少年退行モラトリアム

絃屋さん  

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心の変化

お守りの効果によってイツキの環境は、すっかり変えられてしまった。
あれほど嫌がっていた難しい試験の勉強も今では取り戻したい過去になっていく。
「ぞうしゃんがいっぴき、カニさんがいっぱい」
「違う違う、いっくん、ぞうさんは1頭だよ」
「そっか!わかったぞうしゃんはいっとうだね」
絵本を見ながら何とか知識を取り戻そうと試みる。
「えーと、うーん」
「どうしたの?いっくん?」
「いっとうと、いっぴきはどっちがすくないの?ぞうしゃんはおおきいからおおいのかな」
「すごいね、いっくん!いっくんはお利口さんだね。2歳でそんな難しい事を考えられるんだね」
「ちやうの、いっくんにさいじゃない」
「そうだったわね、いっくんはもう大人なんだよね」
「うん、いっくんおとななんだよ!」
反抗期の時の面影はなく、母親にベッタリと甘えてしまうのもこの年齢になった副作用なのかもしれない。
「あれれ?いっくんおとななんだよね?」
母親がおどけてイツキに言う。
「そ……そう。おとなだかりゃ」
すかさず、母親はイツキのズボンを脱がした。
「あ!だめ!」
「ほーら、こっちのぞうさんはえーんえーんって泣いてるよ」
「ほんとだ、ぞうさん泣いてる」
「いっくんまたおもらししちゃったね」
その言葉でイツキは我に返った。
「あ、なんで。ぜんぜん気づかなかった」
「いっくん夢中で絵本を読んでたから気がつかなかったんだね……おとなだったらこんなときどうするかわかるかな?」
母親はおもらしに、ショックを受けているイツキに優しい口調で話しかける。
「……」
「そういう時はね、ママちっちでちゃったのって教えてほしいなぁ」
「うん、わかった。いっくんおとなだから言えるもん」
「ほんとにお利口さんね、じゃあお利口さんないっくんの為に大好きなオムライスを作ってあげる」
「わーい、オムライスだいすき!」
子どもに戻った影響は知識だけでなく感情にも影響しているようだった。
抗おうとすると、子ども特有の喜怒哀楽の起伏がイツキの心を支配する。
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