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第二幕 食にまつわる怪異
4.怪談「山盛りカルボナーラ」
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※月刊誌アトランティス2021年■月号掲載
※投稿者は既に特定。現在も存命中であり、この体験による影響は見られない。
※玄武機関の所蔵するアーカイブより抜粋された。
これは私が大学生だった頃の話です。
同じサークルで一つ年上の男性でLさんという人がいました。
Lさんは今で言う陽キャというタイプでそこにいるだけでもうるさがられるような人でしたが、決して人当たりは悪くなくサークル仲間からも愛されキャラでした。
またLさんは無類の肝試し好きで、いわゆる心霊スポットと呼ばれる場所に大勢の仲間とドライブに頻繁に出かけていたようです。
ある時、Lさんは私にスマホに収めた一枚の画像を見せてくれました。
それは日中、山の中のような場所で大きな岩を撮影したものらしくて。
岩の上には一枚の皿が置かれていました。それはカルボナーラでした。
箸を二本、合わせて真っすぐに突き立てた湯気立つ大盛りのカルボナーラの画像。
これ何なんですか、と私が尋ねるとLさんはいつもと違う真面目な口調で教えてくれました。
それは数日前、Lさんが肝肝だめしの場所として下見に■■山という山に出かけた日のことでした。
■■山は、秋葉山三尺坊という偉い人が修験道の修行の場として開いた霊山の一つで、昔から怖くて不思議な話がたくさん伝わっているそうです。
その中でもLさんのお目当てはあの世と繋がっているという伝説の残る洞窟だったそうなのですが、地元の人に聞いても、どんなに探してもそれらしい洞窟は見つからなかったと言います。
そんな時、ふとLさんは近くにあった大岩の上に皿に盛りつけられたカルボナーラが置かれていることに気がつきました。
カルボナーラはLさんの大好物で……。
Lさんはその濃厚な香りに激しく食欲を揺さぶられましたが、同時に薄気味悪いなとも感じていました。
そこでスマホを取り出しカメラアプリを立ち上げ、岩の上のカルボナーラをパシャリ。
それか慌てて車に乗り込み、来た道を急いで引き返しました。
山に住んでいる良くない者の化かされそうになったのかな? とLさんは怯えた様子を見せていましたが、この話を聞いた時、正直私はLさんの自作自演じゃないの? と思っていました。
だけど、それ以来、Lさんが行く先々に現れるようになったと言います。
……そう、山盛りのカルボナーラが、です。
しかも、それはLさんが一人の時だけでなく、サークル仲間といっしょの時でも現れるようになり、実際に件のカルボナーラを見たという人が何人も出てきました。
それでも私はみんなの言うことが半信半疑でしたが――
ある日、Lさんと一緒にサークル室に入ったところ、机の上に見事なくらいホカホカと湯気の立つカルボナーラが置かれていたのです。
私はそれを一目見るなり怯えてしまいました。
怖かったのです。その得体の知れないカルボナーラに対して、すごく美味しそう一口でもいいから食べたい、なんてことを真剣に考えている自分が、まるで自分じゃないみたいで。
と、Lさんが「ああ! もう我慢できん」と叫び、ドカドカ足音をたてながらカルボナーラに近づき、面に突き立てられていた箸を抜き取り、ムシャムシャ食べ始めたのです。
「美味い! 美味い美味い! ホントは初めて見た時から食べたかったんだよぉおお!」
などと口走りながら。
私はそんなもの食べたらお腹を壊してしまうのではないか、と心配になりましたが、そうしているうちにLさんはカルボナーラを綺麗に平らげてしまいました。
そして、次の日、Lさんは車で買い物に行ってくると言い残して外出し――、そのまま行方不明になってしまいました。
私はもちろん、サークル仲間達も必死になって彼を探しましたが結局、見つけることは叶いませんでした。
それからまた、数日が経って――例の■山の麓でLさんの車が、そして山中の洞窟付近でLさんの脱ぎ散らかされた衣服が散らばっていました。
そして、この出来事から十年近くたった今でも、Lさんの行方はわかっていません。
※投稿者は既に特定。現在も存命中であり、この体験による影響は見られない。
※玄武機関の所蔵するアーカイブより抜粋された。
これは私が大学生だった頃の話です。
同じサークルで一つ年上の男性でLさんという人がいました。
Lさんは今で言う陽キャというタイプでそこにいるだけでもうるさがられるような人でしたが、決して人当たりは悪くなくサークル仲間からも愛されキャラでした。
またLさんは無類の肝試し好きで、いわゆる心霊スポットと呼ばれる場所に大勢の仲間とドライブに頻繁に出かけていたようです。
ある時、Lさんは私にスマホに収めた一枚の画像を見せてくれました。
それは日中、山の中のような場所で大きな岩を撮影したものらしくて。
岩の上には一枚の皿が置かれていました。それはカルボナーラでした。
箸を二本、合わせて真っすぐに突き立てた湯気立つ大盛りのカルボナーラの画像。
これ何なんですか、と私が尋ねるとLさんはいつもと違う真面目な口調で教えてくれました。
それは数日前、Lさんが肝肝だめしの場所として下見に■■山という山に出かけた日のことでした。
■■山は、秋葉山三尺坊という偉い人が修験道の修行の場として開いた霊山の一つで、昔から怖くて不思議な話がたくさん伝わっているそうです。
その中でもLさんのお目当てはあの世と繋がっているという伝説の残る洞窟だったそうなのですが、地元の人に聞いても、どんなに探してもそれらしい洞窟は見つからなかったと言います。
そんな時、ふとLさんは近くにあった大岩の上に皿に盛りつけられたカルボナーラが置かれていることに気がつきました。
カルボナーラはLさんの大好物で……。
Lさんはその濃厚な香りに激しく食欲を揺さぶられましたが、同時に薄気味悪いなとも感じていました。
そこでスマホを取り出しカメラアプリを立ち上げ、岩の上のカルボナーラをパシャリ。
それか慌てて車に乗り込み、来た道を急いで引き返しました。
山に住んでいる良くない者の化かされそうになったのかな? とLさんは怯えた様子を見せていましたが、この話を聞いた時、正直私はLさんの自作自演じゃないの? と思っていました。
だけど、それ以来、Lさんが行く先々に現れるようになったと言います。
……そう、山盛りのカルボナーラが、です。
しかも、それはLさんが一人の時だけでなく、サークル仲間といっしょの時でも現れるようになり、実際に件のカルボナーラを見たという人が何人も出てきました。
それでも私はみんなの言うことが半信半疑でしたが――
ある日、Lさんと一緒にサークル室に入ったところ、机の上に見事なくらいホカホカと湯気の立つカルボナーラが置かれていたのです。
私はそれを一目見るなり怯えてしまいました。
怖かったのです。その得体の知れないカルボナーラに対して、すごく美味しそう一口でもいいから食べたい、なんてことを真剣に考えている自分が、まるで自分じゃないみたいで。
と、Lさんが「ああ! もう我慢できん」と叫び、ドカドカ足音をたてながらカルボナーラに近づき、面に突き立てられていた箸を抜き取り、ムシャムシャ食べ始めたのです。
「美味い! 美味い美味い! ホントは初めて見た時から食べたかったんだよぉおお!」
などと口走りながら。
私はそんなもの食べたらお腹を壊してしまうのではないか、と心配になりましたが、そうしているうちにLさんはカルボナーラを綺麗に平らげてしまいました。
そして、次の日、Lさんは車で買い物に行ってくると言い残して外出し――、そのまま行方不明になってしまいました。
私はもちろん、サークル仲間達も必死になって彼を探しましたが結局、見つけることは叶いませんでした。
それからまた、数日が経って――例の■山の麓でLさんの車が、そして山中の洞窟付近でLさんの脱ぎ散らかされた衣服が散らばっていました。
そして、この出来事から十年近くたった今でも、Lさんの行方はわかっていません。
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