人狼ゲーム『Selfishly -エリカの礎-』

半沢柚々

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『腸』――1日目

059.『夜の時間(7)』

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 ――――PM23:15、小桃の部屋

佐倉 小桃
「……………………」
(共有者の能力を与えられたあたしは、
 金庫から見つかったワイヤレス式のイヤホンマイクを耳に当てた。
 パソコンには、『発信しますか?』の文字が浮かんでいるだけだ)

佐倉 小桃
「……乃木坂くん…………」
(カードに書かれていた情報によると、もう一人の共有者は乃木坂朔也くん。
 ……あたしが、ずっとずっと恋い焦がれている男の子。)

佐倉 小桃
「………………」
(あたしは意を決して発信のボタンを押した。
 数回、コールする音が鳴る。
 ……そして…………)

佐倉 小桃
「あ! あ、乃木坂……くん?」

乃木坂 朔也
「≪……佐倉?≫」

佐倉 小桃
「あ、あの、ごめんなさい、いきなりかけて。
 その……不安だったの」

乃木坂 朔也
「≪……いや、いいよ。
 お互い共有者だもんな。よろしくな≫」

佐倉 小桃
「え、ええ! よろしく」

乃木坂 朔也
「≪…………悪い、佐倉。
 せっかくかけてくれたのに悪いけど、
 俺、自分でも思った以上に疲れてるみたいなんだ。
 明日、また話そう。
 今日はもう、寝てもいいか?≫」

佐倉 小桃
「もちろんよ!
 ……ありがとう、声が聞けて嬉しかったわ……」

乃木坂 朔也
「≪ありがとう。
 …………じゃ、おやすみ≫」

佐倉 小桃
「おやすみなさい、乃木坂くん……。
 ……………………」
(彼が切るのを待ってから、あたしはイヤホンを耳から外した。
 少しだけだけど、話すことができた、……嬉しい)

佐倉 小桃
「……………………」
(………………こんなときだと言うのに。
 あたしは浮かれていた。少し。

 ………………突然、弥重の事を思いだして罰が悪くなった)

佐倉 小桃
「………………弥重……、秋尾くん…………」
(秋尾くんの最期の姿が脳裏に蘇ってくる。
 血飛沫の向こう側に倒れた彼のことが……)

佐倉 小桃
「……!!」
(………………弥重、ごめんなさい。
 昔、乃木坂くんのことがあって、あなたと気まずくなって、
 最近、少しずつ昔と同じようにあなたと接することができるようになったと言うのに……。
 あたしは、またあなたに、後ろめたいことをしてしまった……)

佐倉 小桃
「……弥重………………」
**




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