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『腸』――14日目
126.『夜の時間(1)』
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――――PM23:00、和華の部屋
七瀬 和華
「今日は…………」
(道明寺くんを守る番だわ。
みんな、少しずつ気力を取り戻して来てる。
ここで、わたしがしくじるわけにはいかない、絶対に。
投票や襲撃役を買って出てる筒井くんや道明寺くんたちはもちろん…………人狼の人たちだって、みんなのために頑張っているだから)
七瀬 和華
「……………………」
(ここへ来て、14日目ともなれば動作も慣れたものだった。
わたしはいつものように、パソコンの電源を入れた…………。
………………だが。
………………今回表示されたメッセージは見慣れないものだった)
七瀬和華さんにお知らせがあります。
七瀬 和華
「…………!」
(いつもなら『今夜は誰を人狼の襲撃から守りますか?』って出るのに……っ!
何事だと言うの?)
七瀬 和華
「な…………なに、よ…………」
お父様が、病と心労で倒れました。
七瀬 和華
「…………っっっ!!」
(お父さんが………………。
わたしには、お母さんがいない。7年前に病気で亡くなったからだ。
お父さんとわたしと、まだ幼い妹の安葉(やすは)たちを残して死んでしまったからだ。
わたしは炊事洗濯を覚えた。誰よりもショックを受けているお父さんを支えるために。気持ちよく、生活を、仕事をさせてあげられるように……。
お父さんはわたしがいないと家のことはなにもできない。妹の安葉たちもまだ小学生だ。
家事はいつもわたしの担当だった。
…………そのわたしがいなくなったら…………)
七瀬 和華
「………………っっ」
(メッセージ画面が変わり、わたしの家の映像になった。
家にまで隠しカメラをつけてるんだわ!
犯人はいったい何者なのだろう。こんなことまでできるなんて、ただの金持ちなんかじゃない、絶対に)
七瀬 和華
「……………………っ」
(映像は、わたしの家のリビングだった。
服や食器が散乱し、ひどい有り様だ。
…………そして、自暴自棄になり酒を煽る父が、のどか、のどかと、…………わたしの名を呼ぶ。
そして、…………母が死んだときと同じように、嗚咽をあげる)
七瀬 和華
「…………お父さん……」
(…………のどか、…………のどか。
帰ってきてくれよ、のどか…………。
のどか…………のどかを返してくれ…………)
七瀬 和華
「…………お父さんっっ!!」
(わたしは画面に飛び付いた。
ここにいるよ、生きてるよ。そう伝えるように…………)
七瀬 和華
「………………ぁ」
(わたしは、ぼろぼろと涙を流していた。
…………帰りたい。帰ってお父さんを安心させてあげたい。妹たちに美味しいご飯を作ってあげたい。
……………………けど)
七瀬 和華
「……………………」
(隠しカメラの映像が消える。お父さんが、画面の中から姿を消す)
七瀬 和華
「お父さんっ!!」
(わたしは叫んだ。お父さん、お父さん、と何度も。
………………新しいメッセージが表示された)
お父様は、急性心筋梗塞を起こされたようです。
あなたのいないストレスが現れた結果でしょう。
早く、帰ってあげたくはありませんか?</iro4>
七瀬 和華
「…………ぁ、…………ぁ」
(……………………どうしよう。どうすればいいんだろう。
お父さん…………お父さん…………お父さん…………)
七瀬 和華
「………………………………」
(……………………涙が止まらない。
…………わたしは、どれほど、物思いに耽っていたのだろう。
気付くと時計が…………深夜の12時を回っていた…………)
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