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故郷への帰還 ①
しおりを挟む「どうしてここにデュラハンが」
あの地に残り、ソルセリーの身代わりとなったハヤト隊長の召喚獣。全身黒づくめの鎧を身に着け、右手に大剣を担ぎ左手に自身の首を抱え、コトンを守るようにその場に立っていた
黄色く光る魔法陣から嘶く声と同時にもう一体の召喚獣が飛び出す、ハン子と名づけられたその召喚獣はそのまま周りを駆け巡り、アントを蹴散らすように跳ね飛ばし接近を防ぐ
「え? な、なに? ハヤトの召喚獣!?」
コトンはその召喚獣とは面識が無いが、名前と大体の容姿は知っていたのだろう
「ハヤトが来てくれたのね!」
ハヤト隊長が来た?‥‥‥いや、そんなはずはありません、あの時、あの場所で命を失っているはず、そうでなければ私達は今ここに居ない。
一人の命を引き換えに我々は深部への道を通された。通されたから今我々は━━
だったら目の前にいるあの召喚獣は━━
一体‥‥‥
「あなたハヤトの召喚獣なんでしょ!? ハヤトはどこにいるの!」
そうだ、デュラハンがいるならハヤト隊長も近くにいるはず、この近くにいるんですか隊長!
信じられないという気持ちがある中、それでもあの人ならと淡い期待が胸に膨らむ。だが周りを見渡してもその姿は見つからなかった
「‥‥‥コトン・ラティウス」
ゆっくりとその召喚獣は口を開く、召喚獣であるデュラ子はよく食事時になると登場し、ハヤト隊長と一緒に食べる事が多かった。
いつも露出度の高い服を着てハヤト隊長の隣に座り、料理についての批評をしていた。常に無表情で言葉の抑揚も無く淡々と話をする、それでもその言葉には温かさや楽しさというのが伝わって来ていた。それが召喚獣デュラ子だった
だが、今その口から発せられる言葉には一切の感情が抜け落ちていた。ただ淡々とその言葉を続ける
「私は主からお前を守れと仰せつかった。主の強い決意と意思が今私をこの場にいる為の時間を与えている、お前は主のその意思を受け入れるか?」
「ハヤトの? 当然よ! ハヤトの事だったら何でも受け入れるわ」
即答したコトンに対し
問いかけたデュラ子は少し寂しそうだった
「そうか‥‥ならば私を、デュラハンをお前に託そう、受け取れ」
「えっ? っ━━」
一瞬で黄色い光がコトンとデュラ子を包む
その眩い光の中タクティアは見た。デュラ子がいる場所から現れた黄色の魔法陣がコトンの体に吸い込まれていくところを、そして同時にコトンが召喚していたモルフトが一瞬で消滅した瞬間を
今‥‥魔法陣がコトンの体に移動をしたような
「新しい主よいつまでもこの場にいては危険が伴う、早々に立ち去ろうではないか」
「それよりもハヤトはどこなの? 近くにいるんでしょ?」
「旧主は‥‥他の任務で忙しい、私はコトンを助けろと言われただけでどこにいるかまでは知らない。さあ、立てるか?」
「足を挫いたみたいで」
「そうか、だったら」
デュラ子が手を上げると周りにいるアントを蹴散らしていたハン子が戻って来る、そしてデュラ子は剣を地面に突き立てると、その手でコトンの首根っこを掴みハン子の背に無理やり乗せた。
その際
「ぐえっ」
とコトンが呻く声が聞こえたが、デュラ子はお構いなしにそのまま自分もハンコの背に乗る
「行くぞ」
鐙でハン子の腹を蹴るとハン子はゆっくりと走り出した
「軍師殿も遅れぬよう」
デュラ子はタクティアにも声を掛けるが、その声はいつもタクティアに掛ける声とは違いとても冷たいものだった
「え、ええ‥‥」
タクティアの中で色々な思考が入り乱れ、そしてその全てが絡み合いながらも結びつかない、駆けだしていくデュラハンを追いながらもそれでも今起きた事をまとめようと必死になる
コトンを新しい主と言っていた。そしてハヤト隊長の事を旧主とも言っている、そしてコトンに吸い込まれたあの魔法陣‥‥それは‥‥もしや。
いやいや、そんな事があるはずがない、出来るはずがない。もしそれが出来たとしたら‥‥
ハヤト隊長、あなたは女神と同じ‥‥‥
「ワームがまだ生きてるぞ! 離れろ!」
竜翼機が突撃し、死んだと思われていた巨大なワームが再び動きだす、鋭い歯を持った口は引き裂かれた花のようになっていたがそれでもまだ生きていた。
瀕死のワームに食らいつくアントと、それから逃れようとするワームが体をうねらせ地面をのた打ち回る。
もうすぐ大量の餌が手に入るとアントがワームの側に大量に集まってくる、だが、それは同時に兵士にとっても危険が迫っている証拠でもあった
「デュラハンだ!」
「竜騎士が来たぞ!」
デュラハンが戦場を走り出すと、それを目撃した兵士達が次々と叫ぶ、それに伴いその姿を見た者、その声を聞いた者は次々と先頭に向かい走り出す。
今ここに残されてしまったら、もう逃げる事は叶わない。アントが集まる前にここから脱出せねばと兵士達は走り出した。
瀕死の兵士は捨て置かれ、負傷してしまった兵士は置いてかれまいとその体に鞭を打つ。
今ここで前進しなければ確実に死が待っている、だからこそデュラハンという一つの希望が現れた事で兵士達は走る。
デュラハンは走りながらいとも簡単にアントを真っ二つにし、その後ろに出来た道を兵士達は進んだ。その道が閉ざされる前にこの場から逃げなければと━━
大陸深部において、もっとも過酷を極めたのが今日だった。
突然のワームの出現にハルツールのハルツール軍は混乱し、軍は散り散りにその場から脱出することになる。
集結ままならず、追うアントから逃れようと兵士達は必至で走った
タクティア・ラティウスを隊長としたハヤト隊もこの日を境にバラバラに逃れる事となる
◆◇
「やはりいませんでしたか‥‥」
タクティアの言葉には落胆の色を隠せない
あれから丸2日アントに追われ、今は真夜中を迎える。
2日目の日中にようやくアントの追撃を振り切る事が出来、やっと体を休める事が出来るようになった。魔物は夜になると睡眠を取る習性があるが、アントは自分達を諦めなかった。執拗に追い掛け捕えようとしてきた。
それも今日まで、多分アントの縄張りから出る事が出来たのだろうと思う。
逃げるのに精いっぱいでハルツール軍は散り散りになってしまった。今この場にいるハルツール軍は全部で1067人、ワームが出現した際タクティアがいた場所には海軍兵士が周りに多くおり、一緒に逃げて来た兵士1067人の内490人は海軍所属の兵士である
海軍兵士の殆どは個人としての力が無く、深部に入ってからは守られる一方だった為、夜の見張り位は自分達にやらせてくれと手を上げてくれた。
だからこそ陸軍兵士達はゆっくりと体を休める事が出来た。満身創痍の体を横にし直ぐに兵士達は眠りについていた
夜になると魔物の声も無くなり、あるとすれば風が通る音のみ。また数時間後にはあの地獄のような苦しみが待ち受けている、今だけでも兵士達には安らぎを与えて欲しいと思う
ただその中にハヤト隊の姿は無かった。正確に言うとタクティアとコトン以外の姿は存在していない
大型のワームで散り散りになって以降、その姿を見てはいないのだ。この撤退で真っ先に守らねばならぬのがサコナ・ソルセリー、だがそのソルセリーの姿を見失ってしまった。
あの直前まで確かにいたはずなのに今は見当たらない、他の隊員の姿も無く、まさか探す為に戻る訳にも行かず‥‥‥
「みんなが生きているのを女神に祈るしか‥‥‥」
今のタクティアにはそれしか出来なかった
「ではもう一つの懸案事項に移りますか」
仲間を探したその足でタクティアはデュラハンの元へと足を進めた
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