夕餉添えの贄

琴里 美海

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第弐拾五話

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「姉さん本当に行くんっすか?と言うか行かせて良いんっすか?」
「良いと言うと思うたか?」

 いやぁ、まぁそりゃ言わないとは思ったすけど、でも行かせちゃってるじゃないっすか。一応あっし等も付いて行ってるっすけど、でも心配っすよ。
 あの開けた場所に行くと、暁光は大きく深呼吸をした。そして大きく息を吸った瞬間、顔を上げて叫んだ。

「瑞光!!!」

 叫んだ後暁光は体を大きく動かしながら、息を切らしていた。
 何処からか真っ黒い炎が出てくると、それが一か所に集まって、最終的に瑞光の姿になった。

「暁光!!待ってたぜ?」
「………………俺としては待ってほしくなかった。」
「そんな事如何でも良いっす!!あんさん氷柱さんは如何してるっす!!」
「あ?テメェは関係無ェだろ、黙ってろ。」

 う、やっぱりこの人怖いっす。何か怖いっす。
 瑞光は楽しそうに手をヒラヒラと動かしながら暁光に近付いたその瞬間、暁光の頭を手が貫いた。

「!!?」
「暁光!!!」

 すぐに近付こうとすると、目の前に炎が走って近付けなかった。
 瑞光は暁光を抱えると、それはもう愛おしそうに暁光を見つめて、その直後に炎が二人を包んで消えてしまった。

「……………糞ッ!!!やられた!!!」
「ほら姉さん!!!やっぱり約束守らなかったっす!!!」

 あっしが声を掛けるけど、姉さんは特に何も言わなかった。袖で口を隠して、ジッと何かを考えている様だったっす。
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