復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第4章 魔王視点

第5話:ノアールの回想②

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屋敷に勇者がやってきたのだ。その勇者は、なんとセレだった。


これが、贖罪か。


かつて自分勝手に鎖で繋いでしまった、あの可哀想な少年に、自分は殺されるのだろう。勝手に首輪をつけ、ペットのように扱い、幸福を奪った。我ながら、悪虐だ。

俺は、当時の謝罪の言葉をつむぎながら膝をつき、彼の剣が自分の首と身体を分かつ瞬間を待った。

しかし、その瞬間は訪れなかった。剣が振り下ろされるはずの瞬間に、俺の身体は、強い衝撃と共に、硬い何かに抱きしめられた。

驚いて見上げると、セレが、俺の身体を強く抱きしめていた。彼の顔は、俺の肩に押し付けられていたが、その首筋から僅かに見えた彼の瞳の金色は、憎悪と苦痛、そして抑えきれない切実な何かで激しく燃え盛っていた。

そして、抱擁は一瞬で終わった。

彼は、俺の身体から離れると同時に、剣の代わりに両手から、全力の『聖炎』を放った。その光は、俺の闇を穿った。
凄まじい光の衝撃波が広間を満たし、俺の意識は、その眩しい光と共に失われた。

-----------------------------------------

目を覚ますと、俺は廃墟となった教会の中にいた。こんなにぐっすり眠れたのは、何年ぶりだろうか。身体も、闇の奔流から解放されたようにスッキリしている。

寝起きでぼんやりとしながら考えて、はっと目が覚めた。

俺は、何故生きている……?
確か昨日、セレが屋敷に現れ、その手には勇者しか持てない剣が握られていた。俺は、自分が生きていることに、困惑した。

あの時、殺されたのではなかったのか……?

そこへ、部屋に入ってきたのは勇者、セレだ。

彼は、俺に、王城の命を無視して連れ去ったこと、そして「復讐の道具として、俺のそばにいろ」と告げた。

俺の望む死も、王城が望む処刑も与えずに、俺を孤独な執着の鎖に繋ぎ直す。それが、彼が俺に課した罰だった。

「君の望み通りにすればいい。僕が君にした罪の代償を、僕は一生かけて払うよ、セレ」

俺は、この鎖を受け入れた。俺の罪の贖罪は、彼に復讐の相手として、永遠に隣にいること。そして、彼の冷たい瞳の奥に灯っている、孤独な光を支え続けること。

セレは、俺を討伐したと王城に嘘の報告をし、勇者として外の任務をこなしながら、俺を秘密裏に監視する日々が始まった。

この鎖は、俺の罪の証であり、彼が失った幸福への歪んだ依存の証だ。俺は、この檻の中で、彼の心が解放されるまで、静かに彼の傍にいることを誓った。
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