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部隊の生き残り ①
しおりを挟む軍本部の廊下を小走りで走る男がいる
だから止めたのに! こうなる事は予想出来ていたはずなのに
マシェルモビアとの戦いのため、今後の行動に頭を捻っていた。ハルツール軍参謀のタクティアは、急遽呼び出されることとなった。
呼び出された原因は、大陸東側中央にある敵軍事拠点、その破壊任務を遂行していたダブ小隊の壊滅という知らせが届いたからだ。
しかしそれだけなら呼び出されることは無かった、ただ今回は違う、ダブ小隊の任務遂行のカギを握る人物として、現在、世界でたった一人しか使えない『消滅』の魔法を使える人物が、その中に含まれていたからだ。
救援信号があったのはつい先ほど
『ダブ小隊ほぼ壊滅・任務遂行不可能・救援求む』
この信号で送られてきた文章はこれだけ、しかしこれだけでも数人は生きていることが確認できる、そして今現在追撃を受けていることも分かる、ただこの文章だけでは破壊の一族の、最後の一人まで生きていることは分からない、そしてその後は何の音沙汰もない、つまり相当切羽詰まった状況なのか、それとももう既に手遅れなのか?
タクティアが会議室の前まで来た時、既に中から怒声や罵声が聞こえてきた
ガチャリとドアを開けると
「だから言っただろう! 最後の一人だったんだぞ! どう責任を取るんだ!」
「それは貴方だって最終的には納得したじゃないですか!」
「そもそも君が言い出さなければ!」
「それは私ではない!」
先ほどまでわが国の最大の抑止力を失うと焦りを感じていたタクティアは、この部屋の光景を見てうんざりし、失望する。
互いに責任の擦り付けをし、誰一人責任を負おうとはしない、ただ今はそれどころじゃないはずだ。
タクティアはうんざりしながらドアを閉める、しかしすぐさまドアが開き、タクティアにドアが当たる
「おっと、すまない」
「あっ、いえ、こちらこそすみません」
会議室に入ってきたのはゴルジア・サト首相、いつもなら軍の作戦会議などには無関係の首相だが、今回は大きな問題なので首相も参加したのだろう、参加したと言っても首相は軍事の事には疎く、いてもいなくても変わらないのだが、首相は確実性というのを頭に置いており、どんなに金がかかっても、どんなに労力を使ってでも確実に物事をこなす事を好む。
最初に空間の歪みを確認した時、この国で一番の『探知』魔法の使い手である、主席イディの派遣を提案したのも首相だった。
軍が対応に追われている時、何故だか首相の提案はすんなりと通ることが多々ある
ただそれは軍の人間が、自分で責任を取りたくないためだろうけども‥‥
「廊下まで聞こえているぞ! 何をしている、今はそんなことをしている時なのか!」
首相の一喝で会議室は静かになった
「それで会議はどこまで進んでおる?」
「いえ‥‥まだ状況の説明を始めたばかりです」
「ふぅ‥‥ではすまないが最初から説明してもらえるだろうか」
「わかりました」
首相が席に座り、タクティアも席に着いた
会議室の中央に映像が映し出される、場所は今回の任務が行われるはずだった敵の軍事拠点、その地図が映っていた
「まず敵の拠点には一個大隊の戦力があり、更に竜翼機の存在も確認されています、周りの木々は1㎞に及び伐採されており‥‥」
タクティアはこの穴だらけの作戦にため息が出る
大隊ほどもある戦力に対して、こちらも大隊で挑んだ。
相手が大隊規模ならその3倍は必要だろう、しかもそれを分散させての波状攻撃、そもそも敵兵は大隊規模と言っても正確な数字まではっきりしていない、
大隊規模の兵士がいるだろうとの予測で行動している、尚且つ遮蔽物も無くどうやって近づくというのでしょう、敵が竜翼機をもっているのが分かっているなら、もし『破壊の一族』が見つかった時のためにこちらも竜翼機を後方に待機させておくべきでしょうに。
この作戦が発表された時タクティアは猛反対した、しかし、何故だかこの作戦は賛成多数で決行されてしまった。
『破壊の一族』が使う『消滅』の魔法の使用時の問題などを理解していないのか? そして一族の重要性は? 去年だって一族の内二人が戦死している、今回だって‥‥最後の一人を失ったら我が国の損失はどれほどになるか‥‥その結果分散した部隊は各個撃破、挙句の果てに『破壊の一族』の場所を特定されてしまった。
軍の内部に内通者でもいるんでしょうか‥‥
映像を見ながらそう考えていた。
「‥‥そして救援信号はこの場所で出されています、敵拠点の南東の方角‥‥」
説明はまだ続いている、タクティアは実際の地図と照らし合わせ、この状況ならどう自分は逃げるかを頭の中で計算する、そして、どう助けるかも同時に考える、しかし‥‥
駄目ですね‥‥どう考えても不可能に近い、一番近いキャンプ地でも時間がかかり過ぎる、例え竜翼機で向かっても相手だって竜翼機を出しているんです、それに無事に回収できるかも分からない、もしダブ小隊の生き残りがいたとなれば、間違いなく森の深い場所を進んでいる、そんな所では竜翼機も着陸出来ない、もし着陸出来たとしても、そこを敵の追ってに襲われでもしたら‥‥問題は機動力と攻撃能力この二つが‥‥!
‥‥‥‥あ!
タクティアはふと頭の中に報告書が浮かび上がった、とある部隊の生き残りをたった一人で救助に向かい、一晩で到着するほどの機動力を持ち、マシェルモビアの兵20人を一人で壊滅させた人物
あー、あ あ あー、彼がいましたね~
無事に任務を遂行できるかどうかは別として、可能性としたら彼しかいないと確信する
タクティアが色々と思案している中、会議は既に説明が終わり、これからどうするかを話し合う段階に入っていた、しかし、責任を負いたくないので誰一人として発言をしない、そこへゴルジア首相が口を開いた
「ならばこちらもまた大隊規模の軍を送り、救助に向かうのはどうであろうか?」
首相が発言したことにより、他の軍幹部もそれに同意しようと‥‥
「待ってください」
発言したのはタクティア、皆が彼の方に注目する
「それでは遅すぎます、到着する前にもしダブ小隊の生存者がまだいたとしても手遅れでしょう」
「ふむ」
ゴルジア首相は黙ってその発言を聞いていた
「今回必要なのは圧倒的な機動力、そして追撃してきた敵を撃退できるであろう破壊力をもった人物が必要です」
「機動力と言うことは竜翼機を出すのか?」
すこし太り気味の幹部が聞いてくる
「いえ、竜翼機では無理でしょう、マシェルモビアでも竜翼機は出してきています、それに救助中に敵の陸戦部隊に狙われたらひとたまりもありません、敵は必ず追撃部隊を出してきているでしょう」
少し間をおいてからタクティアは首相に目を向ける
「この救助に適した人物が一人だけいます」
少しの沈黙
この一言で、会議室の全員が誰の事か分かった
「ま、まて! それはイカン! 彼は竜騎士だぞ! そんな敵地のど真ん中に一人で行かせるなど‥‥」
首相は明らかに焦りを見せる
「首相‥‥彼は竜騎士ではありませんよ、ただの召喚者です、政府もそして軍も、彼を竜騎士だとは正式に認めていません」
「ぐっ! ‥‥し、しかし、たった一人で召喚者を行かせるのは」
「彼の遂行した任務の報告書を読ませてもらいました。たった一人で部隊の生き残りを救助に向かい、無事に救助に成功したり、たった一人で村に駐留したり、大隊規模ではないと不可能な変種の集落を壊滅させたり。それに‥‥一人で20人ほどのマシェルモビアの兵を殲滅したりと、その内のいくつかは首相がご命令されたと聞きましたが?」
「そ、それはそうだが、しかし、彼は召喚者だ」
「知ってます、ですが今回救援信号を出して来たダブ小隊には『破壊の一族』最後の一人がいるんです、『破壊の一族』と召喚者‥‥どちらが重要でしょうか?」
「それは‥‥もちろん一族の方だ‥‥、だが! この広い場所をたった一人でどうやって見つけるというんじゃ! 場所が‥‥」
首相は唾を飛ばしながら激高するように必死で反対をする
「場所は大体分かっています」
「なに?」
「敵は竜翼機を飛ばしています、空から追跡出来るようにあわよくば攻撃もするでしょう、だから逃げるのなら森の深い場所を進むはずです、なので‥‥」
映像のそばまで近寄り指をさす
「救援信号を発信した場所は敵の拠点から南東の場所ですが、ここから先は開けた場所が続いています、なので、ここから南西の方角、森の深い場所を進んでいるでしょう、救援信号を受けた時間、そして現在の時間を計算すると大体場所は‥‥」
タクティアは一点を指さし
「現在はここにいます」
皆の方を振り返る
「なので召喚者のウエタケ ハヤトを先行させ、その後にこちらの竜翼機を━━」
「ま、待て待て! そう言うが、一族の生き残りが生きているとはまだ━━」
「死んでいるとも‥‥限りませんよ」
「それに彼はグラースオルグです、あの時の映像は間違いなくマシェルモビアでも流れたでしょう、それが今回彼の味方をしてくれるでしょう」
ゴルジアは苦虫を嚙み潰したような顔をしていた
◇◆◇◆◇
『ひどいとおもうじゃろ?』
ゴルジア首相は通信機でそうぼやいていた
『今まで散々ほったらかしにしておいて急に頼ってきたり』とか、『敵地の拠点に一人で行かせようとする軍が~』とか
正直、「お前もな」とは少し思ったけど、大事な金づる‥‥もといスポンサーなので
「そうですね」
と、柔らかく返しておいた、軍の言うことも分かるし、首相の言っていることも分かる
俺しか間に合わないというなら、行くしかないだろう、ただ心残りが‥‥
出発が決まった時に、丁度オヤスから「クオルシゼリー出来ましたよ」と連絡があったこと、楽しみにしていたのに非常に残念だ。
だだね‥‥
「召喚者は守られる立場だと思うんだけど、敵地にたった一人で行かせられるのってどうなんだろ?どう思うコスモ」
「ヒヒン」(知らんがな)
契約が出来なかったせいでご褒美がもらえず、少しだけ不貞腐れたコスモに乗って、救援を待つ部隊の生き残りがいると思われる場所に急行した。
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