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喰ラウ者
しおりを挟む「前方魔物反応あり! 数3!」
タウロンの声が響く、遠くからでも分かる巨体、ゴブリンなど小型の魔物は慣れたものだが大型だと話は違う、目の前に出現したのは熊の形をした大型の魔物、日本で熊と言ったら恐ろしい害獣として知られている、毎年のように被害が出るほどだ、ネットで熊に襲われたときの映像とかを興味本位で見たことがあるが、どれも恐ろしい物ばかり少しトラウマだ、あの巨体で筋肉と皮下脂肪の塊が襲ってくる、それだけでも怖いのに今目の前にいる熊型の魔物は更にデカい。
俺たちの周りは木に囲まれ少しばかり視界が悪いのも恐怖を誘う、あれほどの巨体なら簡単に見つけられるが、そうではない、見えない部分が少しでもあると怖いのだ、恐怖のせいなのか今手に持っている武器は槍だ、少しでも近づけたく無い気持ちが出ているのだろう。
周りの隊員達が優秀なのでそんな気持ちも杞憂に終わるが、俺としては土弾を3発ほど魔物の前足に当てたくらいだった、かなり体制を崩していたところをオリバー達が攻撃していたので、戦いに貢献できたと思う。
「ハヤト」
心配そうな顔をしながら、右側からミラが駆けてくる
「大丈夫? 顔色が悪いよ、槍なんて初めて持ったよね?動きも何だかおかしかったし、ちょっと震えてるじゃない」
そう言ってミラは俺の手を取った、相変わらず手の皮が厚い。
さすがミラ俺のことを気にかけてくれている、そしてすごく可愛い、今すぐ任務をほったらかしてあれこれしたい。
「ちょっとあの魔物の姿が苦手で、もう大丈夫だよ、ありがとうミラ」
そう言うとミラは微笑んで持ち場に戻って行った、
小走りで戻っていくミラもいいなー、その後ろ姿も可愛い
「ねぇ」
隣にいるニーアに小声で声をを掛けられる
「あんた今の話とは違うこと考えてない?」
俺は正直に言う
「今すぐミラと二人っきりになりたいです」
はぁ、とため息を漏らされた後
「今日の野営の時、あたしも含めた3人で夜の見張りが出来る時間帯を作るように隊長にかけあうから、そのとき済ませてきな」
俺とミラの関係がバレてから、ニーアはやたらと気を使ってくれるようになった、元々面倒見のいい人だったが、最近益々こうして気を使ってくれる、ありがとうございます恩に着ますと小声で感謝を述べたら、いいっていいってと手を振ってきた、俺の中でニーアの評価はうなぎのぼりだ
翌朝
やたらと機嫌の良いミラが、同じく機嫌のいい俺の隣で朝食を食べているとき、ものすごく機嫌の悪そうなブライが偵察から戻ってきた
「ブライ、どうしましたかそんな顔して?」
「ああ、朝っぱらから嫌なもん見ちまったよ、これから行く方向にさヒュケイが飛んでたんだ、まったく縁起でもねぇ」
その言葉で他の隊員の顔に影がさす。
ヒュケイか、実物を見れるのかもしれないなー、召喚獣のヤタを隠れて出したことあるけど、見れば見るほど映像に写るヒュケイとホントにそっくりだったなー。
「・・ブライそれは確かに俺たちの進む方向だったんだな?」
「ああ、まちがいねぇ」
「そうか、ヒュケイがいるということは、その先に何かある可能性がある各自周囲に気を付けろ、それと距離的に今日の昼ぐらいには目的地に着けるだろう、そのあとは探知が使えるタウロンの仕事だな、その時はハヤト、お前が周囲の魔物の気配を探ることになるいいな」
「「はい」」
◇
「うっわぁー、マジでヒュケイだよー糞とか落とすなよー」
バッサバッサと上空を飛び回るヒュケイをニーアは嫌そうな顔で見上げる、三羽ほどのヒュケイが上空を旋回するように飛び回っている、周りには高い木がそびえたち木々の間からチラチラとヒュケイの姿が見える
「ホントに嫌そうだね」
「あったりまえだよ、あれを見ると悪いことばっかり起こるんだよね、前見た時も大事にしていた酒が瓶ごと割れたからね」
「んー? うん」
「大した事ないと思ってるでしょ?」
「特には」
「ハヤトには大したことなくても、アタシには死活問題なんだよ」
「そんな、酒ぐらいで」
「酒ぐらいぃ! 残念、残念だよハヤト、君とは同じ志を持った同志だと思ったからこそ、ミラとの時間を作ってあげようと苦心していたのに・・・」
あっ、マズイ
「同志です、同志ですよ」
「これからは二人の時間を作って上げるのをもうやめようかな」
「ちょっと待ってください、そんな事されるとこっちにとっては死活問題なんです」
「死なないんじゃないかな?」
「頼みます、何でもしますから・・・出来る範囲で」
「何でもって今言ったよね、よしならば今回の任務が終わったら一緒に飲みに行くよ」
ニヤリと笑う
この人結構ザルだから、付き合うのがつらいけど仕方がない。
「…わかりました付き合いますよ、だから、あの‥今日もお願いします」
「‥‥昨日したでしょ?今日もなの?」
「え、えぇ、まぁ‥‥へへへ」
「‥‥相当入れ込んでるね、まぁあっちも相当だけども」
移動の間ずっとニーアのご機嫌を取っていると、いつの間にか目的地の歪みに到着した、何かをしていると時間の過ぎるのがとても速い。
「タウロン頼むぞ」
頷き歪みに向けて探知魔法を当てる、実際に空間がぐにゃりと歪んだようになっていた。
タウロンが歪みに集中しているので、周囲の警戒は同じく探知を持っている俺になる、魔法を発動し周囲を警戒する、
「ハヤトは前こっから出てきたんだろ?」
「出てきたかどうかは知りませんけど、すぐそばにいたとか後で聞きましたね」
「ふーん、じゃーさ出てきたんならさー、入ったら帰れるんじゃね?」
あっ! そうならじゃぁ‥‥‥チラリとミラを見ると彼女はとても不安そうな顔をしていた
「いや、それはどうでしょうか、探知してみましたがどこにも繋がってませんよ」
一瞬期待したが
そうか駄目か、いや、でもミラと離れるのはちょっと嫌だな。
その時俺の探知に反応があった
「周囲に魔物反応! 数‥‥多数! 囲まれています!」
即座に戦闘態勢に入る隊員達
ドスンドスンと地面が揺れるような音を出しながらこちらに近づいてくる者達がいる、そして視界にはあの時と同じ魔物がいた
「敵オーガ数20以上!」
目視出来たと同時に、俺とタウロンがそれぞれ逆方向に『雷』魔法を放つ、魔物の真上に、同時に落とされた雷は眩いほどの光が放たれ轟音が轟く、叫びのような声が聞こえたが音で全てかき消された。
「召喚・ノーム!」
銃を所持した3体のノームが魔法陣から現れ、それぞれ、隊長・ブライ・ミラに付ける、オリバーは何だかんだでこの隊では一番の戦闘力を誇るので、その他の3人に付けた、陣形は俺とニーア、タウロンを中心にして他の4人が外を守る形になる、
今俺の持つ武器は弓、目標がデカいだけに当てやすい、しかし一射ニ射命中するがそれを物ともせず突っ込んでくる、しかし刺さればそれでいい、今放った矢は軍支給品ではなく俺が鍛冶で作った人工魔石を埋め込んだ矢、そしてその魔石には火の魔法で起爆の効果を付与してある。
ドーンという音が2回、見事に起爆し右腕と腹から下が吹っ飛んだ、それでもまだ動いているのが生命力の強さを感じる
召喚したノーム達もよくやっているようだ、パァーンと銃声が響き渡る、やはり銃は防具を装備していない魔物相手ではなかなかの効果を出す用だ、仕留められはしないものの確実に足止めはしている、隊長・ブライ・ミラの処理できる容量以上のオーガが近寄らないように牽制している。
「すまん! 一匹抜けた!」
オーガが突撃した相手はニーア、彼女は焦る様子もなく氷魔法で槍のような形の物を2つだし、オーガの目に向けて放つ
「ギャァァァァ!!」
ズシン!
視界を失ったオーガはそのまま倒れこむ、そこに頭向かってにタウロンが雷を放ち、動きが停止する
すかさずニーアが大型の剣を『収納』から出し
「よっ! と」
その重さを利用してオーガの首に刺し絶命させた。
オーガの数は途切れることが無く、倒しても倒しても『探知』魔法の外から補充されるようだった
◇
1時間ほどだったろうか、次から次へと現れていたオーガはやっとのことで打ち止めになったようだ、もう『探知』にも引っかからない。
「はぁ・・はぁ・・一体何体出てきたんだよ」
「・・100とかいたんじゃない・・・・タウロンあとで映像確認してね・・・」
「本当に後にしますよ・・・魔力切れで 眩暈がひどくて・・」
「こっちも もう出せない!! すっからかんだ!!」
オリバーのあのデカい声が鳴りを潜めている、珍しいよっぽど疲れているんだろう
「皆、・・・よく耐えたな、正直駄目かと思ったぞ」
「はぁはぁ、隊長が はぁはぁ それを言うんですか」
髪は乱れ肩で息をしているミラ、本当に疲れているんだろうけどミラが言うといやらしく聞こえる、今夜出来そうかな? 疲れてそうだから無理かな?
「今回は、召喚者のありがたみが分かったな」
俺の召喚獣ノームの姿をチラリと見て
「見た目はアレだが、的確にオーガの足止めをしていたからな」
「ああ、そうだな、魔法だって‥‥タウロンの倍以上は放ってただろ?」
「ええ、ほぼ休みなしでしたね‥‥」
「で‥‥何で休みなしで魔法放ってたお前が、なんでケロっとしてんだよ!」
ミラをエロい目で見ていたら話を振られてしまった、もっと目に焼き付けたかったのに邪魔しないで
「え? 疲れてますよ、でも俺は魔法と召喚だけだから、そんなに体動かさなかったし」
「ねぇハヤト、あんた立ち眩みとかは?」
「んー‥‥特には」
「マジか・・・」
皆がゆっくりと立ち上がり体に着いた埃や汚れを叩いて落とす、ここは魔物が出る場所であるから油断は出来ない
「‥‥タウロンすまないが、探知の続きを頼む」
「ええ、分かりました」
「なぁハヤト、お前歪みの探知出来ないのかよ」
「今の俺だと無理ですね、ぱっと見細かい作業みたいですから、学校に帰ったら覚えます」
「絶対習得できるって顔だな、俺たちがフラフラなのにケロっとしてるお前の顔を見ると、イラッ! とするんだよ、お前今回の任務が終わったら絶対に飲みに行くからな、そこで酔い潰してやる!」
「いいですよ」
「覚えるなら『潜伏・隠蔽』の魔法解除も覚えておけよ、今の所タウロンしかできないからな」
隊長がさらにリクエストを出す
「それも帰ったら覚えます」
これ見よがしにブライを見る
「くっそぉー余裕こきやがって!」
「ちょっと待って、任務が終わったらハヤトは私とサシで飲むって約束があるんだから!」
ニーアが異議を申し立て、わーわ騒ぎ出した二人、タウロンが集中しているから静かにしてた方がいいのでは?
「ねぇ、ハヤト本当に体は大丈夫?」
後ろからミラが声を掛けてくれた、自分も辛いだろうに俺のことを心配してくれる、なんてやさしい
感激してミラの方を振り向いた時
ミラがいた辺りから何かが飛んだ。
「敵襲ー !!!!!」
誰が叫んだかは分からないが、多分オリバーの声だったと思う、大きな体が俺とミラの間に割り込んだ、その瞬間
バキッ
と音がし空中にヒビのような物が入った、そしてその直後、間に割り込んだ人物は横に吹っ飛んだ、この時点で割り込んだ人物に俺が『付与』をした『耐壁』が割れた音だと気づいた。
その直後
バリン
音を立て、一撃で俺の『耐壁』突破された、衝撃が前方からあり、そのまま後ろに吹っ飛ばされる、そのまま木に衝突した
「がはッ!」
前と後ろからの衝撃で悶える、すると今まで誰もいなかった場所に人が現れた、隊長が言っていた『潜伏・隠蔽』の魔法をタウロンが解除したんだろう、潜伏の魔法を掛けていたとなると、相手は当然、敵国マシェルモビア。
今起きている現実に混乱しながらも、直ぐに立ち上がり『火』魔法を連射し牽制する、俺が魔法を放った相手は体勢を低くすることで躱し、肉薄する、躱しきれない魔法は刀を振り下ろす事で消し去る
「死ね」
冷たい声が聞こえ、振り下ろした刀を今度は俺に向かって切り上げた、すんでのところでのけ反り躱すが、兜のつばに当たる
キン!
掠った程度だったが、衝撃は凄まじく顎の留め金が外れ兜だけが大きく飛ばされた
直ぐに体制を! と思ったが、すでに刀を振りかぶられている、もうこうなるとどうすることも出来ない、魔法も召喚獣ももう手遅れだ、
藁にも縋る気持ちで収納から、日本刀の雷雲を出し、そのまま相手の刀に向けて切りかかる、強度でいったら相手の振り下ろす刀にはかなわない、しかし、雷雲は切れ味に特化した刀、打ち合った瞬間に刀を引く様にして横に切る。
キン!
と高い音を出し、相手の武器は真っ二つに割れた、攻撃の手段の一つの武器を壊された相手には隙が出来る、相手は自分の武器を破壊した刀で、次の攻撃が来ると思っているだろう、だからそれに対応する行動するはず、しかし、相手の目の前には既に銃の弾丸があった
パァァァン!!!
乾いた高い音が周囲に響く、目の前にいるマシェル兵の首から上は無くなっていた、少しの隙さえあればレールガンを放つことが出来るようには訓練してある、これで一人倒した。
休む間もなく右から飛んでくる2発の魔法、それを土壁を作り上げ防ぐ、飛んできた魔法は『土』魔法だったようで、壁に当たった瞬間相殺され、壁ごと消滅する。
あ、終わった‥‥
俺の作った壁を相殺された時、敵兵は既に俺に向け刀を振るっていた。
この世界に来て7年の月日が流れた、あの時助かった命は、どうやらここで終わりのようだ‥‥。
走馬灯
死ぬ間際に見るという、儚い一瞬の夢。ほんの一瞬、それは本当に見ることが出来たのどうかは知らない、でも遠い昔の事が脳裏に浮かび上がった気がした。
俺もこれで‥‥
軍に入った時から覚悟はしていた。でもこんなに突然に終わりが来るとは思ってもいなかった。
兜が飛ばされた今、頭を守る物はもう無い、ゆっくりと見える刀の軌道を、残されたわずかな時間目で追っていたが‥‥
ストン
と、体から力が抜け、目の前が白く染まる、その直後
シュン!
頭の上を刀が通り過ぎた。
え? 躱せた? ッ!
「来い!」
その言葉だけで黄色の魔法陣が現れ、攻撃を躱されたマシェルモビア兵に向け、光り輝く角が突き上げられる。
胸深く突き刺されたマシェルモビア兵は、胸から上を吹き飛ばされ、残された下の部分も宙を舞った。
俺が刀で切られる瞬間、ノームが消滅されられたらしく、そのせいで体から大量の魔力が消失してしまった。
だがそのおかげで敵兵の攻撃を結果として躱す事が出来た
「ハヤトぉ! 逃げろぉぉぉ!」
誰が叫んだかは分からない、だが声のした方では、味方と思われる兵士に攻撃を受ける瞬間だった。
「行け! コスモ」
俺の声に応えて走り出す、味方兵士を攻撃しようとしていた敵兵は、不意を突かれ、コスモの攻撃で二人ほど息絶える、上半身をいっぺんに吹き飛ばされ、声を出すことも出来ないで爆散した
相手の返り血で真っ赤に染まったコスモが、3人目を狙ったとき、狙われた兵士とその後ろにいた兵士が、それぞれ両端に飛びのきながらコスモの足を切りつけた、
「ヒヒーン!!」
前足を切られたコスモは踏ん張れずそのまま勢いよく倒れる、そこへ後ろからコスモの首めがけ刀を振るうもう一人の兵士、首を落とされたコスモは光の粒子となって消えた、コスモが直線的な攻撃しか出来ないのが分かってるようなよけ方と対処の仕方だった、そして召喚獣がやられたことによって俺自身にも負担がかかる、目玉が裏返りそうなくらい意識が飛びそうな所を何とか堪える
マズイ! 逃げるための足が無くなった
召喚者の絶対の条件として、何が何でも逃げなければならない、この部隊に配属された時もカナル隊長にまずその事を最初に言われた
『いいか? ハヤト、もしもこの部隊が全滅の危機に扮した時、お前だけは逃げろ、俺達の事は考えるな、お前だけは必ず逃げろ、これは命令だぞ』
逃げる
という言葉が脳裏に浮かんだ時、足元に何かが当たっているような気がした、条件反射で足元を見たとき、足に当たっていたのはミラの顔だった、ミラが倒れていると思ったが
ミラの首から下は、付いていなかった。
「あ‥‥」
さっきミラのいる辺りから何かが飛んだと思ったが
「ミラ?‥‥」
当然反応が無い
‥‥‥‥こいつら? 今、俺に向かってきてるこいつらがやったのか?
こいつらがミラを‥‥ミラを‥‥‥‥
・・・
・・
「お前ら全員ぶっ殺してやる!!!」
向かってくるマシェルの兵に吠えた、腹の奥底から怒りが湧き出てくるのを感じる、こいつらだけは一兵たりとも生かしては返さない。
一度だけ、たった一度だけ
隠れて召喚したことのある召喚獣は6属性の攻撃魔法を操り、その攻撃力は俺の比ではなかった。 人前では召喚するなと念を押されたが、今、ここにいる全ての敵兵を皆殺しにする為、召喚する
「召喚! 『ヤタ』」
空中に大きな魔法陣が浮かび上がり、その魔法陣からは6色の透明な色をした巨大な召喚獣が現れる。
その召喚獣は『凶鳥・死鳥』と呼ばれ両軍の兵に恐れられていた、出現した瞬間、そこにいた全ての兵士たちは、敵、味方共に動きを止め、目を見開きその召喚獣を見上げた
「やれ!」
ここにいる誰もが体験したことのない光と音、そして衝撃が大地に降り注いだ、ある者は焼かれ蒸発し、ある者は氷の刃で貫かれ、そしてある者は押しつぶされる。
俺の目の前は魔法の放つ光によって白く染まった
‥‥時間にして30秒ほどだろうか?
激しい光と轟音が鳴りやんだ時、ヤタは既に魔法陣に帰っていた。そして、そこにマシェルモビアの兵士は立っていなかった。
「うわぁぁぁぁぁ!」
少し離れた、射程範囲外にいたであろう3人のマシェルの兵は、何とか生きながらえたようで、悲鳴を上げて逃げ出した。
「誰が逃がすかぁぁぁぁ!」
「ひぃぃぃ!」
ミラを殺した者達を、誰一人として生かしてはおけない
「お前達は絶対に殺す!」
敵兵に向けた怒りで視界が狭くなったのか、顔の周りに何かが纏わりついてくる物を感じた、「ソレ」は段々と顔全体に広がり視界の部分黒く覆う、しかし、周りはしっかり見えていた。
そして相手に飛び掛かり、切り刻んでやろうと思ったが、何故だかそこで
ここからでも奴を『喰ラウ』事が出来そうだ
そう感じた。
逃げる相手に向けて「ソレ」を飛ばそうとする、同時に顔に纏わりついていた物が剥がれ、無数の赤黒い球体のような「ソレ」が敵兵に向かって行き、その赤黒い物当たった瞬間、一人が完全に姿を消した。
「ソレ」は残りの二人の兵士を追いかけ、直撃、一人が下半身を失い、その場で崩れる、もう一人は左手を失ったが、そのまま悲鳴をあげ逃げ去った。
追おうと思ったが、2体の召喚獣を失った事で体がもう動かなかった。
「ひとり殺せなかったか‥‥」
無数の赤黒い球体が通った後は、人はもちろん、土や木など何かにえぐり取られたかのように消滅していた。
足元に目を向けると、やはりそこにはミラの首があった。
夢ではない、現実がここにある。
ミラの首を拾い抱きかかえると、意外と重い、少し汚れてはいるがとても細くキレイな髪をしている、髪に付いた汚れを優しく撫でるように取り払う。
悲しいという気持ちが沸かない、自分でも驚くほど冷静だったと思う、多分まだ理解出来てないのだろう。
「そうだ‥‥他の隊員たちは」
辺りを見回すと敵の死体が散乱している、黒焦げになっている人の形をした物、氷の杭が体中に突き刺さっている物、肉片がそこら中に飛び散っている物もあった、地面はえぐれ、クレーターのようなものがあちこちに出来ていた。
その中に不自然に土で出来た壁が6枚立っていた。
衝撃から守る為にヤタが作った土の壁だ、その中にはミラの切り離された体もある、そして、そこには明らかに生きている人影が2人。
「ニーア、タウロン!」
その言葉で二人はビクリ! と震える
「二人は無事だったんだね」
どうやら怪我をしているようだ、二人に近づこうとすると‥‥
「いやぁぁぁ! 来ないでぇぇぇ!」
「え?」
いつも明るいニーアが、今まで見たことのない本当に恐怖した顔をしていた、顔からは血の気が引き、目を見開き体が大きく震えていた。
ヤタの事だろうか? でもニーアは俺を見て怯えている、どういうことか分からず、タウロンに聞こうと彼の方を見た、目が合ったタウロンは後ろに後ずさる、彼も同じく恐怖した顔だった。
「タウロン?」
その怯える彼の口から出た言葉は一言だけ
「グース‥‥‥‥」
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