地元の怪物はどうやらガチでヤバいらしい

１７ 葛藤

「計画っ！？何だそのけいかくというのは？」
次郎は男に訪ねた。


「こっちの話だ。気にせんで良い。それに君の人生はもうココで終わったようなものだから」


「次郎くん！！」


「ん？どうしたの田中君」


田中が声を振り絞り次郎に言う。
「あの人、人を食べるんだ！僕の足も……だ、だから！縛られたりされそうになったら逃げるんだ！」




「そういうことだったのか。膳は急げだな」


次郎は田中の足に注意しながら縄を解いた。

「次郎……？何をするんだ!?」


「逃げるんだ」
次郎は田中に肩を貸した。
出口に向かって行く。


「……」
田中が何か言いたそうにしていた。

「どうした？田中君」


「助かるなんてそんなのあり得るんだ」
田中は少し涙目で言った。



「有り得ないよ」
男の声が後ろからした。
次郎の手からするりと懐中電灯が落ちた。


次郎の背筋に男の息が伝わった。
次郎はとっさに顔を青くして
「ごめんなさい！田中くん！！」
田中を床に突き飛ばした。





「うっっっ！！」
男は苦しそうな声を上げた。




「これは有効みたいですね」
次郎の目には好奇心そして微かな殺意が現れていた。




男の喉を貫いたナイフからポタポタと血が出る。

次郎は男に刺したナイフを引いて取り出した。



「今のは凄く想定外でした……よ」
一瞬うろたえる男の声。



人間ではない彼には致命傷では無かったが、少しばかり傷を負わせられたのは確かだった。だがそれは彼にしてみれば目くらましに過ぎなかったのであーる。


「あっ！！やめろ！！」
次郎の反抗も虚しくナイフが男に奪われる。
指が痛いと言いながら地面にしゃがみ込んだ。
ナイフをもっていた指の骨が変形してしまいそうなほど強い力で無理やり奪われたのだ。


「何だよ計画通りで少しがっかりだ。あんたも普通の人間かよ」

男は田中の腹にナイフで切りつけた。
田中の腹から血が出ているのが見えた。


「次郎くん？？」

「ごめん。僕もう逃げるんだ。」


次郎は懐中電灯を手にしてドアの方に向かった。


「待ってよ」


「……」


「助けてくれないの」


「……」





「フフ、人間が葛藤する姿はなんとも面白い」
男の顔にニヤニヤと笑顔が浮かんだ。



薄暗い部屋が沈黙に染まった。