17 / 18
17.結局こんなことになったという話②
しおりを挟む
「ま、待て!待ってくれマリウス。認める、そなたの言う事を全て認める。だから助けてくれ!」
慌てて意識をマリウスに向けたベルーナ伯爵がそう叫んだ。護衛の騎士の余りにも凄惨な最期を目の当たりにして、彼の心は折れていた。
「そうですか。いいでしょう。だが、今更あなたの口約束を信じることなど出来ない。もっとしっかりとした契約を結ばせてもらいますよ」
マリウスはそう告げて、複雑な身振り手振りを交えつつ呪文を詠唱した。
すると、マリウスとベルーナ伯爵の周りに魔方陣が浮かび上がり、契約の内容がベルーナ伯爵の脳裏に直接伝えられていく。
呪文を唱え終わったマリウスが、ベルーナ伯爵に告げた。
「異論がなければ同意を」
「わ、分かった。同意する」
その言葉を受け、マリウスとベルーナ伯爵の体に魔方陣は吸い込まれてゆく。
「これで契約は成立です。それでは早速契約内容を履行しましょう。」
そう言うとマリウスは周りのスライムに向かって、“火球”や“吹雪”の魔術を行使した。
いずれも広範囲に効果をもたらす魔術であり、当然スライムと戦っている騎士や兵士達もこの攻撃に巻き込まれてしまう。
「何をする貴様!」
ベルーナ伯爵が思わず叫ぶが、マリウスは涼しい顔で説明した。
「契約を履行しているだけですよ。もう忘れたのですか?契約の中にこの場にいるスライム共を可能な限り速やかに排除するとあったのを。
可能な限り速やかに排除する為には範囲攻撃が必要であり、当然周りの者も巻き込むことになる。そんな事も分からなかったのですか?」
確かに先ほど脳裏に直接流れ込んできた契約の内容には、そのような事も含まれていたように思われた。
そしてどちらにしても、ベルーナ伯爵にマリウスを止める術はなかった。
「何ということを・・・。なぜこんなことに・・・」
ベルーナ伯爵はそうつぶやくと、崩れ落ちるように膝をついた。
「ははははは」
その様子を見てマリウスが笑い声を上げた。そして彼は、魔術攻撃を再開し、スライムと騎士や兵士達を容赦なく魔術でなぎ払った。
結局生き残ったのは、ベルーナ伯爵本人と、最後まで伯爵のそばを離れなかった護衛の騎士1人だけだった。
だが、この日、領都ベルーナとベルーナ伯爵領は、ともかくも救われた。
スライムは速やかに排除され、更にその数時間後、妖魔たちが屯す場所に隕石が落ちて、妖魔に壊滅的な打撃を与えたからだ。
生き残った妖魔たちは速やかにベルーナ伯爵領から撤退していった。
ベルーナ伯爵領を滅亡寸前に追い込んだ者達は、1日で姿を消したのだった。
それから数日後、ベルーナ伯爵領はある程度の平静を取り戻していた。
生き残ったのが伯爵と騎士1人だけという結果は衝撃的だったが、その代わりスライムは壊滅した。
そして、妖魔たちの退却は迅速且つ徹底していて、速やかに伯爵領から姿を消していた。そのことは妖魔を指揮する首魁が健在である事を証明していたが、妖魔が瞬く間に全くいなくなったのは、短期的に見れば伯爵領にとって有難い事だった。
その日、ミレディアは父であるベルーナ伯爵に呼ばれ、その私室を訪れた。
彼女も大分気持ちを落ち着けることが出来ていた。
「お父様、どういった御用でしょう、ッ!?」
だが、父の部屋に入った彼女は、驚愕し言葉を途切れさせた。
その部屋で待っていたのが父ではなかったからだ。
「だ、誰!?」
「おやおや、いくらなんでも忘れてしまうというのは酷すぎではありませんか?仮にも結婚を約束した間柄だというのに」
ベルーナ伯爵の私室でミレディアを待っていたのはマリウスだった。
ミレディアも、その傷だらけの顔の男がマリウスだと気付いた。
「マリウス!?あなた、なぜここに」
「私がここにいるのは報酬を受け取る為です。あなたいう報酬をね。もっと簡単に言えば、あなたを抱くつもりで待っていたのですよ」
「な!?」
ミレディアにはマリウスの言っている事の意味が全て理解できたわけではなかったが、とにかく彼が自分に危害を加えようとしているのは明らかだった。
彼女は慌ててマリウスに背を向けると、いつの間にか閉じられていた扉を開こうとした。
だが、その扉はピクリとも動かなかった。
「無駄ですよ。あなたは売られたんです。まあ、あなただけではなく、あなたの母親と妹も一緒にですがね」
「馬鹿なことを言わないで!!」
「疑うなら伯爵殿に聞いてみるのですな。己の命惜しさにあなた方を私に売り渡した事情を説明してくれると思いますよ。まあ、事情を聞くのは、事が済んだ後にしてもらいましょう」
マリウスはそう言って、ミレディア近づいていった。
ミレディアは身を翻し、マリウスから逃れようと走った。
「逃げても無駄ですよ」
マリウスがそう言ってミレディアの後を追う。
確かにマリウスの言うとおりだった。
間もなくミレディアは壁際に追い詰められてしまった。
「や、やめなさい。下賤の身で私に触れるなど許される事ではありません」
「いいえ、許されています。あなたの身体は私のものですから。むしろ私以外の者が触れることは許されない。というべきでしょう。
理解できぬなら、理解できるまでしっかり教えてあげましょう」
マリウスはそう言ってミレディアのドレスを掴み、それを引き裂いた。
「きゃぁー」
布が引き裂かれる音と、ミレディアの悲鳴が重なった。
「いや、やめて!」
ミレディアはついにそう懇願したが、無論マリウスは聞く耳を持たず、一切容赦する事もなく、事に及んだのだった。
慌てて意識をマリウスに向けたベルーナ伯爵がそう叫んだ。護衛の騎士の余りにも凄惨な最期を目の当たりにして、彼の心は折れていた。
「そうですか。いいでしょう。だが、今更あなたの口約束を信じることなど出来ない。もっとしっかりとした契約を結ばせてもらいますよ」
マリウスはそう告げて、複雑な身振り手振りを交えつつ呪文を詠唱した。
すると、マリウスとベルーナ伯爵の周りに魔方陣が浮かび上がり、契約の内容がベルーナ伯爵の脳裏に直接伝えられていく。
呪文を唱え終わったマリウスが、ベルーナ伯爵に告げた。
「異論がなければ同意を」
「わ、分かった。同意する」
その言葉を受け、マリウスとベルーナ伯爵の体に魔方陣は吸い込まれてゆく。
「これで契約は成立です。それでは早速契約内容を履行しましょう。」
そう言うとマリウスは周りのスライムに向かって、“火球”や“吹雪”の魔術を行使した。
いずれも広範囲に効果をもたらす魔術であり、当然スライムと戦っている騎士や兵士達もこの攻撃に巻き込まれてしまう。
「何をする貴様!」
ベルーナ伯爵が思わず叫ぶが、マリウスは涼しい顔で説明した。
「契約を履行しているだけですよ。もう忘れたのですか?契約の中にこの場にいるスライム共を可能な限り速やかに排除するとあったのを。
可能な限り速やかに排除する為には範囲攻撃が必要であり、当然周りの者も巻き込むことになる。そんな事も分からなかったのですか?」
確かに先ほど脳裏に直接流れ込んできた契約の内容には、そのような事も含まれていたように思われた。
そしてどちらにしても、ベルーナ伯爵にマリウスを止める術はなかった。
「何ということを・・・。なぜこんなことに・・・」
ベルーナ伯爵はそうつぶやくと、崩れ落ちるように膝をついた。
「ははははは」
その様子を見てマリウスが笑い声を上げた。そして彼は、魔術攻撃を再開し、スライムと騎士や兵士達を容赦なく魔術でなぎ払った。
結局生き残ったのは、ベルーナ伯爵本人と、最後まで伯爵のそばを離れなかった護衛の騎士1人だけだった。
だが、この日、領都ベルーナとベルーナ伯爵領は、ともかくも救われた。
スライムは速やかに排除され、更にその数時間後、妖魔たちが屯す場所に隕石が落ちて、妖魔に壊滅的な打撃を与えたからだ。
生き残った妖魔たちは速やかにベルーナ伯爵領から撤退していった。
ベルーナ伯爵領を滅亡寸前に追い込んだ者達は、1日で姿を消したのだった。
それから数日後、ベルーナ伯爵領はある程度の平静を取り戻していた。
生き残ったのが伯爵と騎士1人だけという結果は衝撃的だったが、その代わりスライムは壊滅した。
そして、妖魔たちの退却は迅速且つ徹底していて、速やかに伯爵領から姿を消していた。そのことは妖魔を指揮する首魁が健在である事を証明していたが、妖魔が瞬く間に全くいなくなったのは、短期的に見れば伯爵領にとって有難い事だった。
その日、ミレディアは父であるベルーナ伯爵に呼ばれ、その私室を訪れた。
彼女も大分気持ちを落ち着けることが出来ていた。
「お父様、どういった御用でしょう、ッ!?」
だが、父の部屋に入った彼女は、驚愕し言葉を途切れさせた。
その部屋で待っていたのが父ではなかったからだ。
「だ、誰!?」
「おやおや、いくらなんでも忘れてしまうというのは酷すぎではありませんか?仮にも結婚を約束した間柄だというのに」
ベルーナ伯爵の私室でミレディアを待っていたのはマリウスだった。
ミレディアも、その傷だらけの顔の男がマリウスだと気付いた。
「マリウス!?あなた、なぜここに」
「私がここにいるのは報酬を受け取る為です。あなたいう報酬をね。もっと簡単に言えば、あなたを抱くつもりで待っていたのですよ」
「な!?」
ミレディアにはマリウスの言っている事の意味が全て理解できたわけではなかったが、とにかく彼が自分に危害を加えようとしているのは明らかだった。
彼女は慌ててマリウスに背を向けると、いつの間にか閉じられていた扉を開こうとした。
だが、その扉はピクリとも動かなかった。
「無駄ですよ。あなたは売られたんです。まあ、あなただけではなく、あなたの母親と妹も一緒にですがね」
「馬鹿なことを言わないで!!」
「疑うなら伯爵殿に聞いてみるのですな。己の命惜しさにあなた方を私に売り渡した事情を説明してくれると思いますよ。まあ、事情を聞くのは、事が済んだ後にしてもらいましょう」
マリウスはそう言って、ミレディア近づいていった。
ミレディアは身を翻し、マリウスから逃れようと走った。
「逃げても無駄ですよ」
マリウスがそう言ってミレディアの後を追う。
確かにマリウスの言うとおりだった。
間もなくミレディアは壁際に追い詰められてしまった。
「や、やめなさい。下賤の身で私に触れるなど許される事ではありません」
「いいえ、許されています。あなたの身体は私のものですから。むしろ私以外の者が触れることは許されない。というべきでしょう。
理解できぬなら、理解できるまでしっかり教えてあげましょう」
マリウスはそう言ってミレディアのドレスを掴み、それを引き裂いた。
「きゃぁー」
布が引き裂かれる音と、ミレディアの悲鳴が重なった。
「いや、やめて!」
ミレディアはついにそう懇願したが、無論マリウスは聞く耳を持たず、一切容赦する事もなく、事に及んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる