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5.学校(1)
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教室でランドセルを開くと、薄茶の毛皮が潰れていた。
「うきゅぅ……」
「えぇ⁉? ハムアキラ⁉」
ハムアキラをつぶしている教科書を急いで取り出して、小声で話しかける。
「どうしているの?」
「いけなかったかの……? その、友達だから、ついて行った方が良いのかと思っていたのじゃ」
しょげた様子のハムアキラに、私は小さく頷いた。
「学校には、えっと、ハムアキラの体みたいなぬいぐるみは持ってきちゃいけないんだ。ごめん。言ってなかったね」
「そうだったのか。すまぬ」
そういえば、ハムアキラは『友達』って何か知らなかったんだった。昨日、説明しておけばよかったな。
「謝らなくていいよ。あ、でも、帰るまで静かにしておいてね」
「うむ。あ、そうじゃ。心晴、学校は午前中で終わるのかの?」
「今日は六限あるから帰るのは夕方だよ」
「なら、昼頃の外出は避けるのじゃ」
「なんで?」
「昼過ぎに雨が降るはずじゃ」
それって、ハムアキラが陰陽師だからわかるのかな?
詳しく聞こうとしたところで、予鈴が鳴った。
慌ててランドセルの蓋を締め、後ろの棚に持っていく。
「うわぁ、揺れるのじゃ」
「あっごめん」
小さな悲鳴に謝りながら、そっと置いて席まで戻った。
ランドセルの中のハムアキラが気になるものの、休み時間の度にランドセルを見に行くのも目立ってしまう。
そわそわしながら一二限目の国語と算数の授業を受けて、中休みの時間にランドセルの中を見に行こうと席を立ったところで名前を呼ばれた。
「藤崎さん、今日は落ち着かないみたいだけど、どうしたの? 忘れ物でもした?」
「田辺さん」
心配げな表情で声をかけてくれたのは、学級委員の田辺瑠奈さんだった。まだ同じクラスになって一週間位だけど、時々声を掛けてくれる。
「ううん。次、図工だったなって思って」
「絵の具セットは持ってきた?」
「うん」
ランドセルの横にしまってある絵の具セットを指差すと、田辺さんはほっとしたように微笑んだ。心配してくれていたみたい。でも、ならなんでだろうと疑問を浮かべる田辺さんに、本当のことを言うわけにはいかない。お願いしたら先生には黙っていてくれるかもしれないけど、それはそれで田辺さんに心配をかけてしまう。
私は嘘ではないけれど、気になっていたことを代わりに言った。
「私の絵の具セット、みんなのよりちょっとだけサイズが小さいみたいだから、大丈夫かなって気になってたの」
今日、校門をくぐってから、そのことに気が付いた。気にし過ぎなんだろうけど、皆と持ち物がちょっとだけ違うと自分が馴染めていないように感じてしまう。
「絵が描ければ、大丈夫だって」
田辺さんは私を安心させるように言う。
「そっか、そうだよね」
「うん」
頷いたところで、田辺さんをクラスの村上理恵さんが呼ぶ。
「瑠奈ー! そっち終わったなら、ちょっと聞いてよー!」
「わかったー!」
田辺さんは返事をすると、私に向き直った。
「じゃ、何かあったら言ってね」
「うん、ありがとう」
田辺さんは村上さんの方に話を聞きに行く。教室の後ろで田辺さんと数人の女子が話をしていて、ハムアキラの様子は見に行けそうにない。仕方なく、図書室で借りている本を開いて、中休みの時間が終わるのを待った。
「うきゅぅ……」
「えぇ⁉? ハムアキラ⁉」
ハムアキラをつぶしている教科書を急いで取り出して、小声で話しかける。
「どうしているの?」
「いけなかったかの……? その、友達だから、ついて行った方が良いのかと思っていたのじゃ」
しょげた様子のハムアキラに、私は小さく頷いた。
「学校には、えっと、ハムアキラの体みたいなぬいぐるみは持ってきちゃいけないんだ。ごめん。言ってなかったね」
「そうだったのか。すまぬ」
そういえば、ハムアキラは『友達』って何か知らなかったんだった。昨日、説明しておけばよかったな。
「謝らなくていいよ。あ、でも、帰るまで静かにしておいてね」
「うむ。あ、そうじゃ。心晴、学校は午前中で終わるのかの?」
「今日は六限あるから帰るのは夕方だよ」
「なら、昼頃の外出は避けるのじゃ」
「なんで?」
「昼過ぎに雨が降るはずじゃ」
それって、ハムアキラが陰陽師だからわかるのかな?
詳しく聞こうとしたところで、予鈴が鳴った。
慌ててランドセルの蓋を締め、後ろの棚に持っていく。
「うわぁ、揺れるのじゃ」
「あっごめん」
小さな悲鳴に謝りながら、そっと置いて席まで戻った。
ランドセルの中のハムアキラが気になるものの、休み時間の度にランドセルを見に行くのも目立ってしまう。
そわそわしながら一二限目の国語と算数の授業を受けて、中休みの時間にランドセルの中を見に行こうと席を立ったところで名前を呼ばれた。
「藤崎さん、今日は落ち着かないみたいだけど、どうしたの? 忘れ物でもした?」
「田辺さん」
心配げな表情で声をかけてくれたのは、学級委員の田辺瑠奈さんだった。まだ同じクラスになって一週間位だけど、時々声を掛けてくれる。
「ううん。次、図工だったなって思って」
「絵の具セットは持ってきた?」
「うん」
ランドセルの横にしまってある絵の具セットを指差すと、田辺さんはほっとしたように微笑んだ。心配してくれていたみたい。でも、ならなんでだろうと疑問を浮かべる田辺さんに、本当のことを言うわけにはいかない。お願いしたら先生には黙っていてくれるかもしれないけど、それはそれで田辺さんに心配をかけてしまう。
私は嘘ではないけれど、気になっていたことを代わりに言った。
「私の絵の具セット、みんなのよりちょっとだけサイズが小さいみたいだから、大丈夫かなって気になってたの」
今日、校門をくぐってから、そのことに気が付いた。気にし過ぎなんだろうけど、皆と持ち物がちょっとだけ違うと自分が馴染めていないように感じてしまう。
「絵が描ければ、大丈夫だって」
田辺さんは私を安心させるように言う。
「そっか、そうだよね」
「うん」
頷いたところで、田辺さんをクラスの村上理恵さんが呼ぶ。
「瑠奈ー! そっち終わったなら、ちょっと聞いてよー!」
「わかったー!」
田辺さんは返事をすると、私に向き直った。
「じゃ、何かあったら言ってね」
「うん、ありがとう」
田辺さんは村上さんの方に話を聞きに行く。教室の後ろで田辺さんと数人の女子が話をしていて、ハムアキラの様子は見に行けそうにない。仕方なく、図書室で借りている本を開いて、中休みの時間が終わるのを待った。
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