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第35話 騙されてやったんだよ
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文化祭から数日後──1人で通学路を歩いていると、後ろから右の肩をトントンと叩かれる。後ろを振り向いたが……誰も居ない?
「騙された~」と左側の横から声がして、視線を向けると、そこにはニヤついて歩いている圭子が居た。
「騙されてやったんだよ」
「嘘つけ。今日は星恵ちゃんと一緒じゃないの?」
「あぁ。今日は用事があるからって先に帰ったよ」
「そう。後夜祭の時のあなた達、ラブラブだったね~。どうせだったらチューもしちゃえば良かったのに」
圭子はいきなりそう言って、唇を尖らせる。慌てた俺は「あぁ!? 見てたのかよ!」と大声を出してしまった。
「見てたというか、見ちゃったっていうのが正解……かな?」
「そ、そうか──今日はそれを言いに?」
「それだけじゃないよ。二点ほど報告にと思ってね」
「報告?」
圭子は後ろで手を組むと「うん。まず智也の事だけど、あいつ振られたって!」と、嬉しそうにニカッと笑う。
「お! まじ!? どうして別れたの?」
「占い」
「占い?」
「そう。智也に殴られそうになって、光輝が庇ってくれた時あったじゃない? あの時から、相手の女が私に接触してきてね」
「うんうん」
「それで智也と別れる事を悩んでそうだったから、星子さんから許可を得て、紹介してやったの」
「ほうほう、それで?」
圭子は青く澄んだ空を見上げると「やっぱり占いに、DVの傾向あり! 女癖も悪いでしょう! って、出てね。女も思う所があったみたいで、直ぐに別れたんだって!」
「ははは、ざまぁみろッ! だね」
圭子は顔を正面に戻すと、拳を突き出し「本当だよ!」
「もう一つは?」
「もう一つは……」と、圭子は拳を下ろし、俯き加減で歩き出す──何か言いにくい事なのか、言葉を詰まらせている様なので、俺は黙って様子を見る事にした。
「──もう一つは……私ね。文化祭で好きな人できた」
それを聞いて俺はドキッ! と、胸を高鳴らす。動揺しながらも平静を装い「ほう、良かったじゃん! おめでとう!!」と、大袈裟にお祝いの言葉を口にした。
「あ、ありがとう……」
「──今度は……大丈夫そう?」
「うん。自分から好きになったし、きっと大丈夫だと思う」
「そう……良かった!」
──圭子は顔をあげ、俺の方に顔を向けると「ねぇ、光輝。久しぶりにグリコジャンケンして帰る?」
「え? 嫌だよ。さすがに、この歳になってやってたら、恥ずかしいだろ」
俺がそう答えると、圭子は俯き加減で「──そっか」と返事をする。
寂しそうにしているその姿をみて、付き合ってやれば良かったかと迷っていると、圭子は顔を上げる。そして落ち着かない様子で、辺りを見渡し始めた。
「どうしたの?」
「うぅん、何でもない」
「そう」
何でもないのに、辺りを見渡すのか? 俺は気になって辺りを見渡してみた──が、誰も居ない。てか、田舎の通学路だけあって、車すら走っていない。
「あのさ──」
「ん?」
「ちょっとだけ……ちょっとだけで良いから、昔みたいに手を繋いで良いかな?」
「え?」
──俺には星恵ちゃんがいるし、圭子には好きな人がいる。それはお互い分かっている状況で手を繋ぐ……それにはきっと、圭子が考えた意味があるはず。
「ちょっとだけだぞ」と、俺は正面を向いたまま、圭子に向かって手を差し出す。圭子は「うん」と返事をして、俺の手を握った。
──そのまま会話もなく、歩き続ける。10分ほどして圭子は、あっさり俺の手から手を離す。
「ありがとう!」
「おう」
「じゃあ……」と圭子は言って、早足で前に出ると、こちらを振り向き立ち止まる。俺も合わせて、立ち止まった。
圭子は俺に向かってビシッ! と、敬礼をすると「任務完了したので、一人で帰ります! ではッ!」と言って、嵐の様に去って行ってしまった。
俺は圭子の温もりが残る手を見つめながら、ゆっくり歩き出す──きっと圭子が手を繋いできたのは、昔、出来なくなった時の後悔を拭い去りたかったから何だろうな。
それだけ、好きになった人への気持ちが本気って事か……圭子の口から好きな人が出来たと聞いて、何でドキッ! と、動揺したのか、それは自分でも分からない。でも……キッパリ吹っ切ってくれたと分かって、青く澄み渡る空の様にスッキリした気分だった。
「騙された~」と左側の横から声がして、視線を向けると、そこにはニヤついて歩いている圭子が居た。
「騙されてやったんだよ」
「嘘つけ。今日は星恵ちゃんと一緒じゃないの?」
「あぁ。今日は用事があるからって先に帰ったよ」
「そう。後夜祭の時のあなた達、ラブラブだったね~。どうせだったらチューもしちゃえば良かったのに」
圭子はいきなりそう言って、唇を尖らせる。慌てた俺は「あぁ!? 見てたのかよ!」と大声を出してしまった。
「見てたというか、見ちゃったっていうのが正解……かな?」
「そ、そうか──今日はそれを言いに?」
「それだけじゃないよ。二点ほど報告にと思ってね」
「報告?」
圭子は後ろで手を組むと「うん。まず智也の事だけど、あいつ振られたって!」と、嬉しそうにニカッと笑う。
「お! まじ!? どうして別れたの?」
「占い」
「占い?」
「そう。智也に殴られそうになって、光輝が庇ってくれた時あったじゃない? あの時から、相手の女が私に接触してきてね」
「うんうん」
「それで智也と別れる事を悩んでそうだったから、星子さんから許可を得て、紹介してやったの」
「ほうほう、それで?」
圭子は青く澄んだ空を見上げると「やっぱり占いに、DVの傾向あり! 女癖も悪いでしょう! って、出てね。女も思う所があったみたいで、直ぐに別れたんだって!」
「ははは、ざまぁみろッ! だね」
圭子は顔を正面に戻すと、拳を突き出し「本当だよ!」
「もう一つは?」
「もう一つは……」と、圭子は拳を下ろし、俯き加減で歩き出す──何か言いにくい事なのか、言葉を詰まらせている様なので、俺は黙って様子を見る事にした。
「──もう一つは……私ね。文化祭で好きな人できた」
それを聞いて俺はドキッ! と、胸を高鳴らす。動揺しながらも平静を装い「ほう、良かったじゃん! おめでとう!!」と、大袈裟にお祝いの言葉を口にした。
「あ、ありがとう……」
「──今度は……大丈夫そう?」
「うん。自分から好きになったし、きっと大丈夫だと思う」
「そう……良かった!」
──圭子は顔をあげ、俺の方に顔を向けると「ねぇ、光輝。久しぶりにグリコジャンケンして帰る?」
「え? 嫌だよ。さすがに、この歳になってやってたら、恥ずかしいだろ」
俺がそう答えると、圭子は俯き加減で「──そっか」と返事をする。
寂しそうにしているその姿をみて、付き合ってやれば良かったかと迷っていると、圭子は顔を上げる。そして落ち着かない様子で、辺りを見渡し始めた。
「どうしたの?」
「うぅん、何でもない」
「そう」
何でもないのに、辺りを見渡すのか? 俺は気になって辺りを見渡してみた──が、誰も居ない。てか、田舎の通学路だけあって、車すら走っていない。
「あのさ──」
「ん?」
「ちょっとだけ……ちょっとだけで良いから、昔みたいに手を繋いで良いかな?」
「え?」
──俺には星恵ちゃんがいるし、圭子には好きな人がいる。それはお互い分かっている状況で手を繋ぐ……それにはきっと、圭子が考えた意味があるはず。
「ちょっとだけだぞ」と、俺は正面を向いたまま、圭子に向かって手を差し出す。圭子は「うん」と返事をして、俺の手を握った。
──そのまま会話もなく、歩き続ける。10分ほどして圭子は、あっさり俺の手から手を離す。
「ありがとう!」
「おう」
「じゃあ……」と圭子は言って、早足で前に出ると、こちらを振り向き立ち止まる。俺も合わせて、立ち止まった。
圭子は俺に向かってビシッ! と、敬礼をすると「任務完了したので、一人で帰ります! ではッ!」と言って、嵐の様に去って行ってしまった。
俺は圭子の温もりが残る手を見つめながら、ゆっくり歩き出す──きっと圭子が手を繋いできたのは、昔、出来なくなった時の後悔を拭い去りたかったから何だろうな。
それだけ、好きになった人への気持ちが本気って事か……圭子の口から好きな人が出来たと聞いて、何でドキッ! と、動揺したのか、それは自分でも分からない。でも……キッパリ吹っ切ってくれたと分かって、青く澄み渡る空の様にスッキリした気分だった。
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