284 / 389
『腸』――2日目
094.『夜の時間(11)』
しおりを挟む**
――――PM23:10、朔也の部屋
乃木坂 朔也
「……………………」
(俺は、美海と菫谷の写真を眺めていた。
新聞を探る内、加害者である美海の兄の写真もでてきた。どうやら事件があまりにも凄惨だったせいで、一部は実名報道していたようだ。
少年Aの名前は…………『閖白 仁(ゆりしろ ひとし)』。
どことなく、元クラスメイトだった如月仁と似ている。
…………そういえば、美海と如月の関係を疑ったことがあった。
俺も如月とは仲が良かったけど、美海が一匹狼だった如月に人一倍熱心に接してたからだ。
…………ダメだ。俺ひとりじゃ抱えきれない。
…………アキラ……、アキラに打ち明けてみようか。
アキラは…………アキラなら…………)
乃木坂 朔也
「…………でも」
(美海の幸せを壊すかもしれない。
…………そのとき俺はどうすればいいんだ?
…………アキラの変わりに、支えてやれるのか?)
――――プルルルルルル
乃木坂 朔也
「……………………」
(電話がかかってきた。…………佐倉だ。
今日、泉沢千恵梨の話が出たが、自分で言うのも難だが正直、…………佐倉も、泉沢と同じだ。
今は昔ほどではないが…………まだ俺にそう言う気持ちは抱いているんだろうか。
俺は通話のボタンをクリックした)
乃木坂 朔也
「もしもし…………」
佐倉 小桃
「≪あ、…………乃木坂、くん?≫」
乃木坂 朔也
「ああ、俺だよ」
佐倉 小桃
「≪…………疲れてるところごめんなさい。
今、平気かしら?≫」
乃木坂 朔也
「ああ、大丈夫だよ」
佐倉 小桃
「≪よかった…………。
…………今日、元気なかったでしょ?
心配したのよ≫」
乃木坂 朔也
「ああ、空太から聞いたよ。
佐倉が心配してるって…………ごめんな」
佐倉 小桃
「≪ううん、謝らないで…………≫」
乃木坂 朔也
「……………………」
(…………気になる。佐倉の気持ちが。
…………佐倉、もし、佐倉が俺に好意があるとして…………俺が、美海と同じ状況だとしたら…………)
乃木坂 朔也
「…………佐倉」
佐倉 小桃
「≪うん?≫」
乃木坂 朔也
「…………ずっと、気になってたんだけど」
佐倉 小桃
「≪…………なに?≫」
乃木坂 朔也
「佐倉はさ…………その…………」
佐倉 小桃
「≪うん≫」
乃木坂 朔也
「…………俺のことが、好き、なのか?」
佐倉 小桃
「≪…………好きよ≫」
乃木坂 朔也
「………………………………。
…………そうか」
(…………嬉しいんだが、複雑だな)
佐倉 小桃
「≪ええ≫」
乃木坂 朔也
「……………………ごめん。
ならひとつ、聞きたいんだけど」
佐倉 小桃
「≪うん≫」
乃木坂 朔也
「例えば、俺が犯罪者だとして」
佐倉 小桃
「≪……………………≫」
乃木坂 朔也
「いや…………俺が犯罪者の身内だとして」
佐倉 小桃
「≪…………うん≫」
乃木坂 朔也
「…………それでも、俺のことが好きって言えるか?」
佐倉 小桃
「≪……………………乃木坂くん、
それを聞いてどうしたいの?≫」
乃木坂 朔也
「え?」
佐倉 小桃
「≪乃木坂くんは乃木坂くんなんじゃないの?≫」
乃木坂 朔也
(俺ははっと目を見開いた。
…………佐倉も、そう思うのか。そうか。
…………美海は、美海だ。美海が犯罪を犯したわけじゃないんだ。
他人に肯定されたようで、不思議と気持ちが落ち着いてきた。)
乃木坂 朔也
「…………佐倉」
佐倉 小桃
「≪うん?≫」
乃木坂 朔也
「…………ありがとうな」
佐倉 小桃
「≪うん…………いいのよ≫」
乃木坂 朔也
「…………それと、ごめん。
今、気持ちを決めることはできないけど、嬉しかったよ」
佐倉 小桃
「≪うん、わかってるわ。
あなたのことは…………ずっと見てきたから≫」
乃木坂 朔也
「…………ありがとう、…………ごめんな」
佐倉 小桃
「≪そんな、…………何度も謝らないで≫」
乃木坂 朔也
「うん、ごめん。…………あ、ごめん」
佐倉 小桃
「≪うん≫」
乃木坂 朔也
「……………………」
(……今まで美海以外の女の子なんて、何度も無理だと思ったけど。
…………佐倉なら…………佐倉なら好きになれるかもな……)
乃木坂 朔也
「佐倉…………。
…………それじゃ、今日はそろそろ」
佐倉 小桃
「≪ええ。
…………襲撃、うまくいくといいわね≫」
乃木坂 朔也
「そうだな…………それじゃ」
――――PM23:14、小桃の部屋
佐倉 小桃
「うん。おやすみなさい」
(乃木坂くんとの電話を切ったあたしは、昨日よりも浮かれていた。
…………ついに、ついに気持ちを伝えてしまった。
…………結果はいまいちだったけど、それでも今はって言ってくれた。
…………こんな状況だもの、それは仕方ないわ。
昔からずっと好きだった男の子。
可能性なんてほんの一握りだったけど…………今もそうなのかもしれないけど、けど、昨日よりは側に近付けたんだわ。嬉しい。
……………………。
…………また、あたしは。
…………ごめんなさい、弥重)
**
【残り:16人】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる