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29.林間学校(1) 出発前
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ゴールデンウィークは、あっという間に終わってしまった。
「また明日から、学校じゃの」
ハムアキラに頷く。
「私がいないと寂しい?」
「心晴が本を色々借りて来てくれるし、この休みの間にタブレットの使い方も覚えたから大丈夫なのじゃ」
今年の連休は引っ越してきたばかりっていうのもあって、どこにも出かけなかった。その分、引っ越しの片づけをしたりしてたから、ハムアキラとも沢山話をできたし、家のタブレットを借りてハムアキラに操作を教えることができた。
「そうだ。連休が終わったら、林間学校があるんだって」
「ほう、それはなんじゃ?」
「学校の行事で、泊りがけで勉強に行くんだよ」
「泊りがけとな?」
「うん、学校の中だけじゃ学べないことをするんだって」
「面白そうじゃな」
ハムアキラはきらんと目を輝かせる。私は、先月にハムアキラが無断で学校に付いてきたことを思い出して慌てて言う。
「たぶん、人形は持って行っちゃだめだから、ハムアキラはお留守番だよ」
「えー、わしは行ってはだめなのか?」
「見つかったら、怒られちゃうじゃん」
「つまらぬのじゃー」
「お土産売ってたら買ってくるから」
「それは楽しみだけど、留守番は寂しいのじゃ」
ふてくされるハムアキラをなんとかなだめて、私は眠りについた。
そして、あっという間に林間学校の出発の日がやってきた。
林間学校のことを話したときは、自分も行きたいと渋っていたけど、諦めてくれたかな。しおりを見ながら荷物をもう一度確認し、ハムアキラにいってきますを言おうと部屋の中を見回す。
「あれ?」
二度寝してるのかなと思って枕もとのハムアキラのベッドを見ても、姿がない。探していると、リビングからお母さんの声がする。
「心晴ちゃん、時間大丈夫?」
「もう出るよー」
「急がないと、もうすぐ八時よ」
「えっやばっ」
お母さんに返事をしてから、急いでカバンを閉めて玄関に向かう。いつもより早く起きたはずなのに、何故か家を出るのが遅くなってしまった。
「気を付けていってらっしゃいね」
「うん、ちゃんと先生の言うこと聞くから大丈夫だよ! いってきます!」
そうして、マンションを出ると走って学校に向かう。ハムアキラの姿が見えなかったのが気になるけど、まさかね。
きっとどこかの隙間に入り込んで二度寝しちゃったんだと思おう。じゃないと、林間学校の間中気になりそうだし。
学校に行くと、駐車場には大型バスが停まっていた。
その前でクラスごとに点呼を取っていて、出席番号順に並んでいるようだ。
「あ、心晴ちゃん! おはよう!」
「おはよう、理恵ちゃん」
理恵ちゃんとは出席番号も近くて並んでいる場所も近い。時間になるまで少しだけおしゃべりが出来そうだ。
周りを見ると、皆もおしゃべりをしている。
「楽しみだね」
理恵ちゃんに言われて頷いた。
「でも、野外活動は自信ないよ。変なカレーになっても許してね」
「私も。キャンプとか行ったことないし、今回が初めてだよ」
理恵ちゃんもやったことないんだ。そう聞くと安心する。
「そういえば、聞いた?」
「なにを?」
「私も四組の香奈ちゃんに聞いたんだけど、今日行くとこ、幽霊が出るんだって」
「えっ」
驚いて理恵ちゃんを見ると、理恵ちゃんは声を落とした。
「去年の夜、香奈ちゃんのお姉ちゃんが見たんだって。白い服を着た女の子から『友達になろう』って言われたって」
「こわ……」
寒気がして思わず腕をさすると、理恵ちゃんが脅かしすぎたと思ったのか、慌てて言う。
「あ、でもさ、先生達は気のせいって言ってたらしいよ」
「理恵ちゃんは怖くないの?」
「私もちょっと怖いからさ、お風呂とかトイレとか一緒に行こ」
「うん、いいよ」
理恵ちゃんは生活班も活動班も一緒だ。これを誘うために、幽霊の話をしたのかな。
話しているうちに予鈴が鳴り、出発式が始まった。
「また明日から、学校じゃの」
ハムアキラに頷く。
「私がいないと寂しい?」
「心晴が本を色々借りて来てくれるし、この休みの間にタブレットの使い方も覚えたから大丈夫なのじゃ」
今年の連休は引っ越してきたばかりっていうのもあって、どこにも出かけなかった。その分、引っ越しの片づけをしたりしてたから、ハムアキラとも沢山話をできたし、家のタブレットを借りてハムアキラに操作を教えることができた。
「そうだ。連休が終わったら、林間学校があるんだって」
「ほう、それはなんじゃ?」
「学校の行事で、泊りがけで勉強に行くんだよ」
「泊りがけとな?」
「うん、学校の中だけじゃ学べないことをするんだって」
「面白そうじゃな」
ハムアキラはきらんと目を輝かせる。私は、先月にハムアキラが無断で学校に付いてきたことを思い出して慌てて言う。
「たぶん、人形は持って行っちゃだめだから、ハムアキラはお留守番だよ」
「えー、わしは行ってはだめなのか?」
「見つかったら、怒られちゃうじゃん」
「つまらぬのじゃー」
「お土産売ってたら買ってくるから」
「それは楽しみだけど、留守番は寂しいのじゃ」
ふてくされるハムアキラをなんとかなだめて、私は眠りについた。
そして、あっという間に林間学校の出発の日がやってきた。
林間学校のことを話したときは、自分も行きたいと渋っていたけど、諦めてくれたかな。しおりを見ながら荷物をもう一度確認し、ハムアキラにいってきますを言おうと部屋の中を見回す。
「あれ?」
二度寝してるのかなと思って枕もとのハムアキラのベッドを見ても、姿がない。探していると、リビングからお母さんの声がする。
「心晴ちゃん、時間大丈夫?」
「もう出るよー」
「急がないと、もうすぐ八時よ」
「えっやばっ」
お母さんに返事をしてから、急いでカバンを閉めて玄関に向かう。いつもより早く起きたはずなのに、何故か家を出るのが遅くなってしまった。
「気を付けていってらっしゃいね」
「うん、ちゃんと先生の言うこと聞くから大丈夫だよ! いってきます!」
そうして、マンションを出ると走って学校に向かう。ハムアキラの姿が見えなかったのが気になるけど、まさかね。
きっとどこかの隙間に入り込んで二度寝しちゃったんだと思おう。じゃないと、林間学校の間中気になりそうだし。
学校に行くと、駐車場には大型バスが停まっていた。
その前でクラスごとに点呼を取っていて、出席番号順に並んでいるようだ。
「あ、心晴ちゃん! おはよう!」
「おはよう、理恵ちゃん」
理恵ちゃんとは出席番号も近くて並んでいる場所も近い。時間になるまで少しだけおしゃべりが出来そうだ。
周りを見ると、皆もおしゃべりをしている。
「楽しみだね」
理恵ちゃんに言われて頷いた。
「でも、野外活動は自信ないよ。変なカレーになっても許してね」
「私も。キャンプとか行ったことないし、今回が初めてだよ」
理恵ちゃんもやったことないんだ。そう聞くと安心する。
「そういえば、聞いた?」
「なにを?」
「私も四組の香奈ちゃんに聞いたんだけど、今日行くとこ、幽霊が出るんだって」
「えっ」
驚いて理恵ちゃんを見ると、理恵ちゃんは声を落とした。
「去年の夜、香奈ちゃんのお姉ちゃんが見たんだって。白い服を着た女の子から『友達になろう』って言われたって」
「こわ……」
寒気がして思わず腕をさすると、理恵ちゃんが脅かしすぎたと思ったのか、慌てて言う。
「あ、でもさ、先生達は気のせいって言ってたらしいよ」
「理恵ちゃんは怖くないの?」
「私もちょっと怖いからさ、お風呂とかトイレとか一緒に行こ」
「うん、いいよ」
理恵ちゃんは生活班も活動班も一緒だ。これを誘うために、幽霊の話をしたのかな。
話しているうちに予鈴が鳴り、出発式が始まった。
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