【完結】残機✕2の殺人

暗闇坂九死郞

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第一部 消失 (二〇二四年十月)

第13話

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 真理雄は電車のシートに揺られながら、大昔に祖父の寿限無から聞いた話を思い出していた。

 ――それは子ども心にも非科学的で荒唐無稽と思える話だった。

 寿限無の話を要約すると以下の通りだ。
 ①天童家の血を引く人間は一度だけ死んでも蘇ることができる。
 ②復活するのは死後からきっかり十五分後で、復活と同時に死体は消えてなくなる。
 ③復活する場所は死ぬ十五分前にいた地点で、死ぬ十五分前のステータスが反映される。

 にわかには信じられないような話である。もしも話したのが寿限無でなければ、真理雄も到底信じる気にはならなかっただろう。

 寿限無はこの先祖伝来の能力を『ストック』と呼んでいた。その力は真理雄は勿論のこと、花にも受け継がれている筈である。万が一犯人が花を殺害するようなことがあったとしても、十五分後に復活することができるということだ。
 この点は自分にとって有利だと真理雄は考えていた。

 ――この能力を駆使して、犯人を出し抜くことはできないだろうか?

 まず最初に思い付いたのは、犯人の要求を悉く突っぱねることだ。激高した犯人が花の命を奪うかもしれないが、花は『ストック』の能力によって十五分後に蘇る。

 犯人が花を殺した後、十五分もその場に留まっているとは思えないので、花を救出できる可能性はかなり高いだろう。

 だが、この方法には問題も多い。第一に犯人が花を殺さなかった場合だ。犯人が花を生かして連れたまま姿を消せば、救出は限りなく困難になる。もっと最悪なのは花が死なない程度の暴行を受けた場合だ。『ストック』での復活は死亡する十五分前のステータスが反映される。失明や四肢の欠損をしても、十五分後に生存していたらそれらのダメージは二度と元には戻らない。

 真理雄としては花を危険に晒すようなことは極力避けたい。
 やはり、犯人の要求にはできる限り従うべきだ。

 ――その上で、自分にやれることはないだろうか?

 ――花を安全に助け出し、犯人を追い詰めることができる、一石二鳥の良い手はないか?
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