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第50話 最高にカッコ良かったよ!
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「あー……ヤバい感動して、メイクが落ちそうだよ」
「あぁ。最初は何を言われるかヒヤヒヤしていたけど、圭子に頼んで正解だったよ」
「圭子様、ありがとうございました。続きまして星恵様のご友人、菜緒様。お願い致します」
司会者に紹介され、今度は高橋さんが圭子と同じようにマイクのある場所へと向かう──お辞儀をすると「どうぞ、ご着席ください」
高橋さんの服装も素敵で、ネイビーのパーティドレスを着ていた。高校時代はずっと黒髪だったけど、今日は茶髪のポニーテールにしている。
「光輝君、星恵さん、ご両家ご親族の皆様、本日は誠におめでとうございます。ただいまご紹介に預かりました新婦友人の高橋 菜緒と申します」
「新婦の星恵さんとは幼稚園から始まり、小中高と同じ学校に通った幼馴染で、光輝君とは高校の時に同じクラスだった仲です。今まで光輝君、星恵と呼んでいるので、本日もそう呼ばせて下さい」
「星恵とは当たり前の様に毎日一緒に居たので、毎日が特別な思い出でした。だから……星恵が光輝君と仲良くなった時、複雑な気持ちで、光輝君に素っ気なく振舞ってしまう時期がありました」
「そんなある日、星恵が私達を仲良くさせようと海に行く計画を立ててくれました。光輝君はその時、デートを邪魔されて嫌だったと思います。でも……優しい光輝君は一生懸命、私に話しかけてくれました」
「だから少しずつ心を開くことが出来て……自分だけがこんな態度じゃ駄目だと思えるようになりました。お蔭でその日の海は三人で仲良く過ごすことが出来ました」
あぁ……あの時、高橋さんの様子がガラッと変わったのは、そういう事だったのか……諦めずに話しかけて良かった。
「そして、文化祭の時に光輝君がナンパしてくる男から星恵を救ったと聞いて、この人なら星恵を渡しても大丈夫だと思いました」
「──とはいったものの……本当はちょっぴり寂しいので、落ち着いた所で、二人の赤ちゃんをみせて下さいね」
高橋さんはそう言ってニコッと微笑む。俺達は顔を見合わせると、高橋さんに向かってコクリッと頷いた。
「光輝君、星恵。本日は御招き頂き、ありがとうございました。お二人の末永い幸せを心より願い、私のスピーチとさせて頂きます」と、高橋さんは締めくくり、深々とお辞儀をする。
マイクから離れると拍手と共に自分の席へと戻っていった──。
「二人とも、感動させるのが上手いな」
「本当……あれ、絶対に泣かせにきてるよ」
「菜緒様、ありがとうございました。続きまして──」
この後、祝電の紹介があり──両親への手紙と続く。
「──それでは新婦の星恵様。お願いいたします」
BGMがオルゴールの曲に変わり、星恵は手紙を開く。俺はマイクを星恵に向けた。
星恵はまず、ゲストへ感謝の気持ちを述べ、次に「お父さん……お母さん……25年間、育ててくれてありがとう。無事に今日という日を迎える事が出来たのも、お父さんとお母さんが大切に私を育ててくれたからだと思っております」と、両親への感謝の気持ちを述べる。
その後「お父さん。お父さんは──」と、お義父さんとのエピソードを話し始めた。
挨拶の時に、俺にお義父さんが『寂しい思いをさせてきた』と言った気持ちが、娘の星恵にちゃんと通じていた様で、「そんなことは無い……そんな風に私を想ってくれる優しいお父さんの気持ちが伝わってきて、私は幸せでした」と、涙を浮かべながら言っていた。
俺は感動のあまり体が火照り、当然のように込み上げてくる涙を必死に我慢した。
「お母さん、お母さんはいつも優しくて、ついつい本音をポロっと漏らしてしまうぐらい近い存在で、苦しい時も……悲しい時も……いつも助けて貰っていました」
「だからこそ、思春期で酷い言葉を言ってしまった事もあったけど……お母さんは辛そうな表情一つ浮かべず、私を抱きしめてくれました。そんなお母さんを私は尊敬しています。そして、お母さんのような優しいお母さんになりたいと思っています」
ふと、お義母さんの方に目を向けると、お義母さんは涙を浮かべながらも、あなたなら出来るわよと、滲み出るぐらい優しく微笑んでいた。
せっかく堪えた涙がまた込み上げてくる……星恵が最後の締めに入っている間、俺は上を向いたり、星恵を見たりと繰り返し、涙を堪えていた。本当……俺はこういうのに弱い。
星恵が手紙を読み終わり、ゆっくり畳むと司会者は「星恵様、ありがとうございました。続きまして記念品贈呈となります」
──俺達は記念品として、両親が好きな花を厳選した花束とウェイトドールを選んだ。両親に花束を贈るなんて、なんだか照れ臭かったけど、嬉しそうに受け取ってくれる両親の笑顔をみてると、そんなのは吹っ飛んでいた。
チラッと星恵に視線を向けると、丁度、ウェイトドールをお義母さんに渡すところだった。星恵は俺と違い、ちゃんとお義母さんの顔を見つめ、「お母さん、私を産んでくれて、ありがとう。私は今、最高に幸せです」と気持ちを伝えて、渡していた。
あぁ……凄く輝いて見えるシーンだ。涙を堪える? そんなのはどうでも良い。だってもう……家族はみんな涙で顔がグチャグチャだ。
──すべてを渡し終わると、司会者は「ここに新たなご家族が誕生いたしました。皆様どうぞ、盛大な祝福の拍手を御願い致します」
俺達はゲストに向かって深々と頭を下げる──顔を上げると司会者は次の両家代表謝辞に進める。
いつも、おちゃらけている父だが、星恵が挨拶をしに来たときは、きちんと締めてくれた。きっと大丈夫だろう。
──安心して見守っていると、やっぱり父はちゃんと調べていたようで、無事にやり遂げてくれた。次はいよいよ俺の番か……鼻で大きく息を吸い、ふぅ……と、吐き出す。
「──続きまして新郎より皆さまに御挨拶となります。光輝様、お願い致します」
俺はゲストに向かって一礼をすると、マイクを持つ。カンペはあるけど──それは頭が真っ白になった時の最終手段だ。最後までカンペなしで挨拶をしたい! 大丈夫、何度も練習してきたんだ。俺ならやれる!
俺はギュッと拳を握り締めると「本日はご多用の中、二人の為にお集まり頂きまして、ありがとうございました」と話し始める。
「このような盛大な披露宴を開くことが出来たのは、ひとえに皆様のお蔭だと心より感謝を申し上げます」
俺はそう言ってもう一度、頭を下げる。
「この日を迎えるまでに、正直、様々な事がありましたが、お互いが素直になれる方法を考え、ここまでやって来られました。そんな二人だからこそ、これからもずっと仲良くやっていけると信じています」
俺はゲストに話しかける様に、顔を見ながら話していく。まるで自分じゃないみたいに落ち着いていて、スラスラと言葉が出てくる。
「この披露宴を通じて、皆様から温かな御言葉を頂いてきた中で、改めて自分たちが多くの人に支えられて、ここに居るのだと感じる事が出来ました」
「これからもその繋がりを大切にし、皆様や両家の親をお手本にしながら、明るい家庭を築きあげたいと思っておりますので、未熟な私達に御指導、ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます!」
俺はそう締めくくり、感謝の気持ちを込めて深々とお辞儀をする。皆は大きな拍手を返してくれた。
「光輝様、ありがとうございました。それでは──」と司会者が先に進め、俺達はゲストのお見送りのため退場する──。
スタッフさんに案内され、両親と共に出入り口に並んだ。大きな扉が開き、ゲスト達が出てくる。俺達はスタッフさんに説明して貰った通り、プチギフトの御菓子を手に取った。
「本日はありがとうございました」と、御礼の言葉や、ちょっと会話を交えながら、プチギフトを渡していく──。
最後のゲストに星恵がプチギフトを渡すと、俺はホッと胸を撫で下ろした。星恵がこちらに顔を向け、何か言いたそうな顔で見上げながら微笑む。
「どうした?」
俺がそう聞くと、星恵は絡める様に俺の手を握る。
「今日の光輝……最高にカッコ良かったよ!」
「──ありがとう」
こうして俺達の披露宴は幕を閉じた──。
※※※
その日の夜。俺達は身内だけの二次会を終えると、直ぐに家に帰った。
「疲れたね~」
「本当、さきに風呂入る?」
「うん、そうさせて~」
星恵はハンドバッグを床に置き、そう返事をすると、お風呂に入る準備を始めた──。
「じゃあお風呂入ってくるね」
「うん」
「あ!」
「どうしたの?」
「疲れたからって、寝ないでよ」
星恵はそう言って微笑む。新婚初夜、初夜ですぞ! 大事な事なので心の中で二度叫び「寝る訳が無い」
「ふふ、だよね。じゃあ行ってきまーす」
「いってらっしゃーい」
俺は風呂場に向かう星恵を見送ると、落ち着かないのでテレビを点けた──30分ほど待っているが……まだ出てくる様子が無い。
え? もしかして浴槽の中で寝てないよね? 心配、そう心配になった俺は立ち上がり、風呂場へと向かう──すると、ハンドタオルで髪を拭きながら、ピンクのパジャマ姿をした星恵が出て来た。
「こら、まだ早いぞ」
「いや……遅いから心配になって」
「え? そんなに時間が経ってる?」
星恵はそう言って掛け時計をみる。
「いつもと変わらないじゃない」
「そう?」
「私、これで大丈夫だから、立ったついでに、光輝も入ったら?」
「あ、うん。そうする」
「パジャマとか下着はもう準備してあるからね」
「ありがとう!」
気の利いた嫁さんだな! 俺は鼻歌交じりでお風呂場へと向かった──風呂場で髭をそり、ササッと体を洗うと、湯船に浸かる。
「ふふ、楽しみだな~」
──風呂場から出て髪の毛を乾かし、歯磨きを終わらせると、脱衣所を出る。直ぐに寝室に向かうと既に暗くなっていて、準備万端といった様子だった。
俺はベッドの上に乗って、「星恵~」と優しく声を掛けた──ん? 返事が無い。
俺はソッと星恵に近づき、顔を覗き込む──。
「あー、やっぱりぃ……」
星恵は可愛い寝息をたて、既に夢の中だった。俺はペタンとベッドに座る。まぁ……今日は疲れたし、御酒も入ってるからなぁ。
「しゃーない」と俺は諦め、自分の布団に入る。
──にしても、今日は本当に最高の一日になったな。俺はムクっと上半身を起こし、結婚式の事を振り返りながら星恵の可愛い寝顔を見つめる。そのまま擦り寄ると、妻のホッペに顔を近づけ──キスをした。
「本当……良く当たる占い師だよ。星子さんは……」
──結局、今まで星恵から自分が星子だと語られることは無かった……でも俺はそれで良いと思ってる。きっとお互い素直になれない時、また星子さんが活躍してくれる! そう思うから……。
今度はどんな占いをしてくれるんだろう……俺はこれからも届くであろう数々の星子さんのメールを楽しみにしながら、眠りについた。
「あぁ。最初は何を言われるかヒヤヒヤしていたけど、圭子に頼んで正解だったよ」
「圭子様、ありがとうございました。続きまして星恵様のご友人、菜緒様。お願い致します」
司会者に紹介され、今度は高橋さんが圭子と同じようにマイクのある場所へと向かう──お辞儀をすると「どうぞ、ご着席ください」
高橋さんの服装も素敵で、ネイビーのパーティドレスを着ていた。高校時代はずっと黒髪だったけど、今日は茶髪のポニーテールにしている。
「光輝君、星恵さん、ご両家ご親族の皆様、本日は誠におめでとうございます。ただいまご紹介に預かりました新婦友人の高橋 菜緒と申します」
「新婦の星恵さんとは幼稚園から始まり、小中高と同じ学校に通った幼馴染で、光輝君とは高校の時に同じクラスだった仲です。今まで光輝君、星恵と呼んでいるので、本日もそう呼ばせて下さい」
「星恵とは当たり前の様に毎日一緒に居たので、毎日が特別な思い出でした。だから……星恵が光輝君と仲良くなった時、複雑な気持ちで、光輝君に素っ気なく振舞ってしまう時期がありました」
「そんなある日、星恵が私達を仲良くさせようと海に行く計画を立ててくれました。光輝君はその時、デートを邪魔されて嫌だったと思います。でも……優しい光輝君は一生懸命、私に話しかけてくれました」
「だから少しずつ心を開くことが出来て……自分だけがこんな態度じゃ駄目だと思えるようになりました。お蔭でその日の海は三人で仲良く過ごすことが出来ました」
あぁ……あの時、高橋さんの様子がガラッと変わったのは、そういう事だったのか……諦めずに話しかけて良かった。
「そして、文化祭の時に光輝君がナンパしてくる男から星恵を救ったと聞いて、この人なら星恵を渡しても大丈夫だと思いました」
「──とはいったものの……本当はちょっぴり寂しいので、落ち着いた所で、二人の赤ちゃんをみせて下さいね」
高橋さんはそう言ってニコッと微笑む。俺達は顔を見合わせると、高橋さんに向かってコクリッと頷いた。
「光輝君、星恵。本日は御招き頂き、ありがとうございました。お二人の末永い幸せを心より願い、私のスピーチとさせて頂きます」と、高橋さんは締めくくり、深々とお辞儀をする。
マイクから離れると拍手と共に自分の席へと戻っていった──。
「二人とも、感動させるのが上手いな」
「本当……あれ、絶対に泣かせにきてるよ」
「菜緒様、ありがとうございました。続きまして──」
この後、祝電の紹介があり──両親への手紙と続く。
「──それでは新婦の星恵様。お願いいたします」
BGMがオルゴールの曲に変わり、星恵は手紙を開く。俺はマイクを星恵に向けた。
星恵はまず、ゲストへ感謝の気持ちを述べ、次に「お父さん……お母さん……25年間、育ててくれてありがとう。無事に今日という日を迎える事が出来たのも、お父さんとお母さんが大切に私を育ててくれたからだと思っております」と、両親への感謝の気持ちを述べる。
その後「お父さん。お父さんは──」と、お義父さんとのエピソードを話し始めた。
挨拶の時に、俺にお義父さんが『寂しい思いをさせてきた』と言った気持ちが、娘の星恵にちゃんと通じていた様で、「そんなことは無い……そんな風に私を想ってくれる優しいお父さんの気持ちが伝わってきて、私は幸せでした」と、涙を浮かべながら言っていた。
俺は感動のあまり体が火照り、当然のように込み上げてくる涙を必死に我慢した。
「お母さん、お母さんはいつも優しくて、ついつい本音をポロっと漏らしてしまうぐらい近い存在で、苦しい時も……悲しい時も……いつも助けて貰っていました」
「だからこそ、思春期で酷い言葉を言ってしまった事もあったけど……お母さんは辛そうな表情一つ浮かべず、私を抱きしめてくれました。そんなお母さんを私は尊敬しています。そして、お母さんのような優しいお母さんになりたいと思っています」
ふと、お義母さんの方に目を向けると、お義母さんは涙を浮かべながらも、あなたなら出来るわよと、滲み出るぐらい優しく微笑んでいた。
せっかく堪えた涙がまた込み上げてくる……星恵が最後の締めに入っている間、俺は上を向いたり、星恵を見たりと繰り返し、涙を堪えていた。本当……俺はこういうのに弱い。
星恵が手紙を読み終わり、ゆっくり畳むと司会者は「星恵様、ありがとうございました。続きまして記念品贈呈となります」
──俺達は記念品として、両親が好きな花を厳選した花束とウェイトドールを選んだ。両親に花束を贈るなんて、なんだか照れ臭かったけど、嬉しそうに受け取ってくれる両親の笑顔をみてると、そんなのは吹っ飛んでいた。
チラッと星恵に視線を向けると、丁度、ウェイトドールをお義母さんに渡すところだった。星恵は俺と違い、ちゃんとお義母さんの顔を見つめ、「お母さん、私を産んでくれて、ありがとう。私は今、最高に幸せです」と気持ちを伝えて、渡していた。
あぁ……凄く輝いて見えるシーンだ。涙を堪える? そんなのはどうでも良い。だってもう……家族はみんな涙で顔がグチャグチャだ。
──すべてを渡し終わると、司会者は「ここに新たなご家族が誕生いたしました。皆様どうぞ、盛大な祝福の拍手を御願い致します」
俺達はゲストに向かって深々と頭を下げる──顔を上げると司会者は次の両家代表謝辞に進める。
いつも、おちゃらけている父だが、星恵が挨拶をしに来たときは、きちんと締めてくれた。きっと大丈夫だろう。
──安心して見守っていると、やっぱり父はちゃんと調べていたようで、無事にやり遂げてくれた。次はいよいよ俺の番か……鼻で大きく息を吸い、ふぅ……と、吐き出す。
「──続きまして新郎より皆さまに御挨拶となります。光輝様、お願い致します」
俺はゲストに向かって一礼をすると、マイクを持つ。カンペはあるけど──それは頭が真っ白になった時の最終手段だ。最後までカンペなしで挨拶をしたい! 大丈夫、何度も練習してきたんだ。俺ならやれる!
俺はギュッと拳を握り締めると「本日はご多用の中、二人の為にお集まり頂きまして、ありがとうございました」と話し始める。
「このような盛大な披露宴を開くことが出来たのは、ひとえに皆様のお蔭だと心より感謝を申し上げます」
俺はそう言ってもう一度、頭を下げる。
「この日を迎えるまでに、正直、様々な事がありましたが、お互いが素直になれる方法を考え、ここまでやって来られました。そんな二人だからこそ、これからもずっと仲良くやっていけると信じています」
俺はゲストに話しかける様に、顔を見ながら話していく。まるで自分じゃないみたいに落ち着いていて、スラスラと言葉が出てくる。
「この披露宴を通じて、皆様から温かな御言葉を頂いてきた中で、改めて自分たちが多くの人に支えられて、ここに居るのだと感じる事が出来ました」
「これからもその繋がりを大切にし、皆様や両家の親をお手本にしながら、明るい家庭を築きあげたいと思っておりますので、未熟な私達に御指導、ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます!」
俺はそう締めくくり、感謝の気持ちを込めて深々とお辞儀をする。皆は大きな拍手を返してくれた。
「光輝様、ありがとうございました。それでは──」と司会者が先に進め、俺達はゲストのお見送りのため退場する──。
スタッフさんに案内され、両親と共に出入り口に並んだ。大きな扉が開き、ゲスト達が出てくる。俺達はスタッフさんに説明して貰った通り、プチギフトの御菓子を手に取った。
「本日はありがとうございました」と、御礼の言葉や、ちょっと会話を交えながら、プチギフトを渡していく──。
最後のゲストに星恵がプチギフトを渡すと、俺はホッと胸を撫で下ろした。星恵がこちらに顔を向け、何か言いたそうな顔で見上げながら微笑む。
「どうした?」
俺がそう聞くと、星恵は絡める様に俺の手を握る。
「今日の光輝……最高にカッコ良かったよ!」
「──ありがとう」
こうして俺達の披露宴は幕を閉じた──。
※※※
その日の夜。俺達は身内だけの二次会を終えると、直ぐに家に帰った。
「疲れたね~」
「本当、さきに風呂入る?」
「うん、そうさせて~」
星恵はハンドバッグを床に置き、そう返事をすると、お風呂に入る準備を始めた──。
「じゃあお風呂入ってくるね」
「うん」
「あ!」
「どうしたの?」
「疲れたからって、寝ないでよ」
星恵はそう言って微笑む。新婚初夜、初夜ですぞ! 大事な事なので心の中で二度叫び「寝る訳が無い」
「ふふ、だよね。じゃあ行ってきまーす」
「いってらっしゃーい」
俺は風呂場に向かう星恵を見送ると、落ち着かないのでテレビを点けた──30分ほど待っているが……まだ出てくる様子が無い。
え? もしかして浴槽の中で寝てないよね? 心配、そう心配になった俺は立ち上がり、風呂場へと向かう──すると、ハンドタオルで髪を拭きながら、ピンクのパジャマ姿をした星恵が出て来た。
「こら、まだ早いぞ」
「いや……遅いから心配になって」
「え? そんなに時間が経ってる?」
星恵はそう言って掛け時計をみる。
「いつもと変わらないじゃない」
「そう?」
「私、これで大丈夫だから、立ったついでに、光輝も入ったら?」
「あ、うん。そうする」
「パジャマとか下着はもう準備してあるからね」
「ありがとう!」
気の利いた嫁さんだな! 俺は鼻歌交じりでお風呂場へと向かった──風呂場で髭をそり、ササッと体を洗うと、湯船に浸かる。
「ふふ、楽しみだな~」
──風呂場から出て髪の毛を乾かし、歯磨きを終わらせると、脱衣所を出る。直ぐに寝室に向かうと既に暗くなっていて、準備万端といった様子だった。
俺はベッドの上に乗って、「星恵~」と優しく声を掛けた──ん? 返事が無い。
俺はソッと星恵に近づき、顔を覗き込む──。
「あー、やっぱりぃ……」
星恵は可愛い寝息をたて、既に夢の中だった。俺はペタンとベッドに座る。まぁ……今日は疲れたし、御酒も入ってるからなぁ。
「しゃーない」と俺は諦め、自分の布団に入る。
──にしても、今日は本当に最高の一日になったな。俺はムクっと上半身を起こし、結婚式の事を振り返りながら星恵の可愛い寝顔を見つめる。そのまま擦り寄ると、妻のホッペに顔を近づけ──キスをした。
「本当……良く当たる占い師だよ。星子さんは……」
──結局、今まで星恵から自分が星子だと語られることは無かった……でも俺はそれで良いと思ってる。きっとお互い素直になれない時、また星子さんが活躍してくれる! そう思うから……。
今度はどんな占いをしてくれるんだろう……俺はこれからも届くであろう数々の星子さんのメールを楽しみにしながら、眠りについた。
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