のんきな男爵令嬢

神無ノア

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調合師教育計画

規格外は一人じゃない

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attention!!
ちょっとばかり衛生的にどうよ? という話がでてきます。
お気を付けください

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 実のところ、マイヤの規格外さに目がいってばかりいるが、ヴァルッテリも規格外だったりする。
 それを目の当たりにするのは、嵐が来たあとだ。

 井戸水全てが泥水と化したのだ。
「ろ過して浄化すれば飲めるね」
 戻ってきてばかりのヴァルッテリがあっさりと言い放った。この集落にいる面子は、時として泥水を飲んでいた者たちだが、あっさりとヴァルッテリが言うと思わなかったらしい。
「うん? 冒険者として色んな地を回ったからね」
「……」
「……いや、貴族様はよぉ」
「うん。泥水を嫌がる馬鹿もいたけど、浄化してしまえば一緒でしょ」
 そのために浄化魔法を覚えたという才能の無駄遣いに、全員が言葉を失った。

 余談だが、この集落にまだ導入できていないだけで、アベスカ男爵領には水の浄化装置があったりする。それを毎日検査して、飲料水や薬の生成に活用しているのだ。
 もちろん下水は別処理をして下流に流している。
「……浄化装置の導入を急がなくては」
 薬を作るための水はきれいなほうがいい。井戸水が綺麗すぎたために導入を先延ばしにしてきたツケが回ってしまった。
「マイヤ」
「ヴァルッテリ様、如何なさいました?」
「次移転魔法使う時は、マイヤも一緒じゃないと嫌だからね」
「では、『善は急げ』ということで明日にでも行きましょうか」
 ヴァルッテリの言葉に、マイヤが切り返した。自分から使われるのを良しとするなら、使ってやるまでだ。それを腹のうちに飲み込んで、マイヤはにこりと笑って切り返した。

 もちろん、集落の住民からヴァルッテリが同情されたなどと気づかないマイヤに、とうとうベレッカがため息をついていたのはご愛嬌というものだろう。

「というか、お貴族様もすげぇのな」
 夜は酒場として営業している食堂で、男どもが集まって飲んでいた。
「その魔法を教えたのはアハトですが」
「こっちとしちゃありがたい限りだけどよ。お嬢の方が慌てていたのには驚いたな」
 明日は従者としての仕事も休みなウルヤナは、毎度のごとく顔を出していた。
「そのあたりは、一度アベスカ男爵領に行けば分かりますよ。毎日ありとあらゆる井戸の水情報が掲示板に書かれていて、それを参考にして浄化装置の改修が入るという徹底ぶりでしたから」
「……帝都よりもすげぇのな」
 異世界の知識を基にしたその装置、その場にいた全員の度肝を抜いた。それ以上にそこまでこだわるということに驚いているのだが。
「『水はすべての基本』だそうで、絶対に気を抜いちゃいけないんだそうですよ。あちらでの受け売りです」
「そういや、最近腹下すことが少なくなったな」
「飯も旨くなった」
 聞いた水の話をここですれば、全員が口々に言いだした。驚かないのは調合師として訓練を受けている者たちくらいだ。
「何にせよ、お嬢とお貴族様には感謝だな」
 今日の飲料水確保は、ヴァルッテリがいなければ無理だったのだから。

 少しずつヴァルッテリあるじの株があがっていくのが嬉しい、ウルヤナだった。
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