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富士樹海迷宮編
弟子パーティ、メンバー紹介
しおりを挟む「ねぇ、ここの職員って馬鹿なの!? ってか馬鹿だよね!」
入ってきたとたんに、弟子が火をふいた。よほどイライラしたと見え、マスターは黙ってトルコチャイを差し出した。
「うんま~~。甘さが身体に染み渡る~~」
そんなことを言う弟子を横目で見つつ、パーティメンバーにも茶を出していく。
「相変わらず、濃さも温度もミルクの量も好みにあっております」
「クリフ様、ありがとうございます。長らく当店にいらしていただいている賜物です」
「それにしても呆れたわ。私たちがいくら回復魔法を使えるからといっても、ポーションの重要性は変わらないのに」
マイニが呆れながらそう呟いた。
まず、探求者だから魔法が使えるということはない。魔法を使うには、妖精や精霊などと親和性が高くなくては駄目で、大半が一体としか契約が出来ない。その時点で使える魔法というのは、一種類、多くて三種類だ。
マスターの場合は、阿形と吽形二体だが、これは二体で一つと数えられる神之使であり、ギルドにも二体で一つとして登録されている。
それだけでも珍しいが、マイニはエルフ族だ。
まずもって、エルフ族の殆どが北欧で暮らしており、出てくることはない。というよりも集落から出てくるエルフが少なく、探求者となるエルフは種族の一パーセントにも満たない。
エルフ族は物語のように耳が長いということはなく、少し耳の先が尖っているくらいだ。物語と一緒なのは、精霊などと親和性が高いというところと、寿命が人間の十倍以上というところだろう。他にもあるかもしれないが、集落から出てきたエルフたちが語ろうとしないため、分からないのが現状である。
……それはともかくとして、エルフであるマイニは例にもれず精霊たちと親和性が高い。今は「二体しか契約出来ていないの」とのたまうが、他からしてみれば羨ましい限りだろう。精霊は光と風らしく、光の回復魔法と攻撃魔法、風の攻撃魔法に、光と風の複合魔法が使えるという、いるだけで充分チートなメンバーである。
薬草にも詳しいため、売買交渉はマイニが行うのが、このパーティだ。マスターも新作を作るときには世話になっていたりする。
「仕方ないですね。ここのギルドマスターは探求者を使い捨て道具だと思っている節があるので」
「……あり得ない」
そう呟くのはクリフ。イギリス出身だというクリフとは、茶の話で盛り上がる。
クリフは妖精と親和性が高く、妖精が回復魔法を使うため、それだけで重宝されるメンバーだ。
「弟子も覚えているでしょう? 二十年ほど前の雲仙で起きた火山迷宮の話」
「……あれかぁ、あん時担当した馬鹿?」
「はっきり言えば。あの時は一職員だったようですが、バックボーンの大きさだけでのし上がって来たようです。潰しきれなかったのが悔やまれます」
「あん時から、後ろにどこぞの議員さんだとか、財界の大物がいたんだよね~~」
トルコチャイをおかわりしつつ、弟子が呟いた。
「今回もその口でしょうねぇ。今まで大きな大暴走がなかったために、左遷したつもりだったのでしょうが……それが裏目に出た」
「で、俺らが今回とばっちり食らっていると」
「手っ取り早く言えば。これでポーションの横流しがあったら、ギルド職員毎全員解雇でしょうねぇ」
がたん、その音がした瞬間、ウーゴが笑う。
「あれで気配消していたつもりってのがおかしいのよね。春麗の妖精に負けているよ」
「うふふ。私の妖精は妈から譲り受けたやつだもの。年季が違うわ」
マイニの言葉に悪戯っぽく春麗が微笑んだ。
春麗は中国出身の探求者を両親に持つ。国際ランクを取得し、様々な国で活躍していたが、父親が一時的帰国先の中国で魔物大暴走に巻き込まれ他界。その後、母親も別の依頼で他界している。まだ見ぬ両親の祖国、中国の大迷宮を見るために探求者になった強者である。
探求者登録をした当初、春麗の後見人が日本人であったことから、日本の探求者として活動を開始。中国の大迷宮に入るために国際ランクを取得している。
対する、イタリア出身のウーゴは、「面白そうだから」という理由で探求者になったという。世界の迷宮に潜るために国際ランクを取得している。「迷宮潜りは趣味だね。楽しむために命が大事だよ」と明るく言うとか。弟子に付き合って、長く日本にいるのが不思議な男でもある。
そして、クリフ。クリフはイギリスのとある貴族の家を出奔しているという。出奔にマイニが関わっているらしく、詳しいことは話さない。イギリスを出奔するためだけに国際ランクを取得したという。
こうやって見ると、弟子のパーティは個性に富みすぎている。
余談だが、国際ランクを取得していないのは弟子だけだ。
国際ランク取得のためには、様々な条件が国際規格として設けられており、一つは当然のごとく探求者としての力量。――これだけなら弟子はあっさりとクリアできるはずである。
他には、他国でもやっていける知識。そして何よりも母国語以外、最低二種の言語だ。
知識もはギリギリ何とかなるだろうが、問題は言語だったりする。どうも、そちらだけは覚えられないようで、日本語以外無理らしい。弟子も国際ランク取得を一時期目指していたので、趣味のために国際ランクを取得したマスターが何度か国外へ一緒に連れて行っているにも関わらず、だ。その時点で弟子も国際ランク取得を諦めたらしい。
弟子のパーティメンバーで一番ランクが高いのは、最年長のマイニである。外見が二十代だが、五十を超えたマスターよりも年上だ。女性に年齢を聞いてはいけないため、詳しい年齢は知らないが、妻よりも年上だろう。
いつの間にやら和気藹々とお茶を楽しむ弟子たちに、マスターは微笑ましくなった。
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後日詳しく書きますが、パーティメンバーの好きなお茶
裕里(弟子)……トルコチャイ
春麗………………中国緑茶(銘柄は後日)
クリフ……………アフタヌーンティにあう紅茶(銘柄は後日)
ウーゴ……………コーヒー(一応お茶も好きですが、好んで飲むのはコーヒー)
マイニ……………マスターオリジナルブレンドティ
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