異世界陸軍活動記

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 壁に向かい迫りくるオーガ、これほどの大群は、今戦っているハルツールの軍人達にも経験が無いことだろう。

 オーガの攻撃はほぼ砦の北側に集中している、ハルツール軍はその後来るであろうマシェルモビア軍の攻撃に備え、砦の四方に兵を分散させている、だが、いくら大群のオーガと言えどもこの程度では壁に張り付く事も出来ないだろう、他の兵士達はどう思っているか知らないが、俺はそう思っている。

 遠距離の攻撃方法を持たない魔物など怖くは無い、変種でもなく、ごく普通のオーガ。
 俺の魔法とそれを補う魔力があれば、ただの準備運動にしかならない‥‥‥

 そう思っていた



 おかしいと思ったのは、オーガとの戦闘が始まってすぐの事だった。
 砦から放たれた数多の魔法に体を焼かれ、砕かれたオーガ達は砦に到達する前にその場で息絶える、ここまでは普通だった。
 
 しかしその後ろにいたオーガは、仲間の死体を担ぎ、それを盾として使用したのだ。 
 更にオーガ達は投石まで開始した、流石に魔法よりも射程は短く、壁の上にいる兵士達には届く事は無い。しかし、壁の下にいる兵士達からして見たら、放って置く事が出来ない攻撃だ。魔力で守られた鎧を付けているとはいえ、その衝撃までは吸収できない。

 そして戦闘が始まってからほんの数分後、ハルツール軍は信じられない光景に動揺する

「隊長、オーガが隊列を組んでいるぞ‥‥‥‥」

 かつてヨーロッパで使われていた戦術、敵砦などから放たれる弓などを防ぐため、密集し盾を亀の甲羅のように構え突撃する戦術
 
 オーガは盾の代わりに仲間の死体を使い実践していた。それでもやられてしまったオーガは後方から来た別のオーガにより盾として使用され、砦との距離を詰めてくる。

 普通ではあり得ない行動をするオーガ

「冗談だろ! なんだこのオーガは!?」
 驚いているのはエクレールだけではない、それを見た全ての兵士が驚愕していた

「落ち着けエクレール、驚くのは後にしろ、今はオーガを殲滅することに専念するんだ」

「わ、分かった!」

 間違いなくオーガはマシェルモビアが関与している。だとしたら芸の一つや二つ教えていてもおかしくはない。
 それよりも、この後来るであろう3万の軍団が控えているのだ。

 ハルツールの兵士達がオーガの隊列に魔法を叩き込むが、盾替わり使っている仲間の死体が邪魔をし、生きているオーガに攻撃が届かない

「隊長駄目だ! 魔法が届かないぞ!」

「ああ」
 なら魔法の種類を変えるだけ

「喰らえ、たこ焼き四尺玉!」
 
 溶岩を『土』魔法で包み込んだ直径1メートル越えの玉を、オーガの頭上目掛け撃ち込んだ。そしてオーガの頭上に迫った時、続けて『土』魔法をたこ焼きに向け放つ
「よっ!」

 追加で放った『土』魔法は見事にたこ焼きに当たり、その外皮を相殺する。
 囲む外皮を無くした中身は、まるでしだれ花火のようにオーガの頭上に降り注いだ。直接攻撃する魔法と違い、液体特有の動きで盾にしている死体の隙間から流れ込み、生きているオーガの体に到達する。

「やったぞ! 隊列が壊れた」

 散開するオーガ目掛け、一斉にハルツール軍の遠距離攻撃が集中する、ズーン、ズーンと地響きのような振動が壁を伝わり、空気を伝わり、俺がいる壁の上にも遅れてやってくる

「俺がオーガをバラすから、エクレールも皆と一緒にバラけた方を狙い撃ちして。それとこれを使って」
 エクレールに俺が持っている弓と矢を渡す

「この後マシェルモビアが来る可能性が高い、これで魔力の節約を」

「助かる!」
 弓と矢を受け取ったが、俺の渡した矢じりを見て一瞬だけ不思議そうな顔をしたが、直ぐに意識をオーガに移した。

 さて、俺は他の隊列を組むオーガに対し攻撃を開始する、砦に一番近づいている隊列に向け、たこ焼きを放つ。
 今更ながら、このたこ焼きと言う名前‥‥もうちょっとカッコイイ名前にすべきだったと後悔する。
 見た目と中身が熱いと言うだけでこの名にしたけど、他の隊員達にはもうたこ焼きで定着しているので今更変えられないし‥‥‥、この世界の人達が実際のたこ焼きを見たことが無いのがまだ救いかな? それに早口で言ったらそれっぽい魔法に聞こえるし。

 オーガの頭上に到達した時、『土』魔法で外皮を相殺し中身がオーガに降り注ぐ、溶岩を体に浴びたオーガは隊列を維持できなくなり、散開した。
 すると一斉に散開したオーガに向け、魔法が飛び交う

 エクレールもオーガに向け矢を放った
「くっ! 外したか」
 エクレールが放った矢は、ギリギリオーガを逸れ地面に突き刺さったが

 矢が地面に当たった瞬間、矢が到達した地面を中心に炎が舞い上がり、その場にいたオーガ2体が炎に体を焼かれる。

「隊長! 隊長! 何だこの矢は!」

「えっ、何? こっちは忙しいんだけど」
 4つ目の隊列を組んだオーガに向けて魔法を放とうとした時、エクレールが必死になって俺の肩を揺さぶる、手元が狂うから止めて!

 魔法を放ちながらエクレールに矢の事を説明する、そう言えば説明してなかった。エクレールに弓の指導をしてもらい、何となく一生懸命弓の練習をしていた時の感覚は掴んだが、命中率はどうか? となった時、そんな簡単に腕前が上がる訳でもなく、的を外しまくった。

 そりゃあそうだ、ウチの高校の弓道部員だった中本さん、彼女は3年間弓道に明け暮れていたが、3年たっても的に当てられるのは10本中1本だった。
 中本さんが下手なのかもしれないが、必死に練習していた中本さんと違い、弓は召喚者のたしなみだから‥‥という理由で何となくやっている俺が、そうそう上手くいくわけではない。
 当てようと思ったら、下手な鉄砲理論で矢をばらまくしかないのだ。

 だけど、それだと勿体ない。という事で矢じりを人工魔石にし、色々な属性魔法を付与して、矢が刺さった場所に範囲攻撃を加えた方がいい

「━━という事だよ、矢の一本一本に色々な魔法が付与されているから、少し外しても大丈夫だよ」
 本日7回目のたこ焼きを放ちながら説明をした。

「矢よりも人工魔石の方が勿体ないだろ」
 エクレールはそう主張するが、俺は金銭的に勿体ないと言っている訳ではない、矢を外す事の労力に対して勿体ないと言っているのだ

「ほれ、休んでないで次々撃って」

「言われなくても!」
 散開したオーガに向け矢を放ち、今度は見事に矢がオーガに当たる

「よし!」
 矢自体にオーガを一撃で殺すような攻撃力は無い、運よく急所に当たれば倒せるが、それ以外だとせいぜい大怪我だろう。

「隊長隊長!」

「えっ!? 何? だから危ないってば」
 またもや肩を揺らされた。だから普通に呼んでも聞こえるって

「この矢はどうなってるんだ!? 魔法が付与されてない矢が当たったら一撃でオーガが倒れたぞ!」
 急所でもない場所に当たったにも関わらず、オーガが倒れた事に驚いている

「んー‥‥多分『重力』が付与されてたんだろう、当たった場所からズブズブと体の中に入って行ったんだろうね」

「そ、そうか‥‥ふ、ふふふ」

 エクレールが笑っているような声を出していたので、気になってそっちの方を見たら、本当に笑っていた。
「‥‥ちょっと、何で笑ってるの?」

「自分が『氷』以外の魔法を使っているみたいでな、何となく楽しくなってきたんだ」

「ねぇ、ほら、他の兵士達も頑張っているんだから、エクレールも手を休めないでよ」

「ああ、分かっている、分かっているさ、‥‥ふふっ、次はどんな魔法が出てくるんだろうな」

 今現在、この砦にいるハルツール軍の兵士の中で、ただ一人笑顔のエクレールは、まるで何かの抽選でもしているかのように、矢筒から1本取り出していた。

 ズーン ズーンと魔法による爆発が地響きのように伝わってくる中、俺は隊列を組むオーガに魔法を当て続け、他の兵士達も俺が魔法を当て散開したオーガに集中して魔法を放った。

 ズーン ズーン

 音がどんどん大きくなり、魔法による攻撃の激しさが音で伝わってくるようだ

 ズーン ズーン

「ん?」
 すると隣にいたエクレールが手を休めているのに気が付いた、矢が無くなったのか?

「どうしたエクレール、矢が無くなったのか?」

 エクレールは目を見開き、真っすぐ前を見つめ
「‥‥‥‥隊長‥‥私は目がおかしくなったのか?」

「目でも負傷したのか? だったら回復魔法で━━」
 そう言おうとした途中で気づいた、いや‥‥最初は気づかなった。

 違和感

 それが最初、それを見た時感じた事だった。

 木の上からオーガの顔がのぞいていた。

 ズーン ズーン

 音と振動が段々大きくなり、他の兵士達もそのオーガに気づき、気づいた者から順に魔法攻撃を停止した。
 見ただけでは理解できないものがそこにはあった。

 オーガの顔がある場所の木々が次々に倒れ、そして、その姿を現した。
 それを見た全ての兵士が攻撃の手を止めていた

「エクレール‥‥‥‥‥あれ、何?」

「‥‥‥‥オーガ?」

「あれが?」

「隊長はオーガの変種を見たのだろう? なら‥‥‥‥それだろう」

「あんなにデカくなかったよ‥‥‥たしか」

 生い茂る木々から出て来たのは紛れもなくオーガだった、だが、その頭部は俺が今いる壁と同じ場所にあるように思えた

「何をしているんだ?」

「ほら、皆にも見せて上げようと思って」
 撮影用の魔道具を取り出し、胸にかける。記念に撮影しておこう、滅多に見られるもんじゃない奴だろう、アレ。

「そうだな、こんなの滅多に見られないだろうし、喜ぶだろう」

 俺もエクレールも、目の前の現実が受け入れられず、逃避していた。それは他の兵士達もそうだったろう

 完全にハルツールが手を止めていた時だった。
 不意に巨大なオーガの体が沈んだと思った瞬間、オーガはその巨体からは想像できないほどのスピードで壁に突っ込んできた。

 

 あ、走った

 そう思うしかなかった。そして‥‥‥‥

 ドガァァァァアン!!!

 隊列を組んで砦に迫っていたオーガ達を蹴散らし、その巨体から繰り出される右腕で砦の壁を一撃で破壊した。
 大轟音が鳴り響き、爆風と衝撃がハルツール軍を吹き飛ばす、更にすかさずまだ残っている壁に対しその巨大な拳を振るう

「エクレール!」
「あっ!」
 彼女を抱え、壁の上から飛び降りた。

「コスモ!」
 現れたコスモの右前足に掴まる

 ドガァァァアン!!!!

 今まで俺達が立っていた場所がはじけ飛ぶように破壊される

 『耐壁』『放出』
 飛んでくる瓦礫を防御し、破壊による爆風を押し戻す、それでも威力は抑え込むことが出来ず、大きく吹き飛ばされた。一人乗りのコスモに二人も引っ付いているのも原因だろうが、投げ出されるように着地した。

 ドサッ!!
 
「うっ━━っ、エクレール無事か!?」

「ああ、なんとかな」
 エクレールも無事に降りれたようだ
  
 今まで俺達がいた壁はほぼ跡形もなく吹き飛んでいた、あそこには俺達の他にも兵士がいたが‥‥‥あれでは助かるまい

「エクレールは砦の南側に行け、撤退の合図があったら俺に構わずそのまま撤退しろ!」

「隊長はどうする気だ!」

「あれ」
 巨大なオーガを指さし
「仕留めてくるから」

 あのオーガがいる以上、撤退は難しいだろう。あの壁に突っ込んでくる時のスピードは尋常では無かった。もしあれが追いかけてくるとしたらこちら側の被害はかなり出ると思われる。

「だったら私も行こう」

「駄目だ」

「ッ‥!!」

「これは命令だ。北側の壁が崩れた今、この後来るマシェルモビアの兵には太刀打ちできない、俺は一人でも撤退出来る、むしろ一人の方が撤退しやすい、だからエクレールは砦の南に急げ、もうこの砦は終わりだ」

「‥‥‥‥」
 エクレールは返事をしなかったが、俺はコスモに乗り、巨大なオーガの元に飛び立つ

「いいな? 命令だぞ!」
 再度忠告し、その場から離れた。


 巨大なオーガは大きな腕を振り上げ次々と壁を破壊していく、その際足元にいる普通サイズのオーガには目もくれず蹴飛ばしたり、踏みつぶされたりしていた。
 ただしそれはオーガに限った話ではない、ハルツール軍の兵士も同様だ。
 崩れた壁の隙間に、兵士の物と思われる鎧らしき金属がいくつも見える、あれではもう助からない‥‥‥‥

「竜騎士!」
 下の方で呼ぶ声がする

「ん? リクレク中隊‥‥」
 そのまま降り、中隊長の少し上で停止する
「無事でしたか」

「俺はな、だが隊員の半数がやられた」

 半数と聞いてカップル先輩の事が気になったが‥‥‥いた、どうやら無事だったようだ

「お前も壁が破壊されたのによく無事だったな」

「寸前で飛び降りましたから」

「そうか‥‥‥お前も無事で何よりだ」
 カシ・ヒタミア中隊長は少し一息ついた後
「お前にアレを頼めるか?」
 目で大型の巨人を指した。

「そのつもりです」
 
「すまない‥‥、どうやらアレには魔法が効かないみたいなんだ。刃も通らない、それと‥‥」

「それと?」

「アイツは魔法を使う」

 魔法? まさか

「お前は見てなかったかもしれないが、俺達がいる場所からはハッキリ確認できた。拳に『火』魔法をまとわせ壁を殴っていた。破壊された時の爆発が大きいのもそのせいだ」

「‥‥分かりました。実際見てみないと納得は出来ませんが、気を付けます」

「頼む、リクレク中隊はお前の援護に当たる、とは言っても気を引く事位しか出来ないから期待はするな」

「はい」
 
「どんな固い魔物でも、急所は人とあまり変わらない、ここは定番の目を狙え!」

「了解しました」
 なるほど定番だ、とりあえず目を潰すか

 コスモでオーガの顔の高さにまで上昇し、一気に槍を叩き込むことにする。
 
 目を狙うという事は、オーガの顔が真正面になるという事、それはオーガの視界に入る事になる。
 槍を掴み投げる体勢に入った瞬間、筋肉が詰まっているであろう太い腕が、俺目掛けて振り回して来た

 う゛っ゛!!

 コスモの判断で緊急回避され、余りの急な動きに変に体を捻ってしまった。

「いってぇ‥‥、コスモ助か━━」

 回避したと思いきや、すぐさま巨大なオーガは俺とコスモに対し追撃してくる、コスモはそれを急旋回し何とか回避し続けた。俺は目まぐるしく変わる風景に付いて行けず、しがみついているだけだった。
 それでも耳や肌から伝わる感触はしっかりしている。

 風がぶつかるように振り回される腕の音は、当たったら即死だろうと思わせるには十分だった。そしてその腕が通過した後に来る熱、中隊長が魔法を使っていると言っていたが、間違いない、腕に魔法を纏って攻撃している

 コスモはオーガから距離を取ろうとしているが、オーガは執拗にコスモを狙って来た

 ハエになった気分だ

 少しずつ体勢を持ち直して来たコスモに、俺の視界も安定してくる

「ちょっとは大人しくしろよ!」
 魔法で氷の槍を作り出しオーガにぶつける、的も大きく苦も無く当てる事が出来たが、まるで地面に落ちた雪がそのまま溶けて無くなるように消えていった

 本当に魔法が通じないのか‥‥、だったら溶岩で‥‥駄目か、リクレク隊が地上にいるから無理だ。

 援護の為リクレク隊は地面から攻撃をしている、溶岩を流してしまったら地面にいるリクレク隊にも当たってしまう、それ以前にオーガに通用するか分からない

「やっぱり目を狙うしか‥‥、コスモ、一旦降下してからアイツの顔の前まで急上昇しろ」

 命令されたコスモはオーガの腕を掻い潜り降下、その時『土』魔法で人の形をした人形を作り出し

 『幻惑!』

 土人形に『幻惑』を掛け、その瞬間急上昇をした。オーガにどう映るかはオーガ次第だが、行けるか!?
 オーガの顔の前に到達した時、オーガは一瞬だが『幻惑』を掛けた土人形に目を取られた

 今だ!

 威力と速さをを増す為、持っていた槍と『雷』魔法を同時に放つ
 放たれた槍は『雷』魔法に誘導されるようにオーガの眼球めざし突き刺さった。槍はオーガの左目に当たり爆発を起こした。

「やったか!?」

 ぐらりと体を揺らすオーガ、その左目には槍が刺さり血が流れて━━は、いなかった。

「チッ!」

 オーガの顔を見て思わず舌打ちをしてしまう、オーガは当たる直前瞼を閉じたのだ、しかも血の一滴も流れてはいない

 瞼なんて体で弱い部分の一つだろうに、それでも何ともないのかよ!

『ウウウウウウウ‥‥ウ゛  ウ゛ワ゛ァァァァア゛ア゛!!!!!!』

 唸り声を上げたオーガは、俺とコスモを睨みつけ、理性が飛んでしまった獣のように襲って来た。

「コスモ逃げろ! 早く!早く!」
 コスモを急かし、オーガを背にして逃げる。それを追いかけようと腕を振り回すするオーガだが‥‥

「なんてな!」
 逃げると見せておき、反転、もう一度目に向かい槍を放つ

 誰が逃げるかよ!これで決める!

 完全に意表を突いた攻撃は今度こそオーガの目に向かうと確信した、だが完全にとらえたと思った槍はオーガの手のひらで掴まれてしまった。
 腕を振り下ろした直後にもかかわらず、無理やり腕を戻し槍を掴んだのだ

「なんちゅう反射神経」

 怒り狂ったオーガは、壁の事はもういいのか、完全にターゲットを俺とコスモに移した

 吠えながら襲ってくるオーガに、コスモも考えているのか通常のオーガがいる上を飛び、巨大なオーガに踏みつぶさせるよう飛ぶ

 マズイ‥‥詰んだ

 この巨大なオーガに対抗できる召喚獣はヤタしかいない、しかし、ヤタは一度召喚すると暫くは召喚出来ないので、マシェルモビアが来た時の為に使えない、ニュートンでも行けるだろうが、ここでは味方の兵士も巻き込む。
 威力の強い魔法は、周りにも被害が及ぶ、だったら一旦オーガの手の届かない上空に━━

 ググッと体が浮き上がり、瞬時にコスモにしがみついた

「あちっ!」
 そして頭をかすめる大きな炎の塊、炎の塊はそのまま俺とコスモを通り過ぎ、真正面に有った木に当たり爆散する

 え?

「あいつ、もしかして遠距離攻撃も出来るの?」

 オーガが拳を振るうたび、炎の塊が打ち出される、それはコスモの上昇を防ぐかのように放たれている

 完全にロックオンだよ、リクレク中隊がもう少し気を引いてくれたら何んとかなるんだけど

 リクレク中隊も頑張ってはくれているが、通常のオーガと巨大なオーガ、両方を相手にしなければならず、完全にキャパを超えている、通常のオーガは数が少なくなってきたような気がするが。
 リクレク隊は踏みつぶされる事を警戒し離れて魔法を放つが、オーガは小雨にでも当たっている様な感じで相手にもしない、そもそも痛みを感じているかどうかも不明だ。

 だが、目を狙った時オーガは瞼を閉じた、目が弱い事を知っているのだ。

 また目を狙うしかないのか? でも完璧に警戒されている、直撃できるかどうか‥‥‥‥
 目以外ならどうだろう? 尻の穴? 駄目だな俺達を狙っているから背後に回る事も出来ない、穴まで届くかどうかもあるし、口や鼻、耳は? 魔法を無理やり曲げて狙えば‥‥‥‥、それでも攻撃力は足りないか、何とかして槍をぶち込みたいが

 攻撃を回避するコスモに振り回されるたび、大きな音が耳元を掠める、これだけ振り回されていたら思いつく事も思いつかない‥‥‥‥そうだ! 当てる必要はない!

「次に回避したらこっちから打って出るぞ!」

 後ろから炎の塊が放たれ、コスモは間一髪回避しそのまま反転した

「行けっ!」
 特大の大きな水の玉をオーガの顔の側面に向け放った、なんて事は無いただの大きな水の玉だ。攻撃力は皆無、
「もういっちょ!」
 次に放ったのは大きな火の玉、水の玉よりも射出速度は速い

 魔法には相性という物がある、例えば性質の違う物同士が当たった場合爆発が起こる、その爆発が一番小さいのは『水』と『氷』
 元々水と氷は、同じ水だからだろうか? 
 だがそれとは逆に相性が悪い物がある『火』と『水』だ、ぶつかり合うと大爆発が起きる。爆風もそうだが音もそうだ。

 先に放たれた水の玉にオーガは全く反応しなかった、目の時と違いダメージは無いと感じたのかそれとも顔から逸れて撃たれたからだろうか?
 そして後から放たれた火の玉が水の玉を捉え、ぶつかり合った。

 ドォォォォォォォン!!!!!

 大きな爆発と音がオーガの側頭部、つまり耳元で発生する

「デカい穴が開いてるんだから良く聞こえるだろう?」

 魔法ではびくともしなかったオーガの体がグラリと傾き、初めて膝を付いた
 そのまま手を付いたオーガの顔は苦痛に歪んでいた。


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