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――10日目~14日目

075.『14日目』

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本堂 空太
(14日目。この日も襲撃はなかった。

 果帆の部屋にいたら、白百合が顔を出した。
 3人で他愛のない会話をしていたら、果帆がこんなことを言い出した)

間宮 果帆
「美海に聞きたいことがあるんだ。
 …………空太の前だけど、いいか?」

本堂 空太
「…………?」

白百合 美海
「…………内容によりけりだけどね、いいよ」

間宮 果帆
「…………なんでさ、朔也じゃなくて、アキラだったんだ?」

白百合 美海
「…………どうして? 突然に」

間宮 果帆
「いや、…………いいんだ、話したくなければ。
 ただ、朔也はさ…………その…………」

白百合 美海
「…………うん……そうだね……」

間宮 果帆
「……てゆーか、この間水鳥が言ってたことも気になってるんだ」

白百合 美海
「紗枝子ちゃん?」

本堂 空太
(水鳥 紗枝子(みどり さえこ)?
 高潔な感じの大人びた美女で、彼女も元クラスメイトだった。
 女子にしては珍しく群れるタイプじゃなかったけど、果帆と白百合はほどほどに仲が良いみたいだ。
 …………俺はあの人、隙がなくてちょっと怖かったけどね……)

間宮 果帆
「ああ。なんで、朔也や如月じゃなくて、アキラなんだって」

本堂 空太
(…………今度は如月?
 ああ、…………あの一匹狼で、俺がすこし苦手だった元クラスメイトだ。
 如月 仁(きさらぎ じん)。
 一匹狼で、無愛想で、なにを考えてるかよくわからないやつだった。
 けど、白百合と朔也は仲が良かったみたいだ。
 …………俺も人付き合いは上手い方だと思うけど、この二人には完全に負ける。人当たりも良いしメンタルも強すぎる)

間宮 果帆
「どうしてそこに如月が関わってくるんだ?」

白百合 美海
「…………話してなかったね。ごめんね。
 …………あたしね、如月くんのこと、すこし好きだったことがあるの。
 ……中3の頃の話しだけどね」

本堂 空太
(マジか、それは驚いた)

間宮 果帆
「…………知らなかった」

白百合 美海
「そうよね、ごめんなさい。
 …………あたしね、誰にも言ってないし全部は話せないんだけど、…………兄が、いるの。
 …………いたの、昔」

本堂 空太
(…………昔?)
「…………ってことは、……今はいないの?」

白百合 美海
「うん。…………死んじゃったの。
 …………色々、大変なことがあって……。
 …………如月くんはね、……すこし、似てたの。
 おにいちゃ――――兄に。
 それで、すこし、気になってて」

間宮 果帆
「…………そうだったのか」

白百合 美海
「うん。…………でも今思うと、あれって恋だったのかな?
 兄に似てたって、それだけの理由で…………。

 ……でもね、今は、アキラが好きよ?」

本堂 空太
「そりゃそうだよ。
 ……好きじゃなきゃ、付き合わないでしょ」

白百合 美海
「うーん、……そうじゃないパターンもあってもいいと思うけど。
 でも、あたしはそうね」

間宮 果帆
「…………あたしも」

白百合 美海
「ふふ」

間宮 果帆
(白百合が笑った。
 少しずつ、こんな場面も増えてきた。みんな。
 …………元に戻れるまで、もう少しかな…………)

白百合 美海
「…………それじゃ、二人の時間邪魔しちゃ悪いし、
 あたしは…………アキラと朔也のところに行ってくるわね」

間宮 果帆
「ああ。…………ゆっくりしてってもいいのに。
 でも、わかったよ。また、夕飯の時間にな。
 あたしも手伝うからさ」

白百合 美海
「ふふ、うん、またね」

本堂 空太
「うん、また」

間宮 果帆
「じゃあな」



本堂 空太
(この日の投票も処刑はなかった。
 みんな、騒ぎはしないけど、顔を合わせて普通に会話ができるようにはなっていた。
 助けが来るまで…………見つけてもらうまで、こうであればいい。
 …………来るかどうかは、わからないけど。

 ………………。
 ……………………。

 ……………………けど。

 …………けどこの日の夜、恐れていたことがついに現実となった……)





 ――――14日目、人狼の襲撃が成功しました。





【残り:15人】
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