【完結】少女探偵・小林声と13の物理トリック

暗闇坂九死郞

文字の大きさ
51 / 69
見えない証拠

第51話

しおりを挟む
 そして最後に残ったのが、まりあが眠っている水の間だ。
 水の間のドアノブに手を掛けると、内側から鍵が掛けられていて動かない。

鰤岡ぶりおかの奴、あれだけ酔っていたのによく鍵を閉め忘れなかったな」
「そこは俺が口を酸っぱくして言っといた。何せこっちは脅迫状を見ているからな。……それで、これからどうする?」
 げんが僕と結麻ゆまに訊く。

「いや、もう充分だろう。水の間以外の部屋は全て調べて、異常はなかったんだ。そして鰤岡のいる水の間は、内側から鍵を掛けられている。鰤岡に危険が及ぶ心配はない」

「いいえ、ここまできたら調べるべきね」
 結麻はきっぱりとそう言った。

「侵入者が何時入ってきたかがわからない以上、水の間が安全だと100%断言はできないでしょう? ここまで調べたのだから、最後までやるべきよ」
「……でも調べるったってどうやって? 鰤岡に火の間で見つかった脅迫状のことを伏せたままで、どうやって扉を開けさせる?」

「マスターキーを使う」
 結麻はそう言って、上着のポケットから鍵の束を取り出した。

「ほら、私この館の所有者だから。全ての扉の鍵を開けられちゃうわけ」
「……鰤岡に無断で水の間に入るってことか?」
「それ以外に方法ある?」
「…………」
 僕と元は顔を見合わせる。

「何ぼやっとしてるの、今はまりあの安全が第一でしょう? 細かいことに拘ってる場合?」
「……わかったよ。たが、まだ鰤岡が起きているかもしれない。マスターキーで鍵を開けるのは、ノックしても返答がなかったときだけだ」
「オーケー。それでいきましょう」

 僕たち三人は水の間の前まで来る。そこで僕は扉を三回ノックする。

「鰤岡、起きてるか? 起きてたら返事しろ」
「まりあ、大丈夫?」

 暫く待ってみても返答はない。

「……仕方がない、鍵を開けよう」
 結麻がマスターキーを差し込んで、水の間の扉は開かれた。

 僕が電気のスイッチを付けると、結麻が猛然とまりあのいるベッドへと駆け寄る。

「まりあ!」

 次の瞬間、部屋の中は再び暗闇に包まれた。

「……何だ!?」
「停電だ!!」
「落ち着いて、すぐ自家発電に切り替わるから!!」

 結麻の発言の通り、その五秒後に照明がついた。

「……何だったんだ今のは?」
 元が首を捻りながら呟く。

  確かに今起きたことは異様だ。原因もわからない。だが今はそれよりも、まりあの無事を確認することが先決だ。

「鰤岡、大丈夫か!?」

 僕は急いでベッドから布団を引き剥がす。
 するとそこには、胸を真っ赤な血で濡らしたが横たわっていた。

「いやあああああああああああああッ!!」
「そ、そんな……!?」

「…………」

 僕は目の前の恐ろしい光景にパニックを起こしかけるのを必死に堪える。こんなときこそ冷静さを失ってはいけない。

 ――考えろ。考えるんだ。
 ――今、この館で何が起こっているのか。

 普通に考えれば犯人は自明だ。まりあを殺すことができた人物は一人しかいない。だが、僕は自分の推理に不整合があることに気がつく。

 ――水の間は内側から鍵をかけられた、だったのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...