王子に転生したので悪役令嬢と正統派ヒロインと共に無双する

こたつぬこ

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「日陰族だっ! 街の中に日陰族がいるぞ!」

 慌てた様子の男の声が耳に届く。俺がアリゼッタとエリーゼと顔を見合わせた瞬間だった。
 ドアが激しく開け放たれ、一人の男が入ってきた。
 放たれた声は叫び声とは違う声である。

「アミーニャ! 頼む、戦闘部隊は別の日陰族との戦いに出張ってしまってるんだ。今この辺りで戦えるのはアミーニャしかいない!」

 男は体つきも逞しくアミーニャよりもどう見ても年上。
 それがアミーニャに助けを求めるという行為が、俺にとっては不可解に思えた。
 けれど、アミーニャはコクリと頷くと部屋の奥から大ぶりの剣を持ってやってくる。
 俺が腰に備えているものよりも大分でかい。
 エメラルドとサファイア……ではないと思うがそんな色の石で装飾された美しい剣。
 周りの自然的な光景や、先ほどの男たちが持っていた武器とは明らかに差異があり違和感を感じる。

「アミーニャが戦うのか?」

「うん。お父さんとお母さんが戦士で、私に戦いを仕込んでくれたの。日陰族と戦って……殺されちゃったけど……」

「そうか。憎き敵ってことなんだな。行こう! 相手は待ってくれない!」

 今は悲しみに心を沈めている場合ではない。
 日陰族がどういった存在かも不明、今の状況もよく分からない。
 しかしモタモタしていたら第二、第三のアミーニャを作り出してしまうのは必至。

「うん……ってお兄さんたちもくるんですか? 危険ですよー」

「いや、だい……」

「エトワイアは強いって言ったじゃないですの」

「行きましょう。とりあえず様子を見させていただきますから、心配しなくてもいいですよ」

 俺が言いかけたのを遮って二人が誇らしげに胸を張った。
 嬉しいのだが完全に二人にの勢いに押されている自分が少し悲しいぞ。

 こうして俺たちはアミーニャの家から飛び出した。
 樹上の板間から地上を確認する。
 戦えるのはアミーニャだけと言っていたが、ちゃんと武装した人間が対峙している様子だ。

 しかし。

 俺は日陰族というものに少し予想外のものを感じていた。
 てっきり人間大の相手だと思っていたのだ。
 地に濃い色の影を持った体長三メートル程もある大柄の二足歩行の怪物。
 漆黒の体を持ったまるで闇がモンスターになったかのような。

 その身体は自在に形状を変えるのかは分からないが、右手は剣、左手は長い爪のような形になっている。

「確かにこれは意思疎通なんてできそうにないな……」

「あれは戦闘形態ですけどね。降ります」

 アミーニャはそう言うと、梯子を使わずに板間から飛び降りた。
 高さ20メートル程もある板間からだ。

「えっ!?」

「ここから飛び降りてしまいましたわ」

 エリーゼとアリゼッタが驚いた様子で地上を見下ろした。
 アミーニャは大ぶりの剣を鞘ごと、ぶぉんと振り強風を起こしてブレーキをかけ着地した。
 それでもすさまじい音と砂塵が舞う。小さなクレーターができる。
 おそらく普段はこんな降り方はしないのだろうと思う。
 他にクレーターができてたりはしなかったからな。

 アミーニャは狐耳を小さく揺らし俺の事を見上げると、微笑んでから日陰族の方へと駆けて行った。

「やるなぁ、アミーニャ。じゃ俺たちも負けてらんないな?」

「え、ええ! 言うと思っていましたが、正気ですの?」

「い、いけるとは思うんですが……怖いのは怖いんです」

「はっはっは。ほれ」

 俺は二人を両腕に抱えると板間から飛び降りた。
 俺の腕からしたら二人の身体は重いと認識する程の重量もない。
 筋肉質なんで普通の女性より体重はあると思うがな。

「心の準備もしてないですわー!」

「だ、大丈夫ですよ。エトワイアがそのまま着地するはずが……」

 ワイバーン戦のことを教訓として一人練習したのだ。
 この程度の高さ階段を降りる程度の容易さ。硬化魔法を使う必要すらない。
 ふらりと地上に降りたった俺は二人の体を地に下ろす。
 攻め立てられるような眼を向けられたが、今は日陰族の元へと急ぐべきだと話を逸らした。
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