異種族合法ロリ教師の恋

テルミャ

文字の大きさ
6 / 16

6.煩悩Monday

しおりを挟む
 あれから土日を挟み、また一週間が始まった朝。
 学校に向かう途中の電車を降りたところで、高垣先生に捕まった。

「おはようございますミリア先生!」
「おはようございます」

 やけに顔がにやけているが、何かあったのだろうか。

「それで、あのあとどうなりましたか……?」
「あのあとっていうと……」

 あのあとのことだろう。

「えっと、どこまで知ってます……?」

 一応迂闊な発言をする前に石橋を叩いておく。

「秋島先生が、ミリア先生のことどう思ってるかくらいは」

 それに対して含みを持った言い方で返される。
 ならば隠す必要もなさそうだ。

「ま、まぁ、あのあと二人でケーキ屋入って……」
「良かった良かった! そこは完璧ですね!」

 身体を跳ねさせながら相槌を打ってくる高垣先生は、その見た目の若さも相まって、コイバナを聞く女子高生のようにも見える。

「それでケーキを食べて外に出て……」
「…………」

 固唾を飲んでこちらを見守ってくる。

「秋島先生に……、告白……されました……」
「きゃー!」

 テンションの上がりきった高垣先生が私の後頭部をポンポン叩く。
 鬱陶しい限りではあるが、それと同時に嬉しさもある。
 何だかんだ、彼氏が出来たということを誰かに認知してもらいたかったのだ。

「それで? もちろん受けたんですよね!?」

 とはいえ流石にこれ以上連続で話すと羞恥心が爆発してしまう。

「受けましたよ! あとほらこれ! ケーキ!」

 話をそらすためのアイテムをつい消費してしまう。

「え!? これってあの店のケーキじゃないですか!」

 箱に刻印されたロゴを見て、すぐさまそれに気付くと、思い切り私を抱き締めてくる。

「ありがとぉお、ミリアぜんぜぇえ!」

 半泣きに鳴りながら感謝を述べる彼女に若干引きながらも、何だかんだ喜んでもらえて良かったと笑みがこぼれてしまう。

「もう、そんなに食べたかったんですか?」
「たべだがっだぁ」

 そんな風に言いながら私をしゃがんで抱き締める彼女の頭を、歳上らしいとこたまには見せるか、なんて理由で優しく撫でてあげた。

「秋島先生にもあとでお礼言ってくださいね。…………ハグは無しで」

 **********************

 そんなこんなで話を有耶無耶にした昼下がり、私は高垣先生と昼食を共にしていた。

「いやなんでですか」

 不満そうな顔で高垣先生が言い放つ。何か失礼があったのだろうか。

「彼氏出来立てなんですからそっち行くべきでしょう!?」
「え、だってここは学校ですし……何より恥ずかしいじゃないですか……」
「そういう可愛いのはズルいです」

 むすっとした顔で学食のうどんをかきこんでいく。
 うちの高校には学食が2つあり、こちらはその中でも人気のない方の食堂だ。主にメニューのレパートリーの無さ、教室からの遠さ、そして値段の高さから、学生はあまり使わない。
 どちらかと言えば教職員が良く使うことから、そういう用途で作られたものなのかも知れない。
 今食堂に居るのも、私達を除いても両手の指で数えられるほどしかいない。お陰で内緒話をしたり、落ち着いてご飯を食べるにはもってこいの場所だ。それに、

 ーー確かに値段も高いし、メニューも少ないけどここのうどんうまいんだよなぁ。

「せっかく私が二人のために便宜を図ったって言うのに……」
「あぁ、やっぱり計画ってそのことだったんですか?」
「そうですよ。私なりに結構考えたんですから」

 彼女の話によれば、ケーキ屋に三人で入り、私達二人に恋愛成就のケーキを食わせ距離をぐっと縮める作戦だったらしい……。いやわりかしずさんな計画だな。

「お婆ちゃんは大丈夫だったんですか?」
「幸いにも大事にはならなかったです」
「それは良かった」
「それで?」

 安心しながらアップルジュースを飲んでいる私に突然彼女が詰め寄ってくる。

「……それでとは?」
「わかっているくせにぃ!」

 先程までとはうってかわりテンションが高い。これはつまり彼とどこまで行ったかということを聞いているのだろう。
 まあ実際彼女のお陰でこの結果があるわけだし、義理を通す意味でも話すべきだろう。

「キス…………はしました……」

 表情を気取られないように、口元を隠しながら最大の成果を話す。

「うぉおおおお! すごいすごい! 目茶苦茶進んでるじゃないですか! それで土日は何したんですか!?」
「土日って……家でテレビ見たり」
「秋島先生と?」
「いや、一人で……」
「え、じゃあキスは?」
「あの日の帰りに私から……」

 改めて口にしていると確かに情けない気がしてきた。
 い、いやでも、普通こういうのは男の人の方からアプローチしてくるべきでは!?
 いや、それとも年上である私がもっとお誘いするべきだったのだろうか。

 私の言葉に高垣先生が急激にテンションを落としていく。がくりとしながら席に持たれるその姿は、だらしなさすぎて彼女に憧れる生徒が見たら百年の恋も覚めるだろう。

「あまりこういう言い方は好きじゃないですけど、今時小学生でももっと積極的ですよ?」
「うぅ……」

 彼女の言葉が徐々に精神へダメージを与えていく。
 そうは言っても、恥ずかしい話この歳まで男性経験なんてないし、何が正解かは分からない。そんな人間たくさんいるだろう…………いるよね?

「やっぱり土日に何か誘うべきだったんでしょうか?」
「誘うべきもなにも、デートとかしたくなかったんですか?」

 そう言われてもなぁ、やはり私は自分の容姿に自身がない。そんな私がアプローチをしたところで、滑稽に写るのがオチだ。何てことを考えていて、結局メッセージはあの日から一切送っていないし送られてもいない。
 というかそもそも秋島先生は私のどこが好きなんだろう。

「そりゃあ、行きたいですけど……」
「全く、秋島先生も秋島先生ですね……。付き合ったんだからもっと積極的にいけばいいのに……」
「えーと、こういうのって、付き合ってそんなすぐに誘うものなんですか?」
「デートにすぐも何もないですよ。というかこういう話は踏み入りすぎかも知れませんが性欲とかないんですか?」

 性欲、つまりは彼女がいいたいのはそういうことだろう。
 勿論ある。その話に自分で顔が赤くなっているのが分かる。

「勿論人にはよりますけどね……。なーんか秋島先生あんなに愛重いのに意外だなって思いました」
「え? 秋島先生が……?」
「まあでも秋島先生もニルヴィアだから手を出しづらいってのはあるかもですね。体格的にも世間体的にも」

 その言葉に少々落ち込んでしまう。
 ニルヴィア族と人間に、特に法律の垣根はない。異種族婚は何十年も前から認められているものだし、人間と多種族の例だってたくさんある。
 ただし、ニルヴィアがニルヴィア以外と結婚したという報告事例はほとんどない。理由は2つあり、1つはその圧倒的な人口の少なさだ。現状世界にいるニルヴィア族は一万に満たず、人間の認知もまだ広まりきっていない。それでありながら私が人間と同じ場で働けているのは、近親種族であるエルフが、人間との信頼を築いたからである。
 2つ目の理由は当然のことながら、その体格差である。かたや園児と同程度の見た目でしかないニルヴィア族。それを異性として意識し付き合っている男性がどのような扱いを受けるかは想像に固くない。

「高垣先生は……」
「ん?」
「ニルヴィアと人が付き合うの、あまり気にしないんですね……」
「そりゃそうでしょ。法律的にも問題なくて、お互いが好きなら、外部がとやかく言うことじゃないじゃないですか」

 何を当たり前のことを、というような顔でこちらを見てくる高垣先生は、いつもよりも凄く頼りがいがあって、この人が同僚で良かったと、私の胸を締め付けた。

「ごちそうさまでした」

 私が色々と考え込んでいる間に、高垣先生はうどんを平らげてしまっていた。

「じゃあ私、秋島先生にも話聞いてくるのでお先に失礼します」
「え、ちょっ!」

 私の制止も聞かず、彼女はトレイを戻すと食堂を去っていった。

「…………」

 一人残され考える。
 高垣先生には話していなかったが実は秋島先生と会えなかったのにはもう1つ理由がある。
 これでも男性と付き合ったらどうなるかというビジョンが無かったわけではない。定期的にデートして、たまにちょっとそういう雰囲気になるけどお互い一歩が踏み出せなくて、でも徐々に距離が近づいていくようなそんなのが理想だった。
 でも、付き合ってみて、キスをしてみて分かってしまったのだ。
 誰にも聞かれないように、口を押さえながら言葉を漏らす。

「私、性欲強いのかなぁ……」

 秋島先生を見るたび、考えるたびに、キスのその先をもっとしたいと思い、自然と濡れてしまう私がいることに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...