80 / 147
悪意のレイド
現実世界にて<良平とその愉快な家族>
しおりを挟むふらふらになりながら、良平は帰宅する。うん、今日は義両親も来ているはずだ。あの人たちは分からないことがあると良平や、その元教え子たちに聞いてくる。
「……ただいま」
「良平さん、お帰りなさい!!」
元気よく出迎えた妻を良平は思わず抱きしめた。
「よよよよ良平さん? うちの親も、お義父さん、お義母さんもいらしてますから……」
「それだけじゃないでしょ?」
「晴香さんも来てます」
「他は?」
「? いませんけど」
「もしかしたら、保と正芳も来るかも」
「……何かありました?」
「かなり面倒なことが」
君をお嫁にもらう時以上に大変かもしれない。その言葉を良平は飲み込んだ。
「先にいただいてるよ」
居間に行くと、義父が声をかけてきた。良平は妻の悠里を手伝って、そのあと座った。
「で、良平。晴香に何を頼んだ?」
真っ先に父が訊ねてきた。
これまでのことも含め、ここにいる人たちに古瀬 美玖のことを話していく。
「昔の我々を見ているようだね」
現在は某会社の役員をやっている義父が、しんみりと呟いた。
「お義父さんと比べられませんよ。筋道すら通ってない」
義父は筋道が通り過ぎていた。それを無理矢理破壊したのが良平だ。ある意味排除されて当然のことをやったのだ。
その後、筋道を通せば、ある程度納得してくれ、そしてゲームのよさを伝えた後にVRをやっている。……目指せマープルさんと言っているのが、少しばかり怖いところだが。
「というと?」
「晴香にも頼んで調べてもらったんです。……その両親のことを」
「だから、そういうのは止めなさいと何度も……」
「お父さん、大事の前の小事」
ぴしゃりと晴香がたしなめていた。
「ゲーム上で彼女の従兄と会ったんですが……そこで矛盾点に気付きました」
美玖にゲームなどを禁止しておきながら、従兄にはゲームを推奨するようなことを言っている。美玖が昔にゲームをやりすぎたのだとしたら、少しばかり話は分かると思ったのだ。
だが、軽く調べただけでそれが違うと分かっていく。幼い頃よりTVもゲームも禁止され続けた美玖。その一方で親たちは好き勝手にゲームを買い漁っていた。
そして、ろくに教えもせずに美玖を放っておく。何も出来ない美玖を「何も出来ない、不器用者」とあざ笑っていく。保育園の保育士たちですら、外面のよさに全く気付かないほどなのだ。
気付かれたあと、美玖たちはその土地を去っている。
現在の場所に移り、家を構えているがおそらくはそのうちいなくなるかもしれない。
引っ越してきたという祖母のことについては、晴香は全く調べていなかった。そこまで時間がなかったのだ。そのうちでいい、良平もそう思った。
「酷い、ですね」
「かなりね。学年主任という立場で、担任が投げ出したから俺が関われるけど、ちょっとこれはって思ってる」
「……ふむ。私たちは良平君のおかげで『井の中の蛙』だと知ったようなものだが。VRが医療に使われているのは知っていたが、そこから派生したゲームなどふざけていると思っていた。それを根本から覆してくれたからね」
「悠里と会うまで、趣味に生きていたようなもんですから」
そのせいか、両親も悠里を気に入っており、実家に行くたびアウェイにいる感じになってしまう。
「私も役員という立場で情報を収集してみよう」
あっさりと義父が言う。大変ありがたいが、あなたのもつ影響力とか考えていただけませんかね、と本気で言いたくなる。ちなみに、義父が役員を勤める会社には高校・大学時代からの同級生はもとより、先輩・後輩までもがいたりする。特に多いのが研究畑だ。
「私もっ。その人に会ってみたい! どんな方なの?」
未だに箱入り娘な妻がはしゃいで言う。……うん。義両親も「TabTapS!」参加確定だ。
「多分、盆は全くログインできないと言っていたから、その間にゲームに慣れるといいよ。『TabTapS!』確か、登録だけはしていたはずだよ」
「あ、あの難しいやつですね。初心者の方がよく出来ますね」
「それは俺も思った。……最初の頃の悠里を思い出したけど」
「え?」
「ゲームに囚われないで色んなことをやってる。保がもうハラハラして見守ってるよ」
「すっごく可愛い子なのっ! 素直でいい子。 お義姉さんも気に入ると思うよ」
晴香が少しばかり美玖の情報を伝える。
「晴香さん。本当!? 私楽しみになっちゃった!」
「私たちも参戦しようかね」
義父の言葉に一瞬「やっぱり」と思ったが、「私たち」という言葉に引っかかりを覚えた。
「親父たちも参加するんでしょ?」
「当然だ」
うわ、やっぱりか!! 良平は頭を抱えた。
翌日。ディッチがギルマスをつとめるギルドのメンバーが五人一気に増えることになる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………
naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話………
でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ?
まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら?
少女はパタンッと本を閉じる。
そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて──
アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな!
くははははっ!!!
静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。
治癒魔法で恋人の傷を治したら、「化け物」と呼ばれ故郷から追放されてしまいました
山科ひさき
恋愛
ある日治癒魔法が使えるようになったジョアンは、化け物呼ばわりされて石を投げられ、町から追い出されてしまう。彼女はただ、いまにも息絶えそうな恋人を助けたかっただけなのに。
生きる希望を失った彼女は、恋人との思い出の場所で人生の終わりを迎えようと決める。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる