23 / 260
転機
しおりを挟む「オリバーを呼んできてくれ、任務が急遽変更になった」
カナル隊長は、俺と後ろで笑い転げているブライとニーアに向けてそう言ってきた。
隊長の後ろにはタウロンとミラがいる、隊長と一緒に今回の任務の詳細を聞いていたのだ。
ブライとニーアがまだ腹を抑え苦しんでいる最中なので、俺がオリバーを呼んでくることになる。
◇
「任務の事だが、つい先ほど変更になった」
隊長の話を聞いている隊員達は、皆真面目な顔で聞いているがブライはお腹をさすっている、まだ痛みが取れないのだろう。
「中央後方の予定だったが、急遽、中央前線に変更になった」
「‥‥あー、隊長? ハヤトがいるにも関わらずですか?」
まだ仮入隊中の学生がいる場合、その部隊は比較的安全な場所の任務に当たるが、今回変更された任務は異例のことになる。
「そうだ、中央前線に歪みが発生した」
「「「 えっ!? 」」」
「バリス隊から任務遂行予定地に移動中発見したとの報告があった、バリス隊は遂行中の任務があるので動けん、今動けるのは我々しかいない、準備でき次第すぐに出発する」
◇
任務を遂行するにあたって必要な物を軍から支給される、武器・防具はもちろんのこと、食料と水、食料は任務予定期間よりももしものことを考え多めに、水は比較的契約しやすいと言われる『水』魔法を使える者が多いので極々少量、隊によっては水は持って行かない隊もある。
そして、もし隊員が死亡した場合の時の棺桶、『収納』魔法には、生きている人間はもちろんのこと、死亡した人間も入れることが出来ない、しかし魔道具化した棺桶の場合は遺体を収めたうえで収納出来る、
これを一人一つ支給される、使いたくはない魔道具だがこれがないと遺体を背負って帰還しなければならない、仲間の遺体を放置することも出来ないし、放置した場合は、兵士に最も忌み嫌われるヒュケイに遺体を貪られることになる、共に過ごした仲間が食われるところは絶対に見たくはない。
カナル隊長とオリバーは実際にこの棺桶を使ったことがあるらしい、かつて隊長は仲間をこの棺桶の中に入れたとか・・
そのほかに支給されるのは個人を特定するためのネックス型のタグ、数が多く遺体が回収できない場合このタグを回収する、タグには所属する隊・個人の番号そして名前が記載されている、このタグの回収には敵国マシェルの兵も含まれる
タグはその兵が死亡したという証拠になる、相手国のタグも集めるのは、敵国でもあるが同じ兵として敬意を払うということでだ、もし相手国のタグを拾わなかった場合、それは自国の兵が死んでも拾ってもらえなくなる、そうすれば家族などに死亡したことすら伝わらないことになる、軍からは相手国のタグを拾えとは言われてないが、お互いの兵にとって暗黙のルールになっている。
それと敵国の兵の遺体についても同様、棺桶に余裕があれば回収することになっている、オリバーは別の隊に居たとき敵の遺体を2度回収したことがあったそうだ。
今隣ではミラが俺の準備の手伝いをしてくれている、今回の任務が始まる1週間前
「来ちゃった」
といきなり来られた時は何事かと思ったが、1週間の休みを貰ったとのことで俺は学校に、次の任務の準備をしたいから1週間休みたいと申し出た結果、あっさり承諾されそのまま誘われるがままミラの部屋に行った、朝から晩まで、おはようからおやすみまで常にミラと一緒だった。
食事も3食ミラの手作りだ、ただ・・日に日に砂糖の量が多くなり甘さが増してくるのは正直辛かった、『防病の契約』で病気にかからないからだろう、この世界の人たちは偏食が多い、ただの煮物に砂糖一袋使ったときは開いた口が塞がらなかった。
楽しそうに俺の世話をしてくれるミラを見て、ふと初等部にいたコトンちゃんを思い出した、もうそういえば4年? 5年だったか会っていない、ケンタ君もそうだけど今度の任務が終わってから一度会いに行ってみようかな、もう忘れているだろうか。
そんな隣で手伝いをしてくれるミラの首には2つのチェーンが下がっている、一つは個人識別用のタグともう一つは俺がミラの部屋に行った初日にプレゼントした物だ、
鍛冶で以前作った日本刀の改良をしている時一緒に作った物で、召喚獣のコスモの翼の片方を形どった物、全て魔鉱石で出来ており、『硬化』と『照明』の魔法を付与してある、『硬化』は強度のため、『照明』は弱い光をゆっくりと点灯するようにかけている、翼の模様によってキラキラと不規則に光る、以前ミラと見た滝から溢れ出る光のように輝いていた。
「いいかハヤト、女はなプレゼントに弱いんだ、10代のときは安い物でもいいけど20代になるとな、同じプレゼントでも、金銭的価値のある物にしか興味がなくなるから注意しろよ」
我が敬愛する兄さんのお言葉である、中学校からカノジョ持ちの兄は、その当時付き合っていた女性とずっと付き合っていた、その兄のありがたいお言葉なので間違いはないだろう、ただし被験者は一人だけなので少々不安だが、
「今は俺の手作りだけど、そのうちもっとイイのを買ってあげるよ」
給料なんてまだ出ていないし、一応任務の手当てはつくけど
申し訳なさそうに渡したプレゼントに彼女は、両手で大事そうに持ちながら
「ううん、これでいいの‥‥ありがとう」
少し目に涙を浮かべミラはそう言った、そして事あるごとに手で優しく触ったり、服の上からペンダントの辺りを抑える仕草をするようになった、そこまで喜んでくれるとこっちも嬉しいし、ミラはとても純粋な人なんだと思った
それに引き換え、実の姉の洋子は恐ろしいことに小学校から彼氏がいて、ウチに連れ込んだ男は2桁になる、洋子が彼氏を連れてくると、洋子の隣の部屋の兄さんが俺の部屋に避難してくる、
「いや‥‥色々聞こえてきて」
色々聞こえてくるらしい、それが実の姉だから悶々としつつもどうにも出来ない、複雑な気持ちになるとか
「元カレから貰ったプレゼントさー、全部で3万にしかならなかったよ」
新しい男が出来ると、元カレのプレゼントをすべて売却する洋子、まぁそれはいいが元カレの名前が、〇〇万の元カレとかになる、それを聞いた元カレは何と思うだろうか?
・・・あんなのに騙された元カレ達が悪いんだろう、ご愁傷様
・・・・・・・・
・・・・
「これで全部だね」
「うん、ミラありがとう」
「どういたしまして」
お互いにニッコリとほほ笑む
それをじーっと見ていたニーアとタウロ
「ねぇ、あんた達何かあった?」
ビクッ!! っとミラの体が一瞬震える
「え? いや別に…」
「そ、そ、そうよ、私たち特に何もしてないわよ」
俺はうまく返したが、ミラはボロが出るような言い方だ、二人の事は他の隊員達には内緒にしようとミラと決めていたので、ミラの今の言い方は少しだけまずい
「ハヤトさー‥‥お姉ちゃんじゃなくて名前で呼ぶようになったんだね、なんで?」
半目でニーアが探るように見つめてくる
今度はビクッ!! っと今度は俺の体が震える
「え‥‥ほ、ほら、一応同じ隊の仲間だし、ほら、ね、いつまでもお姉ちゃん呼びはちょっと…ね」
「ふーん、でミラさーその首に掛かってるネックレス? ペンダント? この前は無かったよね」
ニーアは追撃の手を休めることは無いそうだ
「これは買ったの! そう、この前の休みに買ったの!」
ニーアの手がス~っとミラの首に掛かるチェーンに手をかけ、服の中からペンダント部分を出す。
あ…マズイ
「‥‥これ、ハヤトの召喚獣の翼に似てるわね、何で?」
キラキラと光るペンダントに
「へーこれは凄いですね」
とタウロンがペンダントを褒める
でしょ? 俺が作ったんですよ! と言いたいが言えない
「たまたま買ったのがそうだったの! 買ったらそうなってたの!」
「へーぇたまたまねぇー、ハヤトはアクセサリーとかも作ってたわね」
「え? ええ・・」
目が完全に泳ぎまくっているミラと、苦さ9割笑い1割の苦笑いを浮かべる俺を、交互にニーアは見ていた、そんな二人を見て確信したような納得したような顔をしたニーアは
「ふぅ、まぁいいわ二人とも、でもねここは軍だから規律という物があるからね、所かまわず好き勝手しないようにね、するなら証拠を残さないようにしてね」
「う――――‥‥」
顔を両手で隠しうずくまるミラ、正直可愛い今したい、いろいろと‥‥
証拠?大丈夫、魔法大辞典で『洗浄』に匂いを消すのが載っていたから証拠は出さない、任せてミラ
これで追及は終わりかと思ったが、二―アの顔がニヤニヤしているまだ追及は終わってないようだ、さすがにこのままではイカンと思い話題を変える、何か‥‥何か‥‥ん?タウロンも変な首飾りしているな。
「というか、タウロンも首飾りしてるよねそれは?」
「ああ、これですか?これは撮影用ですよ」
「撮影?」
「ええ、戦闘の記録のための物ですよ、報告書では伝えきれない情報があった場合こちらで解析するんです」
「おおーい!! ニーア!! タウロン!! 手伝ってくれ!!」
オリバーの声がするなーと思ったら、かーなり遠いところからオリバーが二人を呼んでいる。
ホントに遠いな‥‥あそこからこの声量が届くとは。
「おっとぉ呼ばれたよ、続きは後でね、ああ、それと…倉庫の後ろの着替え用のテントってさー、中からカギを掛けられるようになってるから便利だよねー」
ニッヒッヒと笑いながら二人はオリバーの方へ向かっていった。
「ふぅー、オリバーのおかげで助かったね」
隣を見ると若干顔を赤くしている
周りに誰もいないのを確認して、お尻をサワサワと触ってみる
バチ―ン!
「痛った!」
手をはたかれてしまった、駄目だったか…と思ったが、そのあとすぐに手を掴まれそのまま倉庫の方に体を引っ張られ、歩き出した。
「証拠隠滅は俺に任せといてミラ」
と言うと彼女は『身体強化』使い、俺を担いで走り出した
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。
しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。
やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。
そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。
そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。
これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~
大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。
話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。
説明口調から対話形式を増加。
伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など)
別視点内容の追加。
剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。
高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。
特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。
冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。
2021/06/27 無事に完結しました。
2021/09/10 後日談の追加を開始
2022/02/18 後日談完結しました。
2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます
無味無臭
ファンタジー
久しぶりに異世界転生を体験した。だけど周りはビギナーばかり。これでは俺が巻き込まれて死んでしまう。自称プロフェッショナルな俺はそれがイヤで他の奴と離れて生活を送る事にした。天使には魔王を討伐しろ言われたけど、それは面倒なので止めておきます。私はゆっくりのんびり異世界生活を送りたいのです。たまには自分の好きな人生をお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる