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調合師教育計画
その頃の公爵夫妻(というか公爵夫人)
しおりを挟むその間、公爵夫妻は何をしていたかというと。
公爵夫人が領都に飛び、過去の文献を漁っていた。それを見た先代公爵が一体何事かと慌てふためいた。
「レイスの一件ですわ」
レイス滅却のために必要だと、夫人はあっさり言い放った。
「お前は神殿に真っ向から喧嘩を売る気か!?」
「一月以上交渉しても、一向に来ないではありませんか。領民をレイスの恐怖から守るつもりはないと、お父様はお仰せで?」
「だから、こちらに連れてこいと」
「それが出来れば苦労いたしませんわ!!」
実の娘であるが、時折怖いと先代公爵は思う。
「どうも、見たことのない聖獣が関わっているようですし。……お父様はバサロヴァ海国の聖獣をご存じで?」
それを聞いた、先代公爵は記憶を手繰り寄せる。外務関連とは無縁の役職にいたが、先代とて各国の聖獣は「常識」として知っている。
「はて……伝えられていないということは、ペトレンコ公国と同じ、ラグ・バハートではないのか?」
「ヴァルの話だと、ラグ・バハートとは違う姿かたちの聖獣だったようですわ」
「……は?」
「あの地がレイスまみれになったのは、故バサロヴァ海国の聖獣を守ろうとしてだと、言われたそうですので」
「儂も行く!」
「お父様……」
「儂も行くぞい! これ以上の重大案件なぞないわい! それに儂は引退した身じゃ」
さっさと連れていけ、そう宣言した先代公爵に、夫人は頭を抱えた。
「大旦那様、準備が整いました」
早すぎる。先代が「行く」と言っただけなのに、渡航の準備が整うとはこれ如何に。……あ、パルパニエミ侯爵用に教育していた執事だわ。なら仕方ないわね。などと思い直し、調べものもそこそこに、集落へ戻る羽目になった。
その顛末を聞いた公爵はというと。
「お義父上は稀代の聖獣好きでしたねぇ」
とどうでもいい感想を抱いたとか。
それ以上に、戻ってきたマイヤと大変に気が合い、ヴァルッテリが先代公爵に嫉妬するなど、誰も思いもしなかった。
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久しぶりに(名前が)出て来たので補足
現パルパニエミ侯爵
オヤヤルヴィ公爵夫人の実弟で、現在は勘当された人物。一応宰相という地位についているが、実力は謎。
オヤヤルヴィ公爵夫妻が王太子夫妻だったころに、当時婚約していた令嬢と、当時の第二王子の婚約者を断罪するという暴挙に出た。先代公爵夫妻に甘やかされて育ったわけでもなく、一般的な育て方をしたのにどうしてこうなった、と周囲が驚くほどの愚か者。元々の素養がそうさせたのか何なのか。
最近では、マイヤに拷問するよう指示した人物で、治癒魔法が効かなかったため慌てふためいた愚か者。
政治を行う手腕は悪くないが、自分にいい話以外を聞こうとしない人。
先代オヤヤルヴィ公爵
ヴァルッテリの祖父。優しく厳格なお人。勘当するまではバカ息子を怒ったりもしていたが、最近は諦めがち。どうして勝手に婚約者を断罪したのかと問うと「子爵令嬢が言ったから」という頓珍漢な答えをしてきたため、勘当し領地内の採掘場にでも送ろうとしていた。それを何故か、前パルパニエミ侯爵が「あなたの優秀な息子を引き取りたい」と言ってきたが断った。
現国王になり、勅命でバカ息子がパルパニエミ侯爵家に養子となったのを機に、嫌気がさして引退。現在は趣味で聖獣のことを調べている。
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