異世界陸軍活動記

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 マシェルモビア軍が支配する『都市ロメ』。
 そこから更に東に存在する『トンプソンの町』。
 マシェルモビア軍はその町に存在する『魔集機』を求め、トンプソンに侵攻をしていた。魔集機を抑えることが出来れば、トンプソンでのエネルギー事情がすべて解決する

 都市ロメはその不運な歴史と乏しい地形の為、非常に貧弱な都市であり、水を南の町『ショショウ』、エネルギーをトンプソンに頼っていた。
 そのロメをハルツールから奪ったマシェルモビア軍からしてみれば、都市機能を完全とする為にトンプソンの奪取がとても重要であった

 だがハルツールからしてみれば、集魔機というエネルギーを生成する大切な施設があるとは言うものの、『都市ブレドリア』を壊滅させる程の兵器を使用し、更地にするような行いをした国である。
 ハルツ―ルは都市そのものよりも、自国内にマシェルモビアが侵入してきた事の方が重要であり屈辱であった。
 互いの違いを深くまで理解できていなかったマシェルモビア軍にとって、それは致命的でもあった。
 そして、また一つの町を犠牲にする作戦が始まろうとしていた




 ◆◇


「グース隊長、前線がかなり押されているみたいですが」

 戦いの音が近くまで聞こえてくるせいか、レンダルが少し緊張をはらんだ声で言ってくる

「そうだな、敵も必死なんだろう。それにこちらはリクレク大隊が全て前に出ている訳でもないし、それ以外の部隊だって全て前に出られる訳でもない、それに互いに本気で戦っているのなら戦線が前後するのはよくある事だ」

「そうですか‥‥」

 レンダルは軍学校卒業後、大陸西部寄りにある自身の故郷に配属された。そこで戦っていたのは人では無く魔物であった為、かなり勝手が違う。
 ブレドリア奪還の時もそうだったが、対人の経験が少ないせいか少しぎこちなく、マニュアル道りの動きしか出来ていなかった。もう少し臨機応変に動けたらいいのだが

「━━えっ?」

 そこで通信担当であったレンダルが声を上げた

 話は変わるが、この通信機は小さなポシェットサイズの大きさであり、背中に背負うタイプになっている。
 今までも使用していた時もあり、主にタクティアが装着していた。しかし拠点を取る取られるなどの小規模の戦いが多かったため、通信機自体をあまり活用できていなかった。
 だが攻める対象、攻められる対象が範囲の広い都市になり、それによって兵士の数も多くなり戦闘はより大規模、広範囲になると、通信機の活用も連携を取るのには大事な道具になり、頻繁に活躍している。
 何となくだがとても新鮮な物である

 というどうでもいい感想は置いといて、レンダルの「━━えっ?」の続きから

「は、はい了解しました━━グース隊長、防衛ラインを下げるらしいのですが‥‥」

「よし下がるぞ」

 防衛ラインを下げるという事はついに作戦が始まるのだろう。
 コトンは何も言わず俺の後に付いてきたが、連絡を受け取ったレンダルは納得がいかない様子、そして同じく納得がいかないのかケンタ君がその口を開いた

「隊長、下がるというのは何故でしょうか? 前線が押されているとはいえまだやれるはずです、ここで下がってしまっては━━」

「やれるかどうかは上が決める事、ただの一兵士が判断していい事では無い」

「ですが‥‥」
 レンダルも反論を口にする

「それじゃあ二人ともここに残って敵の相手をするか? 俺とコトンは引くけど他の部隊だって引いて行くんだよ? それでも二人だけ残ってやっていくの?」

「‥‥」
「‥‥」

 国の為、故郷の為に踏ん張りたいという気持ちは分かるだが

「いいか? 上の命令は絶対だ。死ねと言われたら死ななければならないし、撤退と言われたら生きて下がらなければならない。
 兵はただの駒なんだよ、駒は駒らしく命令道りに動くしかないんだ。そして、お前達の隊長は俺だ、俺がお前達に命令を下す、俺が下がると言ったら下がるんだ。
 それとも命令を無視して軍規違反でもするか? その場合、国をも裏切る事になるけれど?」

「「‥‥了解」」

 まだ二人とも若いせいなのか納得できないところもあるだろう

「よし、下がるぞ」

 作戦の内容を話す事が出来ればいいのだが、ハルツールは情報が筒抜けになる事が多々あり、ごく一部の兵士しか知らされていない。
 この作戦を立てたロメ奪還の総司令であるタクティアの厳命である為、いくら信頼のおける部下でも話す事が出来ないのだ。
 ‥‥のはずなのだが、何故かコトンは知っていた。間違いなくタクティアが教えたのだろうが‥‥

 『コトンいいですか? 今度の作戦はこんな感じになりますから』

 『うん、分かった!』

 多分こんな会話がされていたのだろう、容易に想像出来る。
 あの親馬鹿ならぬ、叔父馬鹿は何とかならないんだろうか?



 後方への撤退に関してだが、リクレク大隊はしんがりに第2中隊、その前方左翼に第3、右翼に第4中隊が配置されており、竜騎士隊は第3の後方左翼に配属されている。その為、竜騎士隊の撤退はスムーズに安全に下がることが出来た

 トンプソンの町を犠牲にするこの作戦、いきなり町まで後退しても相手に不審に思われてしまう。だから相手に気付かれないよう少しずつ下がりつつ、時には押し返し戦術的な後退ではないと悟られなければならない。
 完全な負けを演じつつトンプソンを明け渡す、そうする事で今作戦は完成する。だが作戦情報漏洩防止の為、味方兵士の殆どはその事実を知らされていない。
 その事で生じる士気の問題もあるし、何よりも作戦の鍵を握るのは海軍である。砲撃可能な期を見計らい作戦を決行しなければならない


 そして━━

「グース隊長また後退です!」

 通信機からの連絡にレンダルが叫ぶ。
 マシェルモビアはトンプソンに近づくにつれ広く展開するようになり、比較的安全な場所に配置されているにも関わらず竜騎士隊にも火の粉が振り掛かるようになってきていた。
 とは言っても第3中隊の後ろに配属されている為、戦闘はほぼ無いと言っていい。そもそもタクティアは姪のコトンをこれ以上前線に出させたくないので、元ハヤト隊であるオーバ率いるリクレク大隊に俺達を預けたのだ。
 オーバももちろん、タクティアの意図を分かっているし、今回の作戦ではトンプソンに敵を率いれてからが本番である。砲撃で被害を受けた部隊などそれほど恐ろしくないだろう━━


「そう‥‥じゃあ引くか」

 後退の合図があるのならそのまま後ろに下がろう、余計な被害を受ける必要は無い。
 しかし、レンダルとケンタ君の表情は苦々しいものだった。ろくに戦いもせず後退を繰り返し、自分達は一体何をしているのか‥‥てな事を考えているんだろうなーと、その表情から察しがつく。
 そもそも自分達竜騎士隊は無理に戦闘などする必要は無い、竜騎士隊の目的とはこの場にいる事だけが目的だからだ。
 大陸深部を通過した者達は、皆英雄視されている。オーバやライカはもちろんの事、深部を通過した者達の約半数以上はリクレク隊に所属されている。
 それに加え、同じく深部を通過し俺の召喚獣デュラハンを引き継いだコトンも今はいるし、しょっちゅう負けているのにもかかわらず、何故か「こいつがいれば勝てる!」と思われている俺もいる。
 要はそんな人物たちを配属する事により兵士達の士気を上げようとしているのだ

 5年前のあの作戦にはかなりの手練れの兵士が加わっていた。それに緩衝地帯で通常の戦闘を行っていた兵士達‥‥そのほとんどがあの撤退とその後の特殊オーガの蹂躙により死亡したのだ。
 そしてその結果、ハルツール軍の兵士の質が低下し、かなり悲惨な状況にある。
 無敵のリクレク隊と言われる部隊でも、今はその名にふさわしい実力を持つ兵士は少ない。俺が率いる竜騎士隊もそう、レンダルやケンタ君などまだ未熟だし経験も不足している。
 だから気持ちだけは負けぬようにと、名の知れた兵士達が必要なのだ。
 その為の竜騎士隊でもある

 しかしこのまま後退を続ければ士気もダダ下がりするだろうが、作戦が成功すれば敵を蜂の巣に出来る。目の前で砲弾が炸裂する場面を見れば、何となくテンションが上がってやる気も出るだろう、花火を見た時なんかそうだよね、何となく興奮する。
 だから士気の低下はそれほど問題では無いような気がする、俺もソルセリーの『消滅』魔法を受けた身だから分かる、目の前で爆発なんか起きたらなんか気分がハイになるよね

 戦闘が必要ならもちろん加わるが、基本はいるだけでいい竜騎士隊。
 ロメ奪還の作戦でもあまりする事が無い我が隊、その事に苛立ちを感じる者もいるだろうが、逆に感じない者もいる。
 我が隊で苛立ちを感じない人間の筆頭が俺である、暇なら暇でそれでいい、なお良い。
 最初の方は緊張感を持っていたが、それも時間が過ぎるにつれ張りつめた緊張感はゆるゆるに緩みきっていた。
 作戦の事はもう頭に無く、今の俺は武器の名前をどうしようか考えていた。
 というのも、この世界の軍では自分の武器に名前を付ける事が流行っているらしい、というか伝統らしい。
 ライカやソルセリー、エクレールも自分の武器に名を付けていたし、新しく武器を新調したライカは当然の事のようにまた名を付けていた。
 軍が支給する武器を持つ者は名を付けるのは稀だが、特注の武具を持つ者はそのほとんどが名を付けるらしい。
 武具に名づけ=タウロン(恥ずかしい中二病患者)と言う考えを持っていた俺だが、この世界では一般的だと知った。
 『郷に入っては郷に従え』という言葉にあるように、俺もそうするべきでは? と作戦途中からずっと考えていた

 俺の特注の武具といったら━━
 ○ 先が十字になり尚且つ黄色に光る槍
 ○ ソルセリ―式の一点集中攻撃用の槍
 ○ 長弓
 ○ 軽鎧の重装甲用アタッチメント

 この四点である

 中二OKのこの世界だったら、俺もカッコよく素晴らしい名前にしようと思う。
 まずは槍、ぱっと思いつく中二名は4つ、というかこの4つしか知らない、その4つは━━

 ○ ロンギヌス 俺の父も知っているし平成生まれの俺も知っている、某アニメの有名な奴
 ○ ゲイ・ボルグ これも有名、父は知らないと思うが兄さんと俺は知っている、某アニメ
 ○ グングニール ゲームで知った 
 ○ 蜻蛉切とんぼきり 本田忠勝が使って有名になったやつ、ゲームで知った

 この4つから選ばなくてはならない、そして難しい事に候補の名は4つしかないのに槍は2つあるという事、剣だったらもっと候補があったのに槍は詳しくない。
 その4つの候補の内、これはちょっと‥‥ていうのを外してゆく、消去法というやつだ。

 まず外すのがロンギヌス。
 理由として名はかっこいいが、実際は死んだかどうか確認するために刺した槍であり、輝かしい実績がある訳ではない、死体撃ちみたいでヤダ
 
 次にゲイ・ボルグ。
 神話に出て来る実績のある槍だが‥‥最初のゲイの部分にちょっと抵抗があるから却下
 
 そしてグングニール。 
 神話に出て来るオーディンが持つこれまた実績のある槍、でも名前が『グミを足で踏んだような音』みたいな感じでちょっと‥‥
 
 最後に蜻蛉切。
 飛んでいた蜻蛉が突っ込んで自殺したという『よく切れます』というキャッチフレーズの槍
 
 蜻蛉切に関して、歴史シュミレーションゲームを楽しんでいた俺にとっては良い名に聞こえる。だがこの世界の人達からしたら━━
 「虫を切ったとかwww」とか言って笑われるだろう、パナンを切って『パナン切』と言うのとあんまり変わらない、包丁でいいじゃない? ってなるし、虫を切るのに槍を使うの? 弱い物イジメ? ってなる。
 でも候補の内3つが駄目になるとこの蜻蛉切しか残っていない、他の名は思いつかないしもうこれしかない。
 あれこれ考えた結果、『蜻蛉切』ではなく『トンボキリ』ではどうだろうか? そう考える。カタカナにすると格段にカッコ悪くなるが若干オシャレに見えるし、それとこの世界では大陸深部に出て来る魔物は昆虫の姿をしている。
 なら『深部に出て来る魔物っぽい形のを切った』と言えば何とかなるのではないだろうか? 大きさは違うが形は一緒だからそれで問題ないと思う。
 
 よし! 名はトンボキリにする!

 しかし、決まった名は一つしか無いが、槍は二本ある。どちらにその名を付けようか悩んだが、ソルセリー式の槍は突きの槍であるからちょっと違う気がするので、十字型の槍の方にその名を付けようと決めた。
 よし今日から君の名は『トンボキリ』だ、よろしくね!
 ソルセリ―式の方はなんか良い名が浮かんだら付けようと思う、取りあえず一旦保留で

 次に長弓、これは一つしかない『与一の弓』で決定! 老人を不意打したちょっと不本意な弓だけど、とあるゲームでは最強だから、それにそれしか知らないしね。
 君は今日から『与一の弓』だ、宜しくね!

 最後に鎧のアタッチメントだが、直ぐに思いついたのが『アイアンメイデン』だった。よし! かっこいい名前だしこれに━━と思ったのだがよくよく考えたら拷問器具の名前だった。
 危ない危ない死んじゃうよそれじゃ。
 となると別の名前は‥‥槍、弓と日本風の名前になっているから鎧も日本風にするか? となると知っている日本風と言ったらこれまたゲームで出て来る『源氏の鎧』知らないしソレにする? いや待てよ‥‥鎧の重装甲のアタッチメントであって鎧では無いんだよね、となると源氏の鎧ではちょっと違う気がするし‥‥。
 なら、別にアタッチメントでもいい気がするかな? ‥‥よし!
 君はこれからもアタッチメントだ、どうせ使い捨てのパーツだし良いよね!




 という訳で、レンダルとケンタ君が悩んでいる時、俺は名付けで悩んでいた。そんなこんなで思考を巡らせていると

「グース隊長‥‥トンプソンまで‥‥後退だそうです」
 苦しそうな顔でそう告げてくるレンダル

 えっ!? もう?

 考え事をしていると時間の経つのはとても速いもので、いつの間にかトンプソンまですぐそこの距離に後退していた

「そうか、下がるぞ」
 
 そう告げるが返事をしたのはコトンだけで、レンダルとケンタ君は返事すら返さなかった

 まあ気持ちは分かるが
「返事はどうした? 二人ともそんなに悄気るなよ、この先反撃の機会だってあるさ。今は取りあえず後退しよう」

 実際あるし

「ですが‥‥グース隊長だってこの状況に思う事があるのではないですか? この戦いが始まってからずっと難しい顔で悩んでおられましたけど」

「お、おう」

 ごめんな、違う事で悩んでたんだ

「ブレドリアは何とか押し返したのにこのままだとトンプソンは‥‥」

 奪われる、そう思うだろうな普通は

「あまり深く考えるなよ、前も言ったが前線と言うのはよく移動する。今は下がっているけどそのうち押し返す事が出来るさ」
 
 そう言ってみたが二人の表情は晴れなかった。
 他の部隊でもこんな感じだろうけど、二人は経験が少ない分深く考えすぎるのだろう、しかしあまりにも二人の表情は浮かない、コレが続けばもしかしたらだが命令を無視しイレギュラーな行動をするかもしれない、二人に限ってそれは無いだろうか‥‥


 だがその時

「二人ともハヤトの言っている事が信じられないの!」

 いままで特に何も言ってこなかったコトンが、声を荒げるように二人に言い放つ

「いや‥‥そういう訳では」
「‥‥」

 コトンに声を荒げられ言われたからか二人は言いよどむ

「ハヤトはね二人よりもずっと経験があるし実力もあるの!━━」

 普段大きな声を出さないコトンが物凄い剣幕で言うからなのか、二人は黙り込む。女子に怒られるのはちょっときついからね、常に血気盛んな女子に怒られても何とも思わないけど、普段大人しい女子に起こられたらめっちゃ凹む。二人にはそんな趣味は無いだろうし

 あっ、これコトンに任せておけば何とかなるな。
 そう思い俺は二人と同様に大人しくする、深部を実際に通過して来た者の言葉は重い、この後あれこれ説教した後俺に振ってくるパターンだ。その時に「そうだな」とか言っておけばいいやつだろう

 あれ? 俺も深部を通過した事があるんだけど、二人は納得してなかったな‥‥

 少しの間コトンの二人に対する話が続き、そして
「━━必ずマシェルモビアに反撃できる時が来るから! そうでしょ? ハヤト」

 予想道りに振られてきたので

「そうだな」
 予定道り答えた

 実の所、コトンも作戦を知っているのでこの後反撃があるのは知っていたのだけれど、二人は知らない

 もっと戦って活躍したいのだろうけど、今はその時ではない。コトンに怒られ少し頭が冷えたのか
「すみませんグース隊長」
「すみませんでした隊長」
 二人は頭を下げた

 いいって事よ!
「冷静になれたのなら後退するぞ、そろそろ本格的な戦闘もあるだろうから、今は出来るだけ体力を温存しておけ」

「「はい」」
 今度は二人とも返事をしてくれた。そしてその二人を満足そうに見るコトン、暫く一緒に居るが未だにコトンの立ち位置がよく分からない、何となく副隊長のようなポジションにいるのだろうか?

 
 でもホントこの後戦闘があるのだから、どのみち海軍の準備が整うまでトンプソンを守らなければならないし、その後もトンプソンを再制圧するのに戦闘があるし

 長い事トンプソンに留まっては包囲され逃げ場を失う可能性もある為、作戦は今日かもしくは明日‥‥


 そしてその作戦はその日の昼過ぎに決行された


 ・・・・・・

 ・・・


「引くぞ、撤退だ!」

 トンプソンのこれ以上の防衛をせず、トンプソン防衛をする全ての部隊に撤退の命令が下る。後退ではなく撤退。
 この撤退は全ての準備が出来たという事、直ぐにでも海軍による艦砲射撃が始まる。
 トンプソンに撤退しこの場を防衛すると思っていた兵士達は皆動揺するが、上からの命令に急いで撤退を開始する。
 ハルツール軍がトンプソンに入った後、マシェルモビアの攻撃は凄まじいものがあったが、海軍のタイミングと丁度いい感じに被った為、怒涛の勢いでマシェルモビアはトンプソンになだれ込む。
 この作戦の決断を下すリクレク大隊隊長のオーバは今頃笑っているだろう、いいタイミングで来てくれたと

「みすみすトンプソンを!」

 ケンタ君が吠えるがそれでも撤退には従った。そう、それでいい今は

 そして撤退する際、マシェルモビアは敵の食滅よりも占拠を優先した。その為移動速度はかなり早い、食滅を優先しないと言っても目の前に敵がいたら攻撃はする。
 この場での戦闘を避けたい俺は、配属されている第3中隊から離れ南側に撤退する事にする。兵士の勘というかその方がいい気がした。 
 タクティアからコトンをよろしくお願いしますと言われているし、まだ経験の浅いレンダルやケンタ君を危ない目に遭わせる訳にはいかない。
 マシェルモビアはトンプソンの中央を抑えた後、その更に東側にある魔集機の占領に向かうだろう。となると南側に逃げた方が敵と会わずに済む、一旦トンプソンから出てから第3中隊に再合流した方がいい

「3人共ついて来い、一旦南に抜ける。トンプソンを出てから第3に合流するぞ」

「「了解」」

 魔法の爆発音が響く中竜騎士隊は第3から離れ南に向け走った。徐々に音が遠のくなか、丁字路に差し掛かりその道を左折した時、そこにあった建物の陰から人が飛び出してくる

 仲間━━

 位置的に見てそう考えたが、すれ違いざまに互いに顔を確認し、『収納』から『トンボキリ』をすぐさま取り出し

 そして


 互いに激しく打ち合った

 ガギン! とお互いの持つ槍が交差する


「会いたかった会いたかった会いたかった━━━!!」

「こんな時に!」

 飛び出して来た人間は禍々しい化粧をしており、手には黄色に光る召喚者殺し

 規律正しい軍の行動では、イレギュラーを起こす者がいるとその部隊の全滅もあり得る。そして今回そのイレギュラーな行動を取ってしまったのは俺だった。
 兵士の勘で動いたがそれが全て悪い方に繋がってしまった

 そしてもう1人相手のイレギュラーな存在。
 トンプソンの確保ではなく独自の考えで動いた人物

 『勇者』ルイバ・フロルドとの会敵であった
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