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『腸』――9日目
121.『夜の時間(5)』
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……………………。
白百合 美海
「…………小田切くん」
小田切 冬司
「うん?」
白百合 美海
「…………一緒に、行くわ」
小田切 冬司
「…………いいよ。
一応、武器は持ってきたからさ…………ごめんね」
白百合 美海
「…………っ」
(実は、あたしたちの金庫にはそれぞれ武器が入っていた。
勝平くんには、サバイバルナイフ、小田切くんにはネイルガン、そして、あたしには猛毒の注射針が…………。
小田切くんは、あたしたちに見えないよう隠してあった残酷な武器をソファーの片隅から取り出した。
……………………そのネイルガンで、アキラを殺すつもりなんだわ)
白百合 美海
「…………小田切くんっ」
(あたしは首を振るった。何度も何度も、激しく)
小田切 冬司
「…………ごめんね、白百合さん。
…………もしも用心棒が守ってなかったら、……俺は、アキラを殺すよ。
…………君を守るために」
白百合 美海
「なにを言ってるの!?
だめ、だめよ、アキラを殺すなんて、そんなのだめっ!
だめっっ、やめてっ!!」
小田切 冬司
「…………ごめんね、白百合さん」
白百合 美海
「小田切くん!!」
(小田切くんは、そう言って駆け出した。
あたしは必死でその後を追った)
白百合 美海
「小田切くん! ねえ、やめて! お願い!!」
小田切 冬司
「………………」
(…………ごめんね。…………ごめんね。
でも…………何故だろう、君の泣き顔を見ると、ゾクゾクするんだ。
君を守りたい…………その気持ちに嘘はないけど、けど、それ以上に、あなたを傷つけたい。
そんな、歪んだ…………俺の愛情)
白百合 美海
「小田切くん!!」
(小田切くんは階段を駆け上がった。
階段を上がって、左側、三つ目の部屋がアキラの部屋だ)
小田切 冬司
「っ…………っ!!」
(俺は、追ってくる白百合さんを無視して、アキラの部屋のドアノブに触れた。
…………覚悟はしてた。白百合さんの目の前で、アキラを殺すつもりだった。
けど…………)
カチ――――
小田切 冬司
「っっ」
白百合 美海
「っ、…………ぁ」
小田切 冬司
「……………………」
(…………扉は、開かなかった)
白百合 美海
「ぁ…………ぁ、ぁ…………」
小田切 冬司
「…………用心棒……、ちゃんと、守ってくれてたんだ」
白百合 美海
「ぁ……あ、……よか、ったぁ…………」
(あたしは膝から崩れ落ちた。
興奮と緊張と走った反動で、呼吸がつらい。
あたしは、荒い呼吸を整えるため、深呼吸を繰り返した)
小田切 冬司
「…………白百合さん」
白百合 美海
「…………ぁ、ぇ」
小田切 冬司
「…………ごめんね、驚かせて」
白百合 美海
「…………はぁ、…………はぁ、
でも…………失敗だったのよね。
そうなのよね」
小田切 冬司
「うん…………用心棒が、ちゃんと守ってくれてる」
白百合 美海
「ぁ、ぁ、…………小田切くんっ」
小田切 冬司
「白百合さん!?」
白百合 美海
(あたしは、小田切くんの胸に飛び付いた。
安堵と興奮で、頭を預けてただひたすらすすり泣いた)
……………………。
………………………………。
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