【完結】悪役令嬢の猫かぶり

谷絵 ちぐり

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前✩前✩前世

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某日イザベルの私室にて---

定例ミーティングの真っ最中である。
どこぞの特務機関の最高司令官のように皆一様に指を組み頭垂れている。
それもそのはずである。
婚約者候補から婚約者確定へとランクアップしてしまった。

「何がどうしてこうなった」

あの日、茶会後それぞれの父親より聞かされた話である。
娘達と離された父親達は、謁見の間ではなく応接室に通され集まった面子に驚愕した。
ギルバート・ミラーは足が震え産まれたての子鹿のようであったという。
陛下以下側近のそれぞれの父親達は口を揃えて言ったらしい。

「息子が初めて我儘を言った。初めて欲しいものを口にした。どうか叶えてやってほしい。息子には大切に思いやるように言い聞かせる。どうか前向きに話を進めさせてほしい」

国のトップ達に言われて否をとなえる奴がいるか?いや、いない。
その場で是と言ってしまった父親達は悪くない。

「本日の議題。つまんねー女だな作戦が不発に終わった件について」

イザベル議長が場を見渡す。

「「「 オンちゃんが悪い 」」」
「だってー!筋肉好きなんやもん!おもわず筋肉って言ってもうたんやー!筋肉コンテストで『仕上がってる!仕上がってるよ!ナイスバルク!!』とか叫んじゃくらいに筋肉好きなんやー」

オリビア涙目の告白である。
しかし、確かにオリビアの筋肉発言から明らかに空気が変わったと皆思っていた。盛り上がらない会話に気落ちしているように見えた彼らが、何かに気づいたような・・・

「てか、愛騎士かなりオンちゃん意識してたよね」
「してた、してた、あれ絶対俺の事好きなんじゃね?とか思ってるはず」

カーティス、全部バレてんぞ。

「やっぱり強制力が働いてんのかな?なんかまた作戦考える?」
「んー、筋トレしよ!」
「レッタン、なんか思いついた?」
「ううん、エリちゃんは?」
「おい、無視すんな!」
「なんで筋トレなのよ。絶対嫌」
「だーかーらー、おもしれー女の次は“こわれそーな女”“ほっとけない女”なんだって!」

前髪をサラリとかきあげキメ顔をするオリビア。

「お前見てると危なっかしくてほっとけないんだよね」

暫しの沈黙の後

「あー、あるわ。あるある」
「だからってなんで筋トレ?」
「だーかーらー、あいつらとにかく『君を守りたい』とか言うやん?間に合ってます!って言えるように鍛えるのよ!」

拳を握りしめ天高く掲げながら瞳を燃やすオリビア。

「まあ、筋トレはともかくせっかく魔法の世界に産まれたんだから魔法の特訓はしたいよね」

イザベルの言葉に3人ともうんうんと頷く。

「そういや、オンちゃん前世チートってなんかした?」
「まだやけどジャージ作ろうと思う」
「「「 は?ジャージ? 」」」
「うん、部屋着にするんだー。あとTシャツと、短パンとか。スカートばっかり嫌やねん」
「あーね、わかるわ。どうやって作るの?」
「うちの領地にさ、シープスクルーって魔獣が出るんだけどその毛がさー伸びるんだよ。それをなんかこう上手く使ってできひんかなって」
「「「出来たらちょうだい」」」
「もちろん」


某日王城王子専用サロンにて---

「好きになった人が好みかぁー。まさかの答えだったね」

ハルバードが言う。それはそうだろう、自分たちは顔も悪くないし優秀だと自負していたのだ。彼女達からは熱が感じられなかった。ということはまだ好きという気持ちがないということだ。

「おい、カーティス。なにお前だけ大丈夫みたいな顔してんだ」
「え?だってこれから俺は筋肉つくし大丈夫でしょ?」
「カーティス、筋肉だけ好きになってもらいたいんですか?」

上からアルフレッド、カーティス、ノクトである。
そういう訳じゃないけど、とカーティスはごにょごにょと独りごちる。

「とりあえず婚約は成立したんだからこれからじゃない?絶対好きにさせてみせるよ、僕は」

彼らは優秀で聡く賢かった。
これまでの教育で出された課題もなんなくクリアしてきたのだ。壁は高ければ高いほど、難易度が高ければ高いほど燃えるのだ。攻略してやる、と。
ニヤリと4人は笑う。

僕たちの戦いはこれからだ!----


ご愛読ありが・・・あ、嘘ごめん。
もうちっとだけ続くんじゃ。
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