この指灯せ

コトハナリユキ

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声なき声を

ランプの指事件

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「2人とも、"ランプの指事件"って聞いたことあるか?」
「「??」」

 僕と侠山くんは全く聞いたこともない話だった。

「最近、中学で不良が刺されたとかって、よく聞くだろ?」
「…なんだよ、おれに言ってんのか?」

 侠山くんは無表情で口を尖らせて谷崎を見る。

「いや…そうじゃねぇ。睨むなよ、怖ぇよお前。」
「いいから、続けて。」

 谷崎の話はかなり強烈な内容だった。
 いじめの被害者からの反撃が起きる中、身体を激しく破損した変死体が増えており、それを警察は「連続殺人事件」としている。「連続」とする理由は、発見された死体の特徴に共通している点があるからだ。
 器械などを使うのではなく"人の手"で、死体が破損されていることがこの事件の大きな特徴であり共通点だ。数も徐々に増えており、非常に危険度が高く残忍な犯行の為、報道規制もかかっている。
 発見された変死体は、体の一部が強い力でもぎ取られていたり、同様に強い力をかけられたことで内臓や頭部が破裂しているという。

「それって、僕が見つけた2人と似てる…。」

 僕は話の途中でつい口を挟んだ。侠山くんは刺激の強すぎる話に青ざめて下を向いている。

「…そうだ空也、お前が見つけた2人と、発見された死体の特徴がかなり似てんだよ。」
「…うん。」
「続けるぞ。」

 谷崎が言うには、さらに共通点があるという。
 被害者はほとんどが高校生。素行に問題がある者ばかりで、いわゆる"不良"と呼ばれる人間たちだった。

「あと、かなり悪趣味なんだけど、指ランプって言われる理由がな…。」 

 死体はすべて、腕ごと、もしくは人差し指が必ずもがれていて、被害者が失踪した数日後には、自宅の玄関前にランプが置かれる。そのランプの中には、ろうそくの代わりに被害者の人差し指が立てられ、火が灯されているという。それが"ランプの指事件"と、この連続殺人が呼ばれている所以ゆえんである。

「そんな事件がこの街で起きてたなんて…。」
「谷、俺にはキツい話って…そういうことか?」

 下を向いたまま侠山くんは谷崎にたずねる。すると谷崎は言いづらそうな表情で答えた。

「いや、これだけじゃねぇんだ…。藤宮さんと佐川さんの家に、そのランプが昨日の夜、置かれたらしい。」
「…!!」
「兄貴は、いつもあの2人と一緒にいたんだぞ…。やっぱり兄貴も…?」

 侠山くんの顔が青ざめてパニックになった。
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