街がまるごと異世界転移

HGCompany

文字の大きさ
上 下
33 / 50
第一章 島が異世界転移

魔法の授受

しおりを挟む
今日も朝から島内放送があって、今日まで休校ということを聞いた。ただし、昨日と違って自宅待機もなくなったので、予定通り朝の9時頃に鈴花の家(というか神社)に遊びに行くことにした。まぁ、自宅待機のままでも行ったんだけどね。

途中、街の様子を見ると、平日なのにいくつかの店が閉まったままになったりしていた。やっぱ食材とか島外から入手しているものが手に入らなくなったら、営業できなくなるところとかも出るよな。街中を走る車の数も、幾分少なくなっているようだ。ガソリンも手に入らなくなるだろうし、車がないと島の移動はキツくなるんだろうな。電車とかないし、バスも本数が多くないし…。

街中の違いを観察しながら、鈴花の家がある神社『神代かむしろ神社』についた。前に聞いた話では、出雲の方の流れをむ由緒ある神社らしいのだが、どういうのが由緒正しいのかなんか、俺にわかるはずもない。話半分に聞いていた。それに、神社はカムシロなのに、鈴花の苗字は同じ字でカミシロになっていたりして、ホントにつながりあるの?って感じもしてた。
けど、魔法をゲットできるからには、由緒正しいって言われて納得しないわけにはいかない。まぁ、島にいくつかある神社でも一番立派ではあるんだけどね。

神社に着いたのが9時5分くらいだったが、既に香里奈も斗真も来ていたようで、俺が最後だったみたいだ。
一応女の子の家に、朝早くから行くのは申し訳ない気もして、前日に約束してた9時ちょうどに着くよう考えて家を出たんだ。でも、神社に着いた今、よく考えたら神社なんだから多少朝早かろうが、一般の参拝客だって来てもイイだろうし、気を使う必要なかったな。
香里奈と斗真もそんな感じで、9時ちょっと前に着いたみたいだし、三人とも一番楽しみにしていた俺が一番遅かったのに驚いていた。何か事故にでもあったのかな?なんて、冗談で話ししていたところだったらしい。こっちがヘンに気を使ったのが原因だけど、なんかズルイ。いや、ズルくないんだけど、いつもガッツリ見ない街中の様子なんてもの見ながら、あえて気を使ってユックリと移動して時間をかけたのに。ホントはもっと早く来て良かったなんて…。

まぁ、とにかく今から魔法が手に入るんだ!!そんな小さい事は気にしない!!仮に生活魔法しか身に付かなくても、やっと不思議パワーが実感できるんだ、楽しみでしょうがないや!!!

「んで、香里奈と斗真ももうゲットしたのか?」

何をと口にしなくても、当然何の事なのかなんて二人ともわかっているようだ。でも、斗真と鈴花が香里奈の方を向いて苦笑いしている。二人のかわりに、鈴花が答えてくれるようだ。

「いや、一番楽しみにしていた千歳君が来てないのに、なんか申し訳ないからちょっと待とうって言って待ってたとこだよ。」

そういう建前らしかったが、斗真が真相をすぐバラす。

「ホントは、ほっといて先にやっとこうよ!!遅れる方が悪いんだからって香里奈ちゃんが言ってたんだけどね。」

「あー、言っちゃった。せっかく鈴花がフォローしてくれたのに。
それに、こっちだって楽しみなんだから、遅れる方が悪いのよ!!
だいたい、私が遅れて千歳が先に来てたら、千歳だって同じ事言って先にゲットしてたんだろうし。」

うん、建前のほうだったら、イイとこあるなって思ったけど、やっぱり香里奈だ。でも、指摘されたことも間違っていないので、しょうがないかなとは思うところだ。だが相手は香里奈だ。

「いやいや、ガキかよ!!ちょっとくらい待ってろっつーの!!」

「えー、千歳がそれ言うんだ。絶対私の考えてたとおりの事やっただろうに。」

皆、本気で俺たちが怒っていないのはわかってるけど、話が進まないので、斗真が進行してくれる。

「まぁまぁ、とりあえず過ぎた事だし、さっそくお祈りしてみようぜ!!」

「そーだな、ま、遅れて悪かったな!!」

「いいわよ別に。私だって本気で先にやろうなんて思ってないんだから…。」

ん?後の方は何言ったかわからなかったけど、まぁ、いつものだし気にしなくて良いか。それで、さっそくやり方を鈴花に聞いてみる。

「んで、鈴花は何か特別なお祈りか何かしたのか?昨日はどんな風にお祈りしたの?」

「んーと、まぁ毎日やっている事を昨日もやっただけなんだけどね。ご神体を安置している本殿とは別に、家族が住んでいる母屋に神棚があって、毎日そこに手を合わせてお祈りというか、お参りしてるね。」

「へぇ~、流石神社の娘だな!!」

「うん。それで昨日お参りした時は、異世界に来たとは思ってなかったから、特に魔法を下さいなんて直接的な事を考えてたわけじゃないし、お参りした後も、特別体が光ったり誰かの声が聞こえたりなんてしなかったよ。それもあって、ステータス確認した時も、いつ取得したのかわからなかったんだよね。」

「まぁ、何か授かった時に異変があれば、流石に思い当るもんな。」

「それで、アンディさんの話を思い出す限り、本殿に向かって魔法とかスキルを授けて下さいって、直接的に考えてお参りすれば良いんじゃないかな?」

「そっか、そうだよな。鈴花の家の神棚に島民が皆お参りしに行くわけにもいかないだろうし、まず本殿の方でやるべきだな!!」

そういう結論になり、一通り神社の参拝について鈴花にレクチャーしてもらった。まぁ、普通に「二礼二拍一礼」のやり方や、その前の御手洗みたらしのやり方なんかを教えてもらった。二拍でなく四拍というところもあるみたいだが、ここでは二拍で良いみたいだ。
んで、思い違いしていた事があって、参拝の時は目をつぶらなくて良いとか、柏手かしわでというのかと思ったら、拍手はくしゅと呼ぶんだと。さらに特別に手を合わせてお参りする必要もないらしい。へぇ~と、豆知識を入れつつ習ったばかりのやり方で、三人とも参拝する。

途中で神棚があれば自宅でも良いのか?とも思ったけど、鈴花の家の神棚って神社の敷地内だし、神域みたいな感じなんだろうなぁ~と思った。んじゃ、わざわざ本殿でなくても、今立っているこの場所でもお参りしたら手に入るのでは……と、気づいたのだが、こういうのは、形式と気分が大切だよな!!そう思って、黙ってお参りしてきた。もちろんお賽銭も入れた来たぜ!!

お参りして、本殿から少し離れた位置で、さっそくステータス確認すると、以下のようになっていた。

------------------------------------------------------------
【名前】くすのき 千歳ちとせ
【年齢】17歳 【性別】男 【種族】人族
【階級】平民  【レベル】1
【称号】異世界人

【HP】  18/  18
【MP】   3/   3
【筋力】  10
【耐久】  11(+2)
【精神】   3
【敏捷】  11(+1)
【器用】  10
【知力】   9
【幸運】   8

【スキル】
異世界言語認識、魔力制御(Lv.1)

【魔法】
土魔法(Lv.1)

【技名】
○[土魔法][▼]

------------------------------------------------------------

「よっしゃあーーーー!!土魔法ゲットォーーーー!!」

思わず叫んでガッツポーズしてしまったが、超嬉しい!!
『魔力制御』は取得できるって聞いてたとおり手に入って、そっちも当然嬉しい。でも、やっぱ魔法という名のつくものが手に入るのが嬉しい。これで、色々できる!!……はず……なのか?
よくよく考えると、MP3でできる魔法があるのかな?

「あれ?」

よく見ると、【魔法】の下に【技名】ってのが出てきてるな。しかも、魔法名と同じ『土魔法』で横に[▼]が表示されてる。これは、詳しく見れるとかいうなのか?
そこを確認したいと思いつつ、ジーーッと眺めると以下のように表示された!!

------------------------------------------------------------
○[土魔法][▲]
・ストーン
・ストーンボール
------------------------------------------------------------

「おぉー、技名は別で出るのか!!」

どうやら皆も魔法ゲットできたみたいだ。で、俺がウルサク色々呟いている事は、同時に自分たちも確認しているのか、特に何も言われない。完全放置だ。相槌さえない。香里奈と斗真は、集中して自分のステータス見ているようで、鈴花は優しく見守っている感じだ。あぁ、私も経験したなぁ~って感じかな?

『ストーンボール』は、イメージできるけど、『ストーン』って石か?そういえば、昨日ウチで鈴花が使った魔法も『ウィンド』で、「ボール」が付かない魔法だったけど、まんま属性の効果のものが出るのか?んじゃ、石とか岩とかが出るのか…。ビミョー。いや、手に石出して投げるっていうのは……やっぱビミョー。しかも石出して何するんだ?『ウインド』もそよ風程度だったし、『ファイヤ』と『ウォーター』以外は、属性の効果が出るだけだと微妙じゃねーかな。
しばらくして、確認終わったっポイ香里奈と斗真に何を取得できたのか聞いてみる。

「香里奈と斗真は何の魔法手に入れたんだ?俺は『土魔法Lv1』だな。『ストーン』っていうのが使えるみたいだけど、…これって石だすだけなんだろうな。他に、『ストーンボール』ってのが使えるみたいだ。こっちは、普通に考えて石か岩かの固まりを飛ばすんだろうな。」

「えーと、私は『火魔法Lv1』ね。『ファイヤ』と『ファイヤーボール』が使えるみたい。まぁ、昨日の鈴花の魔法を見た感じだと、『ファイヤ』で種火程度の火を出せて、『ファイヤーボール』で火の玉を飛ばす魔法なんだと思うよ。それで、斗真君は?」

ほー、火魔法かぁ~。イイなぁ~うらやましいな~。土はやっぱ火に比べると地味な気がするしなぁ~。それに不思議金属とかある世界なら、岩とか石とかぶつけても、さほど強そうな気がしないんだよな。弱そうな『ファイヤ』も種火に使えるなら、たき火とか役立ちそうだ。
そんなことを考えつつ、斗真の反応を待つ。

「俺は、『風魔法Lv1』と『闇魔法Lv1』だね。」

「『闇魔法』!?それは、またレアらしいよな。んで、どんな魔法が使えるの?」

思わず遮ってしゃべったけど、鈴花の『光魔法』と同じくらい珍しいらしいしね。

「それが、『ダーク』と『ダークボール』って魔法らしいけど、…『ライト』って鈴花ちゃんが使えるらしいから、『ダーク』は、周りを暗くするとかかな?『ダークボール』は、名前からして闇の玉だよね?ダメージあるのかな?どんな効果なんだか想像つきにくいな。」

「うーん。なんか闇の玉に触れると、触れた部分が異次元空間に削り取られるとか、当たったら状態異常の暗闇にするとかかな?ダークサイドに落ちるとか?ダメージが与えられるかどうかは、使ってみないとちょっとわからないね。」

「そうだよな。まぁ、腐るとかそんなイメージもないわけじゃないし、光の対になるなら、MPの回復とかMPの攻撃とかも考えられるけど、とりあえず害獣とか出ない限り使うのもアブナイ気がするね。」

斗真の言うように、MPに作用するって言う考えもあるんだな。でも、腐るっていうのは、確かに試しに俺にかけてくれとは言い難い。ゾンビにでもなったらシャレにならん。

「んじゃ、ちょっと山側に歩いていって人のいないところで試し打ちしてみないか?」

「賛成!!」

「うん、やってみようか」

「ちゃんと人のいないところでやろうね。」

香里奈と斗真は乗り気だけど、鈴花は周りを気にするようだ。まぁ、人に当たって怪我したら大変だしな。そんな感じで、鈴花の家から山側に数百メートルほど歩いたところで、道から少し脇にそれて、人のいない林の中の少し開けた草原で試し打ちやることに!!!
しおりを挟む

処理中です...