好かれる男が俺を好きな理由

朝日奈由

文字の大きさ
2 / 14

2.乱れ(南)

しおりを挟む

〝助けて〟

先輩が倒れる前に言った言葉。
自分なのか、先輩なのか、アルコールの匂いが体から漂よい、意識を正常に戻してくれない。
先輩の崩れ落ちる体をギリギリで支え、こぼれ落ちる涙を目で辿る。
五年前と何も変わらない整った顔立ちとサラサラで黒色の髪はサイドだけかきあげられて、あの頃よりも大人っぽくなっている気がする。
一年間毎日のように見ていた高校時代の記憶よりも細く軽そうな先輩の体に初めて触れる。

「っ……ほんとに、勘弁して下さいよ」

何かが心の底で崩れ、壊れる音がする。

同じ部活に所属してるだけで、歳も二つ離れていたから特に大きな接点は無かった。
南 浩太(みなみ こうた) 20歳。
高校時代、一年間も想い続け打ち明けることができず卒業してしまった先輩を何も知らないまま思い続けるのは苦しくてもう二度と会うことはないと思っていた。

「とりあえず、俺の家に連れて帰りますよ」

意識のない先輩に優しく問いかける。
返ってくる言葉はないのに、仮に拒絶されたとしても無理やりにでも自分の所に置いておきたくなると自分で分かってて震える。
自分の背中に先輩の腕を回し背負いあげる。
軽い、本当に想像していたよりも軽い。
自分の背中と触れ合ってる面積は少ないはずなのにそこから伝わる熱が鋭く刺す。

「くっそ……さっさと連れて帰らないと変な気起こしそう……」

何を考えて、何を想像してるのか分かっているはずなのに五年間封じ込めていた想いを開けたくないと怖がってるのに、触れたくてめちゃくちゃにしたくてたまらない。
会うことはないと分かっていても、会いたいと何度も思って忘れる為に生きてきたのに、今の自分がおかしくなる音が止まらない。

最低だ。



「先輩軽すぎ……よいしょっと」

家に着き、そのまま先輩だけを自分のベッドに寝かせる。
先輩の分、体が軽くなり離れた所から暖かった温度は冷め始める。
冷静に、ならないと取り返しがつかなくなるかもしれない。

「……とりあえず水飲ませて、服も着替えさせないとスーツがシワになるよな」

グラスに水を入れ、先に自分が一口飲んでから違うグラスにまた水を入れてベッド横の机に置く。

「先輩、ひろ先輩。起きてください、水飲んでスーツ脱いで下さい」

体を揺すりながら声をかける。
自分のベッドに先輩が横になっている感覚を
ふわふわとした頭で必死に認識して気が狂いそうになる。

「起きてください、ひろ先輩……起きてくれないと、俺なにするか……」

返ってこない言葉、だいぶ飲んだのか赤くなってる顔に、涙でまだまつ毛が濡れているのがわかる。

「俺が……着替えさせますよ」

自分のベッドに横たわる先輩にまたがりネクタイから緩め始める。
一枚ずつ脱がし、その度に手の震えが増す。
軽いと思っていたのに、白い肌には程よく着いた筋肉に、華奢だけどしっかりと軸のある体つき。

「ひろ先輩……」

興奮と後ろめたさと、胸がえぐられ締め付けられる感覚。
この綺麗な体はもう特別な誰かに見せた事があるのだろうか。
この敏感そうな箇所は誰かに触らせた事があるのだろうか。
この人は、もう誰かにとっての特別な〝人〟になってしまっているのだろうか。
嫉妬だ。
五年も経って、一度も会ってなかったのに綺麗に忘れる事なんか一度も出来なかった。
今の先輩が誰と、どんな風に生活しているのかなんて知らないけれど自分にとっての先輩は五年前で止まっている。
どんな相手と遊んでもそれは欲しいと思えるものじゃなかった。
なのに、なのに、全てが狂う音を感じた。

「もう……むり」

欲しい、奪いたい、自分の体でめちゃめちゃに押し潰して、呼吸ができないように縛り付け離したくない。
グラスにそそいだ水を一気に口に含み、中途半端に乱れたスーツを容赦なく踏みつけ、自分の口から先輩の口へと注ぎ込む。

「んっ……ゴクッゴクッ……クチュ、クチュ」

無理やり流し込む水が溢れてこぼれ落ちる。

「チュ……ンッ……はぁはぁ……ほんと、最悪」

意識が無いはずなのにまるでとろけきった表情をしてる先輩を上から見下ろし、背筋が凍るほど興奮する。
だらしなく口からこぼれる雫を拭い、自分の下半身が疼いて痛いのが分かる。

「まだ……足りない……チュ……クチュ、ンッンッ……」

先輩、今だけは起きないで。
これで、忘れよう。
もし今日がきっかけで今後関わる事があっても
この気持ちはもう閉まっておこう。

「好きだ……ンッ……チュ、クチュ、チュ……」

体が熱い。意識が朦朧とする。

「トイレ、行かないと」

自分の腫れ上がった下半身を見てまた胸が締め付けられる。
この感覚はもう何度経験したか分からない。
めちゃくちゃにしたいのか、めちゃくちゃにされたいのか全部が分からなくなって好きで好きでたまらない人と繋がりたいと願うだけ。

カチャカチャ……シュル……

「はぁ……はぁ、んっ……んんっ……先輩っ……!」

また、火がつく。
一度閉じ込めて、それでも忘れられなかった思いに油がそそられる。
それが何か分かっててまた閉まう。

「先輩……好き……だ」








しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...