【完結】少女探偵・小林声と13の物理トリック

暗闇坂九死郞

文字の大きさ
16 / 69
西瓜割り

第16話

しおりを挟む
 西瓜スイカ畑は荒れたままだった。十個以上生っていたであろう西瓜は、無残にも全て粉々に砕かれてしまっている。
 夏休み中ということもあり、学校に片付ける人間がいないのだろう。

「現場保存の観点から言えば、望ましい状況ではあるがな」

 小林こばやしさんはそんなことを言いながら、畑の様子をスマホのカメラで隈なく撮影している。

「……それで、これからどうするの?」

 私が質問すると、小林さんは大きな西瓜の欠片を拾い上げて、豪快にかぶり付いた。

「待ち、だな」
「……待ち?」
「犯人は必ず現場に帰ってくる。捜査の基本だ」
「…………」

 何だその作戦は?
 本当にそんなので大丈夫なのだろうか?

 私と小林さんは西瓜畑を見張れる木陰のベンチに並んで座る。

「大崎も食べてみろ。意外とイケるぞ」
「……うん」

 小林さんに泥の付いていない比較的綺麗な破片を渡され、私も西瓜に噛《かじ》り付いてみる。
 水っぽくてあまり美味しいとは思えなかった。

「なァ大崎。本当はお前、西瓜畑を荒らした犯人が誰なのか知ってるんじゃないか?」

「え?」

 小林さんからの不意打ち。
 私は思わず一瞬、固まってしまう。

「……どうして、そう思うの?」
「最初に西瓜畑が荒らされているという話をしたとき、お前は私に『犯人はどうしてそんなことをしたんだと思う?』と訊いてきた。誰がやったかではなく、真っ先にその理由を知りたがった」
「…………」
「更に、大崎自身は壊された西瓜に思い入れはないという。ならば大崎が思い入れがあるのは、西瓜を破壊した犯人の方ではないか、と考えた」

 流石は名探偵。
 何もかもお見通しというわけか。

「小林さん、私……」

「無理に答える必要はない。大崎が話したくなったときに話してくれればそれでいい。今の私にできるのは、ただ待つことだけだ」
「…………」

 小林さんは西瓜を食べながら、畑に真っ直ぐ視線を向けている。

「……小林さんはどうして私の依頼を引き受けてくれたの?」
「別に。ただ、どうしても謎を解きたくなった。大崎が何故そこまで西瓜畑のことを気にしているのかを知りたくてな」

 私は腕時計で時間を確認する。
 音無おとなし先輩との約束の17時まで、あと五分を切っていた。

「……小林さん、私そろそろ行くね」
 私はそう言って、ベンチを後にする。

「私はもう少し畑を見張っている」
「…………」

 私は最後まで迷った挙句、とうとう小林さんに本当のことを話すことができなかった。

 ――言えなかった。

 小林さんの推理は、概ね正しい。

 ――そう。

 今朝、私は見たのだ。
 降りしきる雨の中、一心不乱に木刀で西瓜を破壊しまくる音無先輩の姿を。

 ――私が見た、あの光景は何を意味するのか?
 ――音無先輩は何故あんなことをしたのか?

 嗚呼ああセミが鳴いている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...