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ダイイングメッセージ
第59話
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俺たちは椎名竜生がアルバイトで講師をしていた学習塾・新進ゼミナールのテナントビル前に来ていた。
「最近これを見ませんでしたか?」
小林はそう言って、中学生くらいの女の子に例の『8÷2(2+2)=X』の数式を書いたメモ帳を見せる。
「……ああ、これなら椎名先生の授業でやりました。といっても、世間話というか雑談みたいな感じで話してたやつですけど」
どうやらこの問題は椎名の持ちネタの一つだったようだ。
このあと同じ質問をして、数人の生徒がこの数式のことを覚えていた。
「これではっきりしたな。犯人はこの塾の関係者のうちの誰かだ」
「おい待てよ、何でそうなる? お前の推理ではダイイングメッセージは犯人がわざと残した偽の手掛かりなんだろう? もしも犯人が塾の関係者なら、事件とアルバイト先を結びつけるようなダイイングメッセージは普通残さないだろう?」
「警部」
小林は俺の質問を無視して、桶狭間警部に話しかける。
「椎名竜生の死亡推定時刻は何時頃ですか?」
「……ああ、12月12日の19時から20時の間頃だな」
「でしたら、その時間に授業をしていた講師を洗い出してください。犯人はおそらくその中にいます」
「……えっと、その時間にアリバイがない者を探すのではないのかね?」
「いいえ。むしろ自信を持ってアリバイを主張する人間を見つけ出してください」
「…………」
小林の謎の発言に桶狭間警部も俺同様に戸惑いを隠しきれずにいる。
小林の頭の中で、この事件はどう映っているのだろうか?
「……小林君、君が秘密主義なのは重々承知しているつもりだが、私からも一つだけ訊かせてくれ。何故君は椎名が学習塾でアルバイトしていることがわかったんだ? 私は君たちに椎名は大学生だという情報しか与えていなかった筈だが?」
「……仕方ありませんね。それくらいはお話ししておきましょう。でなければ、警部に私の推理を信用して貰えないのであれば」
小林は小さく肩を竦めて溜息を吐いた。
「椎名が握っていたマーカーですよ」
「……マーカーって、ダイイングメッセージを書いたあのペンのことか?」
「ええ。あれはホワイトボードに文字を書くときに使うマーカーでした。それでわかったのです。椎名は日頃からホワイトボードに文字を書く習慣があったのだと。そこまでわかれば、あとは椎名が大学生だという情報と合わせて、アルバイトで塾の講師をしているのではないかと推理することは容易いことです」
「いやいや、幾ら被害者がホワイトボードマーカーを握っていたからって、そこまで結論づけるのは飛躍しすぎだろ。たまたま手近にあったマーカーを使っただけかもしれない。偶然お前の推理が当たっていただけで、あのマーカーから椎名が塾講師のアルバイトをしていたことがわかるなんて不可能だ」
俺は小林の推理の穴を指摘する。
「いいや、あのマーカーだけで椎名のアルバイト先を当てることは可能だ。ところで警部、例のダイイングメッセージの筆跡鑑定の結果はどうでしたか?」
「椎名は理系の学生だから、数字のサンプルは大量にあったよ。結果、あの数式は間違いなく椎名本人が書いたもので間違いないという鑑定が出ている」
「……おいおい、そうなると推理の前提から間違ってることになるじゃねーかよ。ダイイングメッセージは犯人の罠だったんじゃないのか?」
ダイイングメッセージは椎名の部屋の床に直接残されていた。それが椎名本人の筆跡であるなら、犯人はダイイングメッセージの存在に気付かなかったということだ。
「いいや、これで私の推理の正しさが完全に証明された。犯人はある目的の為に、敢えてあのダイイングメッセージを残しておいたのだ」
小林は自信ありげに笑っていた。
「最近これを見ませんでしたか?」
小林はそう言って、中学生くらいの女の子に例の『8÷2(2+2)=X』の数式を書いたメモ帳を見せる。
「……ああ、これなら椎名先生の授業でやりました。といっても、世間話というか雑談みたいな感じで話してたやつですけど」
どうやらこの問題は椎名の持ちネタの一つだったようだ。
このあと同じ質問をして、数人の生徒がこの数式のことを覚えていた。
「これではっきりしたな。犯人はこの塾の関係者のうちの誰かだ」
「おい待てよ、何でそうなる? お前の推理ではダイイングメッセージは犯人がわざと残した偽の手掛かりなんだろう? もしも犯人が塾の関係者なら、事件とアルバイト先を結びつけるようなダイイングメッセージは普通残さないだろう?」
「警部」
小林は俺の質問を無視して、桶狭間警部に話しかける。
「椎名竜生の死亡推定時刻は何時頃ですか?」
「……ああ、12月12日の19時から20時の間頃だな」
「でしたら、その時間に授業をしていた講師を洗い出してください。犯人はおそらくその中にいます」
「……えっと、その時間にアリバイがない者を探すのではないのかね?」
「いいえ。むしろ自信を持ってアリバイを主張する人間を見つけ出してください」
「…………」
小林の謎の発言に桶狭間警部も俺同様に戸惑いを隠しきれずにいる。
小林の頭の中で、この事件はどう映っているのだろうか?
「……小林君、君が秘密主義なのは重々承知しているつもりだが、私からも一つだけ訊かせてくれ。何故君は椎名が学習塾でアルバイトしていることがわかったんだ? 私は君たちに椎名は大学生だという情報しか与えていなかった筈だが?」
「……仕方ありませんね。それくらいはお話ししておきましょう。でなければ、警部に私の推理を信用して貰えないのであれば」
小林は小さく肩を竦めて溜息を吐いた。
「椎名が握っていたマーカーですよ」
「……マーカーって、ダイイングメッセージを書いたあのペンのことか?」
「ええ。あれはホワイトボードに文字を書くときに使うマーカーでした。それでわかったのです。椎名は日頃からホワイトボードに文字を書く習慣があったのだと。そこまでわかれば、あとは椎名が大学生だという情報と合わせて、アルバイトで塾の講師をしているのではないかと推理することは容易いことです」
「いやいや、幾ら被害者がホワイトボードマーカーを握っていたからって、そこまで結論づけるのは飛躍しすぎだろ。たまたま手近にあったマーカーを使っただけかもしれない。偶然お前の推理が当たっていただけで、あのマーカーから椎名が塾講師のアルバイトをしていたことがわかるなんて不可能だ」
俺は小林の推理の穴を指摘する。
「いいや、あのマーカーだけで椎名のアルバイト先を当てることは可能だ。ところで警部、例のダイイングメッセージの筆跡鑑定の結果はどうでしたか?」
「椎名は理系の学生だから、数字のサンプルは大量にあったよ。結果、あの数式は間違いなく椎名本人が書いたもので間違いないという鑑定が出ている」
「……おいおい、そうなると推理の前提から間違ってることになるじゃねーかよ。ダイイングメッセージは犯人の罠だったんじゃないのか?」
ダイイングメッセージは椎名の部屋の床に直接残されていた。それが椎名本人の筆跡であるなら、犯人はダイイングメッセージの存在に気付かなかったということだ。
「いいや、これで私の推理の正しさが完全に証明された。犯人はある目的の為に、敢えてあのダイイングメッセージを残しておいたのだ」
小林は自信ありげに笑っていた。
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