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第3章
やっぱり、一人で飲むのは寂しいな。
酔った勢いで、大和に電話してみよう。
「············」
何度かかけてみたけれど、繋がらなかった。忙しいのかな?
あと少しで帰ってくるんだし、私も仕事を頑張ろう。また明日、連絡してみよう。
次の日も電話してみるけれど、やっぱり出ない。
どうしたんだろう?
メールもないし、何かあったのかな……。
気になって、翌日、鈴に相談することにした。
鈴は可愛らしくて、恋愛経験も豊富。それだけじゃなく、修羅場も何度かくぐり抜けてきたらしい。
見た目からは想像できないくらい、パワフルな女性だ。
「鈴、昨日から大和に電話してるんだけど、全然出ないの。やっぱり海外に行くと忙しいのかな?」
「何時くらいにかけてるの?」
「朝だったり、夜だったり……。」
「単純に忙しいんじゃない? 朝は寝てるかもしれないし、時差ボケもあるだろうし。」
「そうだよね……。何かあったら、向こうから連絡してくるよね。」
「香、大和さんのことばかり考えてないで、たまには一人でパーッと遊んできたら?」
「でも、一人だと寂しいし……遊ぶなら、大和と一緒がいい。」
「……あんまりのめり込みすぎないようにね? 結婚しても、自分の時間は大事にしなきゃ。」
「……うん、ありがとう、鈴。」
鈴は雑貨のバイヤーも任されていて、私はたまに仕事で同行することがある。
基本的には事務作業がメインだけど、それも好きで、楽しく働かせてもらっている。
頼れる同僚であり、恋愛のアドバイザーでもある鈴。
直感が鋭くて、仕事もできて、何より信頼できる。
とりあえず、大和の帰りを家で待つことにしよう。
あと5日もすれば、帰ってくるんだから。
昼休み、同期の黒木 律にランチに誘われた。
久しぶりに外で食事をするのもいいかもしれない。
「どこに行く?」
「ゆっくり話せるところがいいな」
「ならイタリアンでも行くか」
「そうしよう。あそこなら混んでないしね」
隠れ家的なイタリアンレストラン。ここには鈴ともよく来る。
店に入ると、周囲の女性たちがチラチラと律を見ているのがわかった。
律は大和とは違う、堀の深い外国人のようなイケメンだ。
律と歩いていると女性の視線が気になって、会話の内容が頭に入ってこない。
彼の女性関係についてはほとんど聞いたことがないけれど、絶対にモテるはずだ。
(セフレくらいいそうだな……)
今日のスーツも高そうなネイビーのスリーピース。
まるで雑誌のモデルのように決まっていて、同僚とはいえ見惚れてしまう瞬間がある。
きっと同僚じゃなければ、私なんか相手にされないんだろうな……。
「香、ここでいい?」
「うん、いいよ」
店員に案内され、席に座る。
「それで、話したいことって何だよ」
「メニュー決めてから話すよ」
「俺はスペルトのマルゲリータ」
「私は豆乳を使ったカルボナーラ」
注文を終え、律が改めてこちらを見る。
「それで、なんだよ」
「うん……旦那のことなんだけどね」
「最近、連絡が取れなくて。電話しても出ないし、メールも返ってこないの」
「出張だろ? 忙しいんじゃないのか?」
「そうかな……? 2週間も出張だから、寂しくて」
「2週間も?」
「うん、コレクションの時期はよくあるんだけど……」
律は一瞬、何かを考えるように視線を落とした。
「……そんなに気にすることじゃないだろ」
「律は、出張中に彼女にどのくらいの頻度で連絡する?」
「彼女か? いないから分からないな」
「え? 彼女いないの?」
「そうだけど」
驚いた。絶対にモテるはずなのに。
「びっくりするよ。律、モテるでしょう?」
「香にそんなこと言われると思ってなかった」
「律はカッコいいし、モテるよ」
「嬉しいな、香に言われると」
「ふふふ、嬉しいなら何度でも言ってあげる」
律はクスッと笑っている。
「香さ、旦那に尽くしすぎるのもよくないぞ」
「男はある程度は追わせて、好きでいてもらわないと」
「追ってばかりだと、逃げられる」
「……鈴も同じことを言ってたな」
「そんな風に見えるんだね。ありがとう、気をつけるね」
ちょうど料理が運ばれてきた。
「来たよ。食べよう」
「うん、美味しそうだね」
律は顔には出さなかったが、香の旦那の怪しさに気づいていた。
香は純粋で、いい女で、美人だ。
もし旦那と別れたとしても、彼女を求める男はすぐに現れるだろう。
(言わなくても、いずれ分かることだ)
そう思いながら、律は静かに微笑んだ。
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