無い物強請り

ハタムギバタケ

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無い物強請り

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綺麗な音。透き通った空気。悠久の時を流れているかのような雲。

とても綺麗なものに五感が触れた時、ふと、涙が溢れる時がある。

その理由は分からなくて、でも、分かりたいと言う気持ちはなぜか起きない。

きっと自分には無い、自分が絶対にそう成れない物だと無意識下では分かっているからだろう。

今の僕の心は、嘘を燻した煤に塗れた黒い穴だから。深く、暗く、如何なる物にも染まる事ない、黒。

16回の刻が陽を斜け、一筋の灯を落とした。

「綺麗だ。」
そう言って伸ばした四肢体躯はその美しさに崩落し、埃となって宙に舞った。

何も無い空間で、唯只管に、埃が燦然と輝いていた。

それを見た誰かが、「綺麗だ」と呟いた。
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