ブラッシング!!

コトハナリユキ

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水組の子

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 ニヤっとした顔でそいつはそう言った。

 「昔から見てきたの。あなた達の抗争。何で負けても負けても消えて行かないのかなってずっと思ってたんだ。」
 うるせーよ。とタカマツがヤジを飛ばす。
 そんな事も気にもしないで、そいつはミヤシゲとトシキの方へ目をやった。少し表情が悲しげだった。

 「あたし、あなた達がクアリクにやられるのずっと見てたの。」
 こちらへ視線を戻して、一生懸命な表情を見せてくる。
 「圧倒的なクアリクに何度も食いついて、眼鏡の人もそこのメッシュの人も、撃たれたり蹴られたり、もう立ち上がらなきゃいいのに! って思いながらずっと見てた。」
 拳を握り締め、1歩前へ足を踏み出してくる。なんだか興奮しているみたいだ。なんなんだ。
 「でも1度倒れた眼鏡の人がクアリクの背中を斬りつけた時、”キター!! ”って、思ったの!」
 目がキラキラしてきた。え? なになに、なんなの。
 「あたし、めちゃめちゃ興奮したの!!」
 「……は?」
 俺たちは全員声が合わさった。

 「なんなのかしら! 執念というのかプライドというのか、立ち向かっていく姿に感動したのよ!」
 まくし立てに立てて、俺を指差してこう言った。
 「それを! もう1度感じたいのよ!おかしらさん!」
 「……お、おう。」
 「仲間がヤられて黙ってる人じゃないと思ってるだけど?」
 勢いが凄くて、なんなら少し気圧されていた俺だけど、返事はちゃんとできた。
 「当たり前だ。ボコボコにしてやるさ。」
 「ヘッドぉ……!」
 「うざいな、泣くなタカマツ!」

 俺の返答を聞いて更にニヤニヤしながら言う。
 「なら! あたしから提案があるの!」
 「つーかお前、名前は?」
 「あぁ、あたしはミズエって言うの。この界隈シメてる水組の組長の娘だよ。宜しくね!」
 「……。」

 凄い人の娘ってのはよく分かった。
 変わらずミズエはニヤニヤと楽しそうだ。
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