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ダイイングメッセージ
第61話
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「……殺害現場がここだと!?」
「吉田さん、もうそんな白々しい芝居をする必要はないんですよ」
小林はゆっくりと首を振って言う。
「既に鑑識課が建物の中を調べ上げて、本当の殺害現場は男性用トイレの個室の一つだと判明しました。貴方がどんなに証拠を消そうとしても、飛び散った僅かな血痕が残っていたんです」
「……う、嘘だ!! それなら椎名の部屋にあったダイイングメッセージは何だ? 説明してみろ!!」
吉田はまだ諦めていない様子で、小林に食ってかかる。
「既にもう貴方が仕掛けたトリックは破られています。無駄な抵抗はやめた方がいいと思うのですが……」
「黙れ黙れ!! 誰がそんなハッタリに騙されるか! 僕は椎名を殺してなんかいない!!」
「……仕方ありませんね。いいでしょう。貴方が望むのなら、最後までお付き合い致しましょうではありませんか」
小林の顔が邪悪に歪んだ。
「犯人が死体の傍にダイイングメッセージを残した目的。それは、殺害現場を椎名さんのアパートだと錯覚させる為でした。死体がマーカーを握っていて、床に直接本人の文字が残っていたら、その場所で殺されたのだと考えるのが普通ですからね。実際には貴方が椎名さんを眠らせた状態で塾の男子トイレの個室に隠し、授業を抜け出したタイミングで殺害した。その後何食わぬ顔で授業に戻り、建物の中に誰もいなくなってから椎名さんの死体を運び出し、アパートまで運んだのです」
「……なるほど。殺害現場を誤魔化すことで、アリバイを作ったのか」
桶狭間警部が感心したように呟いた。
「待てよ小林、犯人がアリバイを作る為にダイイングメッセージを残したことはわかったが、筆跡鑑定の結果は椎名の書いた文字で間違いなかったのだろう? 犯人はどうやって死体の傍に椎名の書いた数式を残したんだ?」
「ポイントになるのはホワイトボードマーカーだよ、鏑木」
小林はそう言って、目の前のホワイトボードに文字を書き始めた。
鏑木のバカ
「……何でそんなシンプルな悪口?」
「書いた文字に意味はない。まァ馬鹿は黙って見ていろ」
小林はそう言うと、桶狭間警部に手伝わせてホワイトボードを壁から外して床の上に置く。それから水の入ったペットボトルを鞄から取り出し、自分が書いた文字の上にゆっくりと垂らした。
――すると。
何と小林が書いた『鏑』の文字が端から綺麗に浮いていくではないか!
「……な、何だこりゃあ!?」
「ホワイトボードマーカーで書いた文字に端から水を漬けていくと、書いた文字とホワイトボードの間に水が入り込んで、綺麗に剥がれる。あとは剥がれた文字をシールのように椎名の部屋のフローリングの床の上に並べれば、椎名が今際の際に残したダイイングメッセージに見せかけられるというわけだ」
「…………」
確かにこれなら筆跡鑑定で椎名本人の文字だと鑑定されて当然である。
「じゃあ、椎名が塾講師のアルバイトをしていると推理できたのは……」
「勿論、犯人がこのトリックを使ったことを想定した上でのことだ。椎名が日常的にホワイトボードに文字を書く仕事をしていれば、それだけ文字を採取する機会は増えることになるからな。犯人の視点に立って考えれば、確率はかなり高いだろうと考えたわけだ」
それから小林は吉田に向かって止めの言葉を浴びせる。
「貴方の敗因はズバリ、死体の傍にダイイングメッセージなどという不自然極まりないものを残したことです。今正に命が尽きようというときに、答えのない計算式を残していく酔狂な人間などいるわけがないではありませんか」
「吉田さん、もうそんな白々しい芝居をする必要はないんですよ」
小林はゆっくりと首を振って言う。
「既に鑑識課が建物の中を調べ上げて、本当の殺害現場は男性用トイレの個室の一つだと判明しました。貴方がどんなに証拠を消そうとしても、飛び散った僅かな血痕が残っていたんです」
「……う、嘘だ!! それなら椎名の部屋にあったダイイングメッセージは何だ? 説明してみろ!!」
吉田はまだ諦めていない様子で、小林に食ってかかる。
「既にもう貴方が仕掛けたトリックは破られています。無駄な抵抗はやめた方がいいと思うのですが……」
「黙れ黙れ!! 誰がそんなハッタリに騙されるか! 僕は椎名を殺してなんかいない!!」
「……仕方ありませんね。いいでしょう。貴方が望むのなら、最後までお付き合い致しましょうではありませんか」
小林の顔が邪悪に歪んだ。
「犯人が死体の傍にダイイングメッセージを残した目的。それは、殺害現場を椎名さんのアパートだと錯覚させる為でした。死体がマーカーを握っていて、床に直接本人の文字が残っていたら、その場所で殺されたのだと考えるのが普通ですからね。実際には貴方が椎名さんを眠らせた状態で塾の男子トイレの個室に隠し、授業を抜け出したタイミングで殺害した。その後何食わぬ顔で授業に戻り、建物の中に誰もいなくなってから椎名さんの死体を運び出し、アパートまで運んだのです」
「……なるほど。殺害現場を誤魔化すことで、アリバイを作ったのか」
桶狭間警部が感心したように呟いた。
「待てよ小林、犯人がアリバイを作る為にダイイングメッセージを残したことはわかったが、筆跡鑑定の結果は椎名の書いた文字で間違いなかったのだろう? 犯人はどうやって死体の傍に椎名の書いた数式を残したんだ?」
「ポイントになるのはホワイトボードマーカーだよ、鏑木」
小林はそう言って、目の前のホワイトボードに文字を書き始めた。
鏑木のバカ
「……何でそんなシンプルな悪口?」
「書いた文字に意味はない。まァ馬鹿は黙って見ていろ」
小林はそう言うと、桶狭間警部に手伝わせてホワイトボードを壁から外して床の上に置く。それから水の入ったペットボトルを鞄から取り出し、自分が書いた文字の上にゆっくりと垂らした。
――すると。
何と小林が書いた『鏑』の文字が端から綺麗に浮いていくではないか!
「……な、何だこりゃあ!?」
「ホワイトボードマーカーで書いた文字に端から水を漬けていくと、書いた文字とホワイトボードの間に水が入り込んで、綺麗に剥がれる。あとは剥がれた文字をシールのように椎名の部屋のフローリングの床の上に並べれば、椎名が今際の際に残したダイイングメッセージに見せかけられるというわけだ」
「…………」
確かにこれなら筆跡鑑定で椎名本人の文字だと鑑定されて当然である。
「じゃあ、椎名が塾講師のアルバイトをしていると推理できたのは……」
「勿論、犯人がこのトリックを使ったことを想定した上でのことだ。椎名が日常的にホワイトボードに文字を書く仕事をしていれば、それだけ文字を採取する機会は増えることになるからな。犯人の視点に立って考えれば、確率はかなり高いだろうと考えたわけだ」
それから小林は吉田に向かって止めの言葉を浴びせる。
「貴方の敗因はズバリ、死体の傍にダイイングメッセージなどという不自然極まりないものを残したことです。今正に命が尽きようというときに、答えのない計算式を残していく酔狂な人間などいるわけがないではありませんか」
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