街がまるごと異世界転移

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第一章 島が異世界転移

会話内容の聞き取り(後編)

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「はい、大丈夫です。誰にもしゃべりません!!」「「はい」」

2・3秒くらい間を開けたが、特におかしいところも感じなかったので、議員さんのお願いに即答ぎみにそのままうなずいた。
香里奈と鈴花も俺と同様のようだったが、斗真だけ逆に質問していた。

「すみません。具体的にどれくらいの期間で市内全体に情報が通知されるのか、教えていただいてもよろしいでしょうか?」

質問した議員が、ちょっと意外といった感じの表情をしていた。が、俺は何でこの状況で質問できているのかって思ってた。いわゆる圧迫面接じゃないけど、個室で対面には見知らぬ大人が数人。その中で、半強制的な(特に疑問も感じない)指示があれば、高校生としてそのままうなずくのもおかしくないと思う。議員さんたちが準備していたことをダメにしてしまったらしい状況で、その議員にO・NE・GA・Iされたら、難しい事でなければOKしちゃうだろうに。
そんなことを俺が思っている間にも斗真は言葉を続ける。

「あまりに長い期間家族とかに隠し事を続けているのは、難しいというか精神的な負担になるだろうし。肉親なら、そのストレスや知らないうちにとってしまう不自然な態度で、何か隠し事しているって気取られるかもしれない気がして…。なので、できればいつまでって期間がわかっている方が、黙っていることに対するストレスも少なくて、結果として黙っていられるかなって思いました。もちろん、2・3日程度なら、特に問題ないですが、一か月とかなると…。」

議員さんも納得したといった感じで軽くうなずいている。なるほど、確かに父さんと母さんが相手だと隠し事を一か月続けるというのは、意外と難しいと思う。

「なるほど、言われてみればそうだね。」

そういうと、その議員さんが柊さんと少し話して、斗真だけでなく俺たち4人を見て答えてくれた。

「聞き取りの話の進み具合とかにもよるから、おそらくとしか言えないが、1週間から長くて10日あれば市内に通知するように約束しよう。」

「ありがとうございます。私も誰にもしゃべりません。」

皆も大丈夫だよな?って感じで俺らの方を見てたから、三人ともウンとうなずいた。
それで話は終わりかと思ったが、どうも様子が違うらしい。俺たちが聞き出した内容と、さきほどの斗真の受け答えを見て、少し議員同士で話をしている。俺たちには聞き取れないくらいの声で1分程度話し合っていたようだが、二人でこちらに向き直って、柊さんが話し始める。

「今日は、聞き取りさせてもらってありがとうね。それで、これからなんだけど、悪いがもし急用がなければこのまま今日だけ異世界人の彼らとの話し合いに、一緒に出席してもらえないかな?
もちろん、夕食もこちらで手配するし、帰りのタクシーも用意する。向こうも病み上がりだから、遅くとも21時には話を切り上げて、残りは明日以降に話をすることにするから。」

思いがけない話で、どうしてなんだろう?というのが、顔に出てたのか柊さんが続けて理由を説明した。

「なんでだろう?って表情しているね。理由は、君たちがあちらの一人と…いや、その一人の奇行を止めに来てくれたもう一人を入れて二人と既に面識があるってことだね。それと、こちらにまとめてある内容を聞き出せる程度には、仲が良いって事だろ?」

そういって、さっきの聞き取りをまとめた紙をヒラヒラとする。

「これから彼らと会話するんだけど、土地の為政者側が相手となると相手も緊張したり、硬くなったりして話の内容が限定されかねないんだよね。知らない者同士だし、立場があるとしょうがないことでもあるんだ。普段は初対面の相手と打ち合わせとかする場合は、最初は顔合わせだけって事もあるんだ。その場合、顔合わせでは実務的な話をしない事もあるんだけど、島民の不安を思えば、聞けることは早く聞けるにこしたことがない。
それで、可能なら既に面識がある君たちにも参加してもらって、話を早く進めようってことなんだ。だから、話を動かすためにも、黙ったまま全く会話しないというのも困るけどね。」

「それは………」

「まぁ、どうしてもってわけでもないから、都合が悪いとか参加したくないとかなら、それでもかまわないよ。その場合も、ちょっと周りが暗くなってるし、こうして会話の内容を教えてくれたんだから、お礼に自宅まではタクシーで送ってあげるから安心して。」

少し言いよどんだ時に、断っても問題ないって柊さんが付け足してくれる。
個人的にはもう少し話をしたかったぐらいだ。けど、それって内容にもよるけど、さらに話せなくなることが増えるって事じゃないのか?言いよどんだのは、俺はイイけど、皆はどうだろうか?と思ったからだ。
そう思って横を見てみるが、斗真は表情が変わらないから、おそらく俺が賛成すれば、まぁいいかって同意してくれそうだ。それに嫌だって言えば、やっぱり同意してくれそうな気がする。斗真個人が決めるなら……どっちだろう?
香里奈と鈴花は、さっきの議員と斗真とのやりとりでちょっとまれている気がするけど、興味はあるみたいだ。俺と同じで、アンディ以外の人とも話してみたいっていう感じなのかな?

別に参加しても良いですよ!!」

今度は、さっきみたいに即答せず周りを見れるだけの落ち着きもあって、自分の意見をきちんといえたと思う。それに、全員の総意みたいな感じにならないように、俺の意見として言ったつもりだ。柊さんもそのあたりは心得ているといった感じで一つ頷いて、質問を繰り返す。

「それで、他の子達はどうかな?」

そういって、端にいる香里奈から順に視線を向ける。

「私も参加したいです。」

香里奈もどうやら参加することにしたみたいだ。

「私も参加してみたいです。」

「僕も参加してみたいです。」

俺と香里奈が参加したからって言うのが理由ではないだろうが、鈴花・斗真も参加することにしたようだ。まぁ、三人ともさっきと同じで俺が質問したり会話したいっていうのはわかっているだろうから、「自分たちが質問しないと!!」って気負う必要もないだろうしな。

「そうか、ありがとう。話し合いは、食事をとりながらする予定だから、家に電話してもらってその事伝えてもらって良いかな?親御さんには、こちらからもお願いするから。」

「はい!!……って、そういえばウチ電話通じませんよ?」

「あー、そうだったな…。他に家に電話通じない人いるかな?」

俺の答えに、失念していた感じで柊さんが答える。固定電話なら通じるらしいという話は、昨日父さんが帰ってきた時に聞いたから、電話通じる家と通じない家があるんだろうけどね。

「あ、ウチは両親ともここで働いているから、直接言ってくれれば良いと思います。」

斗真は、今回そもそも電話がいらないのか。

「うちは電話通じます。」「うちも!!」

鈴花の家も香里奈の家も通じるらしい。ウチだけか…。

「そっか、んじゃ、千歳君の家には、和成の会社の方に電話してみるよ。ダメならだれかタクシーで伝えてきてもらうから。」

「あ、すみません。お願いします。」

母さん心配するだろうし、連絡しなくて良いとは言えなかった。
その後、父さんに電話がつながって、香里奈と鈴花も電話で家に連絡していた。友達と議員さんの仕事を手伝うから、夕食はいらないし、帰りは遅くとも21時すぎには終わるらしいよってね。電話の途中で実際に議員さんに交代して、説明してもらった。ちょっと秘密にしないといけないことがある事と、帰りはタクシーで送りますので、ご心配なさらないでください。ってね。

その後、秘書さんが先程とは別の、プリントアウトした数枚の紙を持ってきてくれた。それは今日の話し合いで、できれば知りたいという内容だそうだ。ザッと見ておいて、話の流れで無理なく聞けそうなら聞いてほしいと言われた。
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