!
 ともかく休めるところを探してよたよた歩いていると裏門の近くで異様な集まりを見つけた。

 集まっている人には見覚えがある。生徒会長に文化祭実行委員長、あと進路指導の黒田先生。
 誰か怒られているのかと物陰から覗き込む。しかしその中心に人はいない。
 代わりにあったのは木製の台座。あれ? 上にクローバーのオブジェが無かったっけ?
 これはおもしろ……事件の予感! 

「どーしたんですか?」
「ん……ああ、図書部の」

 一番関わりのある生徒会長がこちらを見た。他二人は一瞥した後視線を台座に戻す。

「見ての通りだよ。文化祭の象徴、オブジェが無くなっているんだ」

 クローバーはこの文化祭において恋の象徴でもある。撤収作業の後に行われる後夜祭、その喧騒に紛れて想い人にクローバーのモノを渡す人も多いとか。
 その象徴であるオブジェを盗む、つまり……

「恋泥棒ですね!」
「オブジェ泥棒。だれの恋も盗んでいないよ」
「いえいえ、そのオブジェを想い人に渡して文化祭最大の愛を伝えるんです! つまりアレです」

 わたしは笑顔を辞めて真面目な顔になる。

「奴はとんでもないものを盗んでいきました……ってヤツです!」

 最後のセリフを先取りするのは申し訳ない。もしその役割がいないのならば絶対わたしが言おう。

 会長は少し笑いながらもため息をつく。

「下里さん。もしかしてこの件について何か知ってるのかな?」

 会長の言葉に残りの二人の視線もこっちに向く。実行委員長はともかく黒田ティーチャーの目が怖い。

「いえ、なーんにも知りません」
「じゃあさっきの恋泥棒とかの発言は……」
「要望……願望? そうだったらいいなって」

 ため息が三つに増える。あまりお邪魔してもいけないのでわたしは退散する。
 この時のわたしは知らなかった。彼が恋泥棒じゃなく、もっと面白い怪盗だという事を!! 

 いやまあ、これも願望なんだけどね!

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