日常のひとコマ

繰奈 -Crina-

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小銭貯金 (男性/お金/趣味)

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お金を貯めるのなら、性格が細かくないと駄目だというのが彼の理論である。
会社の後輩や久し振りに会った友人の前で、いつもそう切り出してから、お金についての持論を語り出す。
そんな彼のことを、周りは「貯め込んでるんだろうなぁ」となんとなく思っていた。


だが、実際のところ彼の貯金額は170万ほど。
30歳を目前にした会社員の貯金額としては決して多くはない。
むしろ、少ない方だと言っても良いだろう。

彼自身は、貯金ゼロの状態から3年でここまで貯めたことで十分に満足しているようだ。
過去の浪費額が現在の貯金額を優に上回っていることは、考えないようにしている。


彼が真面目に貯金をし始めたのはここ数年の話である。

積立貯金を放置していたらいつの間にか100万を超えていた。
それがきっかけである。

100万円という額には、何やら特別な響きがある。
彼は、それをきっかけにして小銭を貯めるようになった。

まず、貯まった100万円を3年間の定期にした。
3年後には2万ちょっとの利子がついているはずだ。

そして、銀行の手数料を絶対に払わなくなった。
そのためにメインバンクを変えた。

次に、500円玉貯金を始めた。
その次には小銭貯金を始めた。
そして、大変な目に遭った。


小銭は、貯めることは容易だが利子がつかない。
そこで彼は、総額で12万円ほどになった小銭を銀行に預けることにした。
12万円分の小銭は、驚くほどに重たかった。
窓口が閉まっていたので、何回にも分けてATMで少しずつ入金した。

山ほどの小銭を受け取ったATMは、小銭を正しいところに収めるまではジャララと音を立てて動きを止める。
「しばらくお待ちください」の画面を彼は合計で20分近く眺めることとなった。


それ以来、彼は小銭貯金の合計が1,000円を超すと、手持ちの千円札と両替することにした。
なので、彼の小銭入れはいつもパンパンである。


今日、EXCELで付けている家計簿の小銭貯金の合計欄が、ちょうど1,000円になった。
妙に嬉しい気分で、彼は財布から1,000円を取り出し『小銭貯金-入金用』と書かれた封筒に入れる。



貯金について、彼は口で言うほど重要視していない。
月の給料が27万あると、それなりの生活ができる。
積立貯金をだけで、年間で100万は貯まっていく。

それだけで十分だと思っていた。


それでも、貯金方法について徹底したり周りに演説したりするのは、それが純粋に楽しいことだからだ。
細かな小銭を積み立ててお札に両替すること。
貯まった小銭の重さを確認すること。
貯金通帳で成果を確認すること。

それは、彼にとっての楽しみなのである。
苦痛じゃないから、いつまでも続けられる。


彼は貯金の大切さよりも、貯金することで得る楽しみの素晴らしさを人に伝えたいのだ。
周りも、彼が楽しそうに話すから、お金の話を下品な気分にならずに聞くことができる。


いつか胸を張って堂々と貯金が趣味だと言えるように、彼は今日も小銭を貯める。

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