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四
十
しおりを挟むそれが覆されるのは、翌日だ。
普段であれば朝早くから動くはずの愛が、出てこなかった。
「愛は如如何した?」
「政宗様が無体を働きまして、身動きがとれませぬ」
さらりと喜多が言うが、それもどうなのだ。
昼過ぎに起きてきた愛は義に懇願した。「政宗に側室を」と。
「……何故」
「わたくしの身が保ちませぬ」
初の女子にどこまで盛った。その言葉を義は飲み込んだ。
「そなたの侍女あたりで数名考えておけ」
「お義母様の若い侍女にもお声を」
そちらが本題だったのだろう。いつまでも跡継ぎがいないというのを、悪しざまに言う家臣どもも抑えられる。
「わたくしも毎日このような状態で人前に出たくありません」
義と愛。二人の侍女が愛に憐みの生差しを向けてしまったのは、仕方がないことである。
そして、二人の側室が政宗にあてがわれた。不服そうな顔をしていたが、喜多と義、そして愛の三人で納得させた。
その二人こそが新造の方と飯坂の局である。
未だ騒動の収まらぬ、天正十四年の出来事だった。
翌年、太閤となった豊臣秀吉から惣無事令が発せられた。
各大名の私闘を禁じたのだ。
それを意に介する様子もなく、政宗はすべての怒りをぶつけるがごとく、戦へとのめり込んでいく。
政宗は天下統一を夢見ているわけではない。政宗が目指すものが、義には分からなくなっていた。
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新造の方、飯坂の局……二人とも政宗の側室で、新造の方が政宗の長子、秀宗を産んだと言われている。実は同一人物という説も。今回は二人は別人で、一人は義付きの侍女、もう一人は愛付きの侍女だったが、側室になったことにした。
惣無事令……時の太閤、豊臣秀吉が発令したとされるもの。「俺が天下を取った。だから、あとは戦すんじゃねぇ(意訳)」という名の命令。
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