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第一章 島が異世界転移
病院での遭遇
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「斗真どこにいるのかって、受付に聞いたら教えてくれるかな?」
特に計画性もなく病院近くまで来てしまったため、今更ながら疑問に思いつつ玄関の方に歩いていく。
「教えてもらえなかったら、帰ろうか?」
「うん、そうだね」
「まー、そうなるよな…ってアレ、斗真じゃね?」
玄関からこちら側に歩いてきていた人物が斗真のようだった。
「タイミングよかったね!」
「ほんとだな、んじゃ、どっか公園とかで話するか?」
香里奈と俺が手を振りながら三人で斗真に近づいていくと、斗真も気が付いたみたいで手を振りかえしながらこちらに歩いてきた。
…その時、玄関より手前の部屋の窓から誰かが飛び出てきて、着地した。
「ねぇ、あれって!!」
鈴花がそれに気づいて、指さすと俺と香里奈もそっちを見る。見た目外国人の病人が走って病院の敷地外に逃げているようだった。
「あ、ぶつかるんじゃ?」
香里奈が言ったように、ちょうど植木でさえぎられ、斗真も外国人もお互いの存在に気付いていないようで、数秒後には出会いがしらにぶつかりそうだった。
「斗真ちょっと、そこでストップ!!」
俺が大きめの声で言うが、ちょうど救急車が入って来たタイミングで、斗真は聞こえていない。
「え?何?」
「うぁぁぁぁあああ!!!」「おぅ!」
結果として、そのまま歩いてきた二人はやっぱり衝突した。外国人が低い姿勢で走っていた事もあって、斗真がタックルを受けたようになっていた。
「あちゃー、大丈夫かな?」
頭を打ったりしたようには見えなかったし、あんまり大事には見えなかったこともあって、俺たちも小走りで駆け寄った。ちょうど、外国人が起きて俺たちに気づいたようだ。
「すまない、急いでいてぶつかってしまった。…子どもたちか?ここから早く逃げるんだ!!この建物では、怪しげな集団が拷問をしているんだ。」
起き上がった斗真も含めて俺たち4人は、ポカーンとしていた。
目の前の外国人が流暢な日本語で、病院で拷問が行われているなんていって走って逃げているのだ。
まだ、人質を取って立てこもりしている集団がいるって言われた方が納得がいく。まぁ、のどかな田舎街では、それでも天地をひっくり返すような驚天動地の大事件なのだが…。
だいたい、拷問なんて起こっていたら、もっと周りも大騒ぎになって、逃げ惑っているはずなのだ。なのに、逃げているのは、目の前の一人。精神性の疾患とか患っているのだろうか?あるいは、クスリとかでイっちゃってるやばい奴なのだろうか。
「どうした、早く立って逃げるんだ!!」
いち早く思考が復帰した斗真が話しかける。
「あのー、この建物から逃げるって…病院からですか?」
「ここは、ビョウインというのか?そうだ、こんな危険なところに子どもが入るものじゃない!!」
「キケン?」
「危険ねぇ?」
いやいや鈴花と香里奈も、なんでそこで俺の方を見るんだよ。……横を見ると斗真も黙ってこっち見てた。
「危険?えーっと、病院っていうかホスピタルとか言った方が良いのかな?病気やけがを治すところであって、拷問するところではないですよ?」
一応、英語で病院と言った方がよいかと思ったが、向こうが日本語で話しているのだから、気にする必要はないかと思って、そのまま病院の説明をする。小学生でも知っている内容を、大の大人に対して…。
「は?君たちは、ここが何をしているのか知っているのか?私は、さっき目がさめたら、この建物の一室のベッドに寝かされて、腕に針のようなものを刺されて、何か液体を流しこまれていたんだ。」
「ほらっ」と言って、注射の後を見せられるが、別に縛り付けられていたわけでもないなら、普通の医療行為じゃん。皆を見回すが、苦笑いで見つめ返された。
「きっと、この後拷問にかけられると思って逃げているところなんだが…」
「あーー、いたーーーー!!」
なおも、話し続ける外国人の声を遮って、玄関の方から急いでいる風の看護師が大きな声を出してこちらに近づいてきた。
「しまった、見つかったか。早く君たちも逃げるんだ!!」
そのまま、俺たちをひきずってでも逃げそうな雰囲気にはおどろいたが、今までのセリフは、まんま病室で点滴されて治療されてるだけっぽいじゃん。追ってきている看護師に説明を聞けば全てわかりそうだが、とりあえずこの人を落ち着けるべきか…。
「ちょっと待ってください。ここで拷問なんて行われないから!!ほんとに、体を治療する場所なんですって。ちょっと落ち着いて説明を聞いてくれませんか?それに、拷問って実際に見たんですか?」
「それは!!…いや、確かに拷問する現場は見てないが、私の体に液体が…」
「だから、それが治療なんですって!!!」
その後、市議会から事情を聞かされていた一部の医師が、目覚めたディータをつれてきて一緒に説明することで、ようやく誤解だとわかったようだ。
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「そうだったのか……」
「くっくっくっ………!!ぷはーっ!!ダメだ、御曹司が、こんなに焦るなんて。面白いもの見せてもらったよ!!」
ディータがアンドレウスに説明し終わって、腹をかかえて笑っている。アンドレウスは、普段は落ち着いていて、いかにもやり手の商人に見えるし、実際そこらの店もち商人の中でもかなりの能力がある。だが先程までの彼のとり乱し様は、新人が失敗したかのような珍しい姿だった。見るもの、見る人、全て新鮮なここでの戸惑いはわかるが、先程までの慌て振りに、ディータは笑いがとまらなかった。
「その、御曹司というのはやめてくれないか!!貴族でもないし、もう、子供でもないんだから!!」
「ハハッ!!いや、すまない。そんなムッとした表情で言われたら、…プッ!!!ブフーー!!だめだ、止まらない。」
アンドレウスも、先程までの自分を思い返して、恥ずかしさでうつむいていた。千歳たちの説明で、拷問施設ではないという話はともかく、すぐに逃げないと身の危険を感じる状況ではないと考えられるほどには落ち着いていた。しかし、一度抱いた不信感は容易には拭えず、ディータの説明を受けるまで頑として警戒を解かなかったのだ。
ディータの話によると、彼からこの国に保護を願い出て、なおかつ自分や父も含めて倒れている者の治療をしてもらったとのこと。信用うんぬんより、社会的常識から自分の取った行動がマズイものであるのはわかった。受けている恩に対して、邪神崇拝の集団とのたまうのは、流石に体裁が悪い。起きた時にたまたま誰も室内にいなかったのは不運だったが、まだ起きていないという父親とレイモンドも治療中で、アンドレウスと同様に回復しているようだとディータから聞いている。
「フーーッ。いや、確かに、あのままだったらまず間違いなく全滅してただろうしな。そこから目が覚めたんだから、不安なところもあっただろう。いや、それにしても皆さんにはお騒がせして、ほんとにすまなかった。」
そう言ってディータは、説明のために駆けつけた医師や追ってきた看護師、それに千歳たちに向けて首を垂れた。食事や船やベッドにエアコンなどディータは短期間の間に、かなり島の生活に興味を持ったようで、周りの人に対する配慮がうかがえる。
「いや、わかってもらえたならかまいませんよ。それでは、とりあえず病室まで戻ってもらえますか?」
医師が苦笑いといった風でいるところ、よほどの騒ぎになりかけていたんだろう。看護師も慌てて走っていたし。
「すみませんでした。父もレイモンドも建物の中に残っているというし、ちょっと寝ている顔を見て行っても良いですか?」
「えぇ、ずいぶん疲労しておられたようで、まだ眠られていると思います。自然と目が覚めるまで起こさない方が良いと思いますので、病室の入口から覗くだけにしてもらって良いですか?」
「はい、十分です。ありがとうございます。」
そういって、アンドレウスが千歳たちの方に向き直った。
特に計画性もなく病院近くまで来てしまったため、今更ながら疑問に思いつつ玄関の方に歩いていく。
「教えてもらえなかったら、帰ろうか?」
「うん、そうだね」
「まー、そうなるよな…ってアレ、斗真じゃね?」
玄関からこちら側に歩いてきていた人物が斗真のようだった。
「タイミングよかったね!」
「ほんとだな、んじゃ、どっか公園とかで話するか?」
香里奈と俺が手を振りながら三人で斗真に近づいていくと、斗真も気が付いたみたいで手を振りかえしながらこちらに歩いてきた。
…その時、玄関より手前の部屋の窓から誰かが飛び出てきて、着地した。
「ねぇ、あれって!!」
鈴花がそれに気づいて、指さすと俺と香里奈もそっちを見る。見た目外国人の病人が走って病院の敷地外に逃げているようだった。
「あ、ぶつかるんじゃ?」
香里奈が言ったように、ちょうど植木でさえぎられ、斗真も外国人もお互いの存在に気付いていないようで、数秒後には出会いがしらにぶつかりそうだった。
「斗真ちょっと、そこでストップ!!」
俺が大きめの声で言うが、ちょうど救急車が入って来たタイミングで、斗真は聞こえていない。
「え?何?」
「うぁぁぁぁあああ!!!」「おぅ!」
結果として、そのまま歩いてきた二人はやっぱり衝突した。外国人が低い姿勢で走っていた事もあって、斗真がタックルを受けたようになっていた。
「あちゃー、大丈夫かな?」
頭を打ったりしたようには見えなかったし、あんまり大事には見えなかったこともあって、俺たちも小走りで駆け寄った。ちょうど、外国人が起きて俺たちに気づいたようだ。
「すまない、急いでいてぶつかってしまった。…子どもたちか?ここから早く逃げるんだ!!この建物では、怪しげな集団が拷問をしているんだ。」
起き上がった斗真も含めて俺たち4人は、ポカーンとしていた。
目の前の外国人が流暢な日本語で、病院で拷問が行われているなんていって走って逃げているのだ。
まだ、人質を取って立てこもりしている集団がいるって言われた方が納得がいく。まぁ、のどかな田舎街では、それでも天地をひっくり返すような驚天動地の大事件なのだが…。
だいたい、拷問なんて起こっていたら、もっと周りも大騒ぎになって、逃げ惑っているはずなのだ。なのに、逃げているのは、目の前の一人。精神性の疾患とか患っているのだろうか?あるいは、クスリとかでイっちゃってるやばい奴なのだろうか。
「どうした、早く立って逃げるんだ!!」
いち早く思考が復帰した斗真が話しかける。
「あのー、この建物から逃げるって…病院からですか?」
「ここは、ビョウインというのか?そうだ、こんな危険なところに子どもが入るものじゃない!!」
「キケン?」
「危険ねぇ?」
いやいや鈴花と香里奈も、なんでそこで俺の方を見るんだよ。……横を見ると斗真も黙ってこっち見てた。
「危険?えーっと、病院っていうかホスピタルとか言った方が良いのかな?病気やけがを治すところであって、拷問するところではないですよ?」
一応、英語で病院と言った方がよいかと思ったが、向こうが日本語で話しているのだから、気にする必要はないかと思って、そのまま病院の説明をする。小学生でも知っている内容を、大の大人に対して…。
「は?君たちは、ここが何をしているのか知っているのか?私は、さっき目がさめたら、この建物の一室のベッドに寝かされて、腕に針のようなものを刺されて、何か液体を流しこまれていたんだ。」
「ほらっ」と言って、注射の後を見せられるが、別に縛り付けられていたわけでもないなら、普通の医療行為じゃん。皆を見回すが、苦笑いで見つめ返された。
「きっと、この後拷問にかけられると思って逃げているところなんだが…」
「あーー、いたーーーー!!」
なおも、話し続ける外国人の声を遮って、玄関の方から急いでいる風の看護師が大きな声を出してこちらに近づいてきた。
「しまった、見つかったか。早く君たちも逃げるんだ!!」
そのまま、俺たちをひきずってでも逃げそうな雰囲気にはおどろいたが、今までのセリフは、まんま病室で点滴されて治療されてるだけっぽいじゃん。追ってきている看護師に説明を聞けば全てわかりそうだが、とりあえずこの人を落ち着けるべきか…。
「ちょっと待ってください。ここで拷問なんて行われないから!!ほんとに、体を治療する場所なんですって。ちょっと落ち着いて説明を聞いてくれませんか?それに、拷問って実際に見たんですか?」
「それは!!…いや、確かに拷問する現場は見てないが、私の体に液体が…」
「だから、それが治療なんですって!!!」
その後、市議会から事情を聞かされていた一部の医師が、目覚めたディータをつれてきて一緒に説明することで、ようやく誤解だとわかったようだ。
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「そうだったのか……」
「くっくっくっ………!!ぷはーっ!!ダメだ、御曹司が、こんなに焦るなんて。面白いもの見せてもらったよ!!」
ディータがアンドレウスに説明し終わって、腹をかかえて笑っている。アンドレウスは、普段は落ち着いていて、いかにもやり手の商人に見えるし、実際そこらの店もち商人の中でもかなりの能力がある。だが先程までの彼のとり乱し様は、新人が失敗したかのような珍しい姿だった。見るもの、見る人、全て新鮮なここでの戸惑いはわかるが、先程までの慌て振りに、ディータは笑いがとまらなかった。
「その、御曹司というのはやめてくれないか!!貴族でもないし、もう、子供でもないんだから!!」
「ハハッ!!いや、すまない。そんなムッとした表情で言われたら、…プッ!!!ブフーー!!だめだ、止まらない。」
アンドレウスも、先程までの自分を思い返して、恥ずかしさでうつむいていた。千歳たちの説明で、拷問施設ではないという話はともかく、すぐに逃げないと身の危険を感じる状況ではないと考えられるほどには落ち着いていた。しかし、一度抱いた不信感は容易には拭えず、ディータの説明を受けるまで頑として警戒を解かなかったのだ。
ディータの話によると、彼からこの国に保護を願い出て、なおかつ自分や父も含めて倒れている者の治療をしてもらったとのこと。信用うんぬんより、社会的常識から自分の取った行動がマズイものであるのはわかった。受けている恩に対して、邪神崇拝の集団とのたまうのは、流石に体裁が悪い。起きた時にたまたま誰も室内にいなかったのは不運だったが、まだ起きていないという父親とレイモンドも治療中で、アンドレウスと同様に回復しているようだとディータから聞いている。
「フーーッ。いや、確かに、あのままだったらまず間違いなく全滅してただろうしな。そこから目が覚めたんだから、不安なところもあっただろう。いや、それにしても皆さんにはお騒がせして、ほんとにすまなかった。」
そう言ってディータは、説明のために駆けつけた医師や追ってきた看護師、それに千歳たちに向けて首を垂れた。食事や船やベッドにエアコンなどディータは短期間の間に、かなり島の生活に興味を持ったようで、周りの人に対する配慮がうかがえる。
「いや、わかってもらえたならかまいませんよ。それでは、とりあえず病室まで戻ってもらえますか?」
医師が苦笑いといった風でいるところ、よほどの騒ぎになりかけていたんだろう。看護師も慌てて走っていたし。
「すみませんでした。父もレイモンドも建物の中に残っているというし、ちょっと寝ている顔を見て行っても良いですか?」
「えぇ、ずいぶん疲労しておられたようで、まだ眠られていると思います。自然と目が覚めるまで起こさない方が良いと思いますので、病室の入口から覗くだけにしてもらって良いですか?」
「はい、十分です。ありがとうございます。」
そういって、アンドレウスが千歳たちの方に向き直った。
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