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10章

10-3 手術で入院

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 帰宅し、母に手術をすることになったことを話すと、母もショックを受けていた。
 親子して同じことを思っていただろう。 

 次から次に・・・ 

 もう大きなことは当分ないだろうと思っていたのに・・・ 

 脳梗塞だけでも十分すぎるくらいなのに・・・ 

 その日はまるでお通夜のようだった。 

 喋ることが浮かばないのだ。 

 その後、手術当日まで淡々と日々をやり過ごした。 

 

 12月に下腹部の激痛で病院へ行き、チョコレート嚢胞とわかって経過観察を経て、手術を受けるに至った季節はもう春だった。
 4月に腹腔鏡手術をすることになった。 

 腹腔鏡手術は開腹しないので回復も早いらしい。
 おへそに1か所、その下に1か所、その左右それぞれ1か所ずつ、合計4か所に穴を開けてのう胞を取り除くということだった。
 手術の説明の際、「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ~。医者にとって初歩的な手術なので~」と、その女医は言っていた。
 「初歩的な手術」と聞き、なんとなく少しだけほっとした。 

 手術日を含め5日ほど入院することになった。
 看護師さんから手術で必要なものの説明を受けたり、いくつかの書類にサインさせられたりした。
 サインさせられる書類の内容には、サインしたくないなぁと思う内容の記載もあったが、そんなこと言ってる場合ではなかった。 

 手術日の前日から入院することになった。
 入院の日、病室へ行き、同室の方々に「お世話になります。よろしくお願いします」と挨拶をした。
 4人部屋で、若そうな印象の女性が1人、年配の方が2人、そして私だった。同室の方々は優しい方々だった。 

 病室は高い階にあったので、窓からは満開の桜を見下ろせてなかなか良い景色だった。
 荷物を整理したりしていると看護師さんから「剃毛するので来てください」と言われ、大人しく剃毛された。
 夜になると同室の方たちと夜景を見ながら雑談したりした。 

 手術の前日であるその日は下剤ドリンクを飲まされた。
 紙パックに入ったそれが3本。ストローを差して飲む。
 胃腸をとりあえず空にして手術をするらしかった。
 当然その日の夜は何度もトイレに起きることになった。下剤なんてもう飲みたくないなぁと思った。 

 翌朝、看護師さんが来て、トイレで「大」をしろと私に言った。
 びっくりした。
 そして、流さないで看護師を呼べと言うのだ。
 更にびっくりした。
 手術当日の朝のお通じのその排泄物を看護師に目視で確認してもらわなければならないらしかった。
 めちゃくちゃ抵抗があるが仕方ない。
 言われた通りにしたが、めちゃくちゃ恥ずかしかった。 

 同室の方々も同じことをしたそうで、「嫌だよね」なんて話した。
 剃毛と言い、お通じのそれと言い、なんとも恥ずかしいことばかりだった。 

 手術着を看護師さんが持ってきてそれに着替えるように指示された。
 もちろん下着なんてつけない。裸の上にその手術着を着た。 

 準備が整うと看護師さんに促され手術室へ向かった。
 私はコンタクトはもちろん眼鏡もしていないのでぼやけた視界で看護師さんについて行った。 

 手術というのはベッドに寝る状態で行われるのかと思っていたら、内診台のような椅子に座った。
 そして麻酔をされたのだが、この時の麻酔の針がめちゃくちゃ痛かったことは強烈に覚えている。 

 
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