この指灯せ

コトハナリユキ

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信じたくない

クラスメイト

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 俺は紅原を追いかけて並び、走りながら聞いた。

「おい!パトカーに乗ってた訳でもねぇのに、なんであいつらがケーサツってわかったんだよ。」
「君が刺された時に学校に来た人たちだからだよ。」
「…なるほどな。」

 住宅街へ入り込み、紅原を前にして俺も走り続けた。すると、曲がり角を曲がったところで紅原は足を止めていた。

「は?おい、どうした?」
「高柳さん…。」
「!」

 紅原の前には髪の長い男が立ち、微笑んでいた。紅原…今、高柳って言ったか…?

「やぁどうしたんだい?空也くん。」
「あ。いや、ちょっと追いかけられていて…」
「追われてるって…?なんだか物騒だね。ここは僕の家なんだ。よかったら入って。」

 こいつが高柳なのか…?ヒョロっとした野郎じゃねぇか…こんな奴に兄貴がどーにかされたってのか…?

「おい!」

 俺は紅原の後ろから叫んだ。

「ん…君は?」
「きょ、侠山くん…!」

 紅原が俺の名前を出すと高柳は「あははは。」と声をあげて笑った。

「へぇ…そうか、そうなんだね。」
「なに笑ってる!?…てめぇ!俺の兄貴のこと知ってんじゃねぇだろうなぁ!」

 俺は高柳に掴みかかった。だが奴は笑顔を崩さない。

「知ってるって…それは知ってるよ。クラスメイトだからね。…ふふ。」
「なんだとこら…!?」
「侠山くん!やめるんだ!」

 紅原は高柳から俺を離そうと間に入ろうとしたが、俺は止まらなかった。

「おい!やめんかぁ!!」
「!」

 次の瞬間、俺は後ろから羽交い締めにされた。警察二人が追いつきやがったんだ。

「…離せやこらぁ!おいてめぇ!兄貴のこと、なに知って…!」
「大人しくしろ!」

 『バン!』と大きな音を立てて俺は車のボンネットに叩きつけられ、押さえつけられた。

「あ…。もしかして、警察の方ですか…待ってください。」

 高柳は俺が叩きつけられてすぐ警察に声をかけた。

「あの、彼は友達で…今のは、戯れてただけなんです。だから…離してあげてください。」
「あ、え…そ、そうなのかい?」

 力が一瞬緩んだ瞬間に俺は警察を跳ね除けて駆け出した。

「おい!いくぞぉ!」
「う、うん!」
「こら!待ちなさい…君、紅原くんだろう!おい…犬窯田なにして…!」

 俺たちはなんとか逃げ切った。緑地公園に入り込み、ベンチで息を切らした。

「…おい。あいつが高柳なんだな?」
「そうだよ…っていうか侠山くん、無茶し過ぎだよ。まだ高柳さんがこの件に絡んでるかだって分からないのに…。」
「うるせぇ!お前はあの目を見なかったのか…?」

 "クラスメイトだからね。"
 あの目は、ただいじめられてたって人間の目じゃねぇ…。

「目?…侠山くん。はぁ…。ちょっと、谷崎に連絡するよ。」
「…。」

 確かに紅原が言うことはもっともだ。でも俺は…。

 "クラスメイトだからね。"
 あの目を見た時に高柳あいつが今回の件に無関係とは思えなくなった。

「谷崎、すぐ来るってさ。」
「…そうか。」

 俺は高柳を探る。そう決めた。
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